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シャワーを浴びるような感覚。


 シャワーを浴びようと立ち上がり、浴室に行くまでの行程が嫌いだ。
 入ってしまえば、何も問題はない。 
 浴後は、気分がかわり、さっぱりとした気持ちで眠りにつく。さっきまで入りたくないと、駄々をこねていたことなんてすっかり忘れている。

 読書も似たようなものだ。
 気が乗らなくて読みたくないとだらだらして、読み始めればすぐその世界観に浸り、読後は世界がすっかり異化されている自分がいる。

 そうやって、嫌なことを忘れて、楽しいことだけ覚えている。
 嫌な風呂にもそりゃ毎日入るわけだ。
 毎日一話を読むのも悪くない。



1月31日火 溝渕久美子「ほぐさんとわたし」

 ほぐさんはうちに来た翌日にはもう話し始めた。

  ぬいぐるみと一緒に眠っている。
  布団の中や枕元の側で横たわって眠っている。
  ぬいぐるみを慈しまなくなったとき、この眠りもまた違うものになってしまうのだろう。



1月30日月 山尾悠子 夢の棲む街

 その頭の中で遠い海の悪夢が発酵しているからに違いない。

 別の世界を見せられて、ひとときその世界にとどまっていたくなるような。目覚めたくないとばかりにもう一度目を閉じてしまう。
 
 


1月29日日 山尾悠子 銅板


 気づけば人形で遊び、ぬいぐるみと共に眠っている。
 心のよりどころとしての形代。
 自分の分身が殺められるとき、自分は成長するのか? 
 それとも生きをとめてしまうのか。


1月28日土 山尾悠子 〈夢喰い虫〉のバクが登場する

 広場の石畳の荒廃がひときわ激しいのは声の群に侵蝕されたためだという噂さえある。

 Kindleで読むと一短編なのか分からず。続いていたようなので、すべて読んでから書こう。
 声が襲いかかってくる感覚は面白い。


1月27日金 久永実木彦 七十四秒の旋律と孤独

 わたしが表現を弄してきたのは、彼女のためだったのだ。いや、それすらも自分のためだ。

 使命を果たしたわたしが求めたもの。
 彼女の色は、故郷の色と同じ色だ。
 自由奔放な彼女を、言葉一つで収めない私の認識に見事に騙された。
 あの故郷の色に、映るわたしを見た。


1月26日木 大庭繭 岬をなでる風 

 ラクリマクリスティ 偏西風をきいた。

 広間の空気は月のひかりと夜の闇が混ざりあって薄瑠璃色に染まっていた。

 小説を読み、音楽を聞くというのは初めてかもしれない。
 大切な儚い幻を、風に流されて散っていくように、音で表すのか文字で記すかの違い。
 全く別のもののように思うと同時に、元にある喪失感は共通しているよう。



1月25日水 朱野帰子 花嫁衣装

 これから何度死ねば、私もあんな風に強く美しくなれるのだろう。

 この道を通らない覚悟があったろうか?  
 変えたくなかった、したくなかったでも…。自分は強い人間だと思った。  
 けれど、本当は弱かったのではないか。
 周りからの社会からの普通に抗うだけの覚悟と精神力がわたしにはなかった。
 そういう選択肢を選んで生きている人がいるということを知って、私は悔しかった。
 選ぶための準備ができていなかった。
 そういう選択肢を提示して、受け入れられる自信と相手を切り捨てるだけの覚悟。
 そういう圧力が片方によっているのだ。
 そして、そういう気持ちは日に日に忘れていくのだ。
 少しずつ、少しずつ切り取られ塗り固められて。
 あの想いを忘れてはいけない。
 こういう話を書いていきたい。

