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4月の出版物:その2『作曲する女たち』 (日英のタイトルをめぐってドタバタ)

葉っぱの坑夫が4月に出版するもう一つの本を紹介します。これも前回紹介した『トーマス・ニペルナーティ 7つの旅』と同じように、noteサイトで連載していた作品です。連載時は「作曲する女たち」でしたが、パッケージ化するにあたって、『20世紀を駆け抜けた・作曲する女たち』とすることに。

内容としては19世紀生まれの作曲家5人の小評伝、20世紀生まれの作曲家5人のインタビューです。前者はマデリーン・ゴスの『近代アメリカの作曲家』【"Modern Music-Makers: Contemporary American Composers"(1952)】という大部の本から、女性の作曲家を選び、翻訳しました。後者はシカゴのクラシック専門FM局でブロードキャスターを務めていたブルース・ダフィーの、過去のインタビュー記録から、許可を得て5人の女性作曲家を選び、抜粋・翻訳したものです。
以下のような内容になっています。

「作曲する女たち」プロジェクトについて
【小評伝】 作曲する女たち(19世紀生まれ)
⚫️評伝の著者、マデリーン・ゴスについて 
⓵テキサスのカウガール               5
 ラディ・ブリテン
⓶歌が唯一の楽器だった
 メイベル・ダニエルズ
⓷初めての学校は子育ての後
 メアリー・ハウ
⓸1000人の大合唱団を率いて
 ジーナ・ブランスコム
⓹ブーランジェ姉妹と交換教授
 マリオン・バウアー

【インタビュー】 作曲する女たち(20世紀生まれ)
⚫️インタビュアーのブルース・ダフィーについて
⓵作曲家かどうか、決めるのは自分
 オーガスタ・リード・トーマス
⓶ロックを聴いて育った
 ジェニファー・ヒグドン
⓷世界を見たくてキューバを離れた
 タニア・レオン
⓸よくできた曲はあまり面白くない
 ヴィヴィアン・ファイン
⓹音楽には浅いレベル、深いレベル両方必要
 エレン・ターフィ・ツウィリッヒ

タイトル画像はKDPのプレビュー画面:あえてモノクロの表紙にしました。
裏表紙にある緑のシンボルマークは、葉っぱの坑夫スタート時からのもの。

『20世紀を駆け抜けた・作曲する女たち』は、520ページもあるもう1冊の本とは対照的に、135ページと小さな(薄い)本です。オンデマンド本は、このような小さな本の出版にも向いていると思います。これまで作ってきた本の中には、100ページ以下のものもあります。何ページ以下だったか忘れましたが、非常に薄いと背表紙に文字が入れられません。まあ、問題はないですが。

タイトルにつけた「20世紀を駆け抜けた」は、副題のつもりなのですが、KDPでタイトルの登録をしようとしたところ、副題というのはタイトルの頭につくものではなく、タイトルの後につくもののようでした。どうしようかな。このまま申請すると、Amazonのページでおそらく
「作曲する女たち 20世紀を駆け抜けた」のように表示されるでしょう。
これだとあまりよくないです。

Googleで「本 副題」で検索すると以下のような説明が冒頭に出てきます。

本のサブタイトル(副題)とは、書籍や論文などの表題の脇に添え、内容をわかりやすく示した題です。 サブタイトルは、タイトルだけでは伝えきれなかった情報を補足するために付けられます。

Google

ここで考えました。後ろについてもいいように副題を変える。
たとえば:

『作曲する女たち 20世紀アメリカを駆け抜けた10人』

のように。
変えるのであれば、早く決めなくては。。。というのはKindle版の本文原稿はWord(docファイル)で入稿しているのですが、そのサブスクリプションの期限が迫ってます。1ヶ月単位で契約しているので。

ふと、新たなタイトルを見て、あれ、と思いました。
実はこの本には英語のタイトルを添えてあるのですが(それこそ副題という感じで)、その英語タイトルとかなり似ています。

英語タイトルは
Ten Women Composers of 20th Century America
です。
実はこれも、ここにたどり着くまでに何度も変更を加えました。このような英語タイトルの本があるのではなく、日本語タイトルから翻訳したものなのです(対応する英語の原著があるわけではないので)。ただ日本語そのままではなく、英語的に解釈されています。

最初に考えたのが、
Women Composers Run Through in 20th Century America
これをこの本のインタビュアーであるブルース・ダフィーに見せたところ、「very poor」と言われてしまいました。へっ。

それで彼が提案してきたのが、
Women Composers in 20th Century