1月24日火 川野芽生 いつか明ける夜を 


 小説というよりは、詩として読んだほうが良かったのかもしれない。
 チューニングが合わず、断念。




1月23日月 坂崎かおる 間宮伍長のイチイの箱

 空っぽでがっかりした。

 自分の心をのぞくもの。思い出したくないことを思い出して逃げ出したくなる。  
 恐ろしいものなのに、怖くないのはなぜなのか。
 心が空っぽなのだ。



1月22日日 サラ・スピンカー 一筋に伸びる 二車線のハイウェイ

 おれはここにいて、ここにいないとアンディは思った。

 土地に根付き、土地を耕し、育てること、使う道具。その生活と風景を愛している。
 誰かと比べて揺さぶられこそすれ、自分の故郷に誇りがある。
 突然繋がれた機械は、彼にとっては、生きていた。共感する思いが、機械を一つの人格、人間として表現し、扱う。
 その現実離れした、でも肉体的でリアルな、ほんの一瞬の生活を垣間見た。


1月21日土 空木春宵 感応グラン=ギニョル 

 〈わたし〉を見て

 欠陥を抱え、人に憐れまれ、欠陥のために集められた少女たち。
 受け入れられないという孤独。
 見とめられない、でも見とめられたい。
 少女たちの傷は深くなればなるほど、没入して逃れられなくなる。
 それはまるでリストカットのよう。
 傷つけられ、芽生えてしまった壊れた心は、いったい誰が救えるのだろうか。


1月20日金 松樹凛 振り返らない少女たち

「更新、されたんだ」

 いつもずっと、同じままではいられない。毎年一つ年をとり、変化していくのだ人は。
 変わりたくなかった、ずっとそのときのままでいたかった。
 分からなかったのだ。先に変わってしまった彼女のことが。
 流され置いていかれること。自分の変化を求められ怖くなる。
 変わろうとすれば怖くない。
 それは、忘れることでも、否定することでもなく。
 変わりつづける自分でありたい。


1月19日木 坂崎かおる 嘘つきひめ


 わたしはその黄色い宝石を、歩きながら、口に入れた。キャンディのように。カラコロン。

 言葉による世界の認識を揺さぶってくる。嘘で固められた世界のやさしさと、現実を突きつけられた時のむなしさに苦しめられる。
 でも、その苦しみがあることで生きていくことができる、慈しんで暮らすことができる。
 その書き方の鮮やかさにやられてしまう。


1月18日水 くすんだ言語 黒石迩守


〝本当に死ぬとは思わなかった〟

 自分の思っていることが100%伝わってしまったら。思っていることが伝わらないからこと、言葉を使って伝えようとするのに、言いたくないことまで伝わってしまったら。
 近くにいる相手なのに、なんだか娘の輪郭がぼやけているように思えるのは、全てを知り得なかった言葉使いと、全てを知り得ていた言葉使いの境界線なのかな。


1月17日火 文月あや「パラサイト・ダーリン」


もうちょっとこの人格のこの子と話してみたいなーって

 ライトに読めるけれども、それも含めて付き合い始めた頃のドキドキとワクワクが味わえる。
 好きになったらしょうがないのだ。
 惚れたら負けなのだ。
 二人?がどうなっていくのか考えると楽しい。



1月16日月 穂崎円「バースデー」

 短歌と小説のコラボで、こちらは短歌。

 小説を読まずに読んだので、どういうことか分からなかった。パラサイトダーリンを読後は、短歌の意味を汲むことができた。

 海よりも遠い記憶を懐かしみひとは左右に耳たぶひらく

 貝殻を耳に当てているような感じ。
 しっとりと読ませてくるので、小説の雰囲気よりも再読後はこちらの方が好きかもしれない。



1月14日土 大木芙沙子「二十七番目の月」



 感動。何度も読み返したくなる。好きだ。

あたたかくてやわらかな身体を担当しているグリーンランドの氷なのだという思いがいつもあった

 恋人や家族のことなら知りたいと思う、そして知っていると思いがちだ。でも、その知らない範囲を持つことで、相手のことを慮ることができるんじゃないだろうか。
 少し知っては、また少し違う相手になっていく、その些細なけれども、ドキドキする感じは、恋した時に似てるような気がする。



1月?


なんか読んでいた気がするのだけど、覚えてない。二つほど短編を読んだことは覚えている。










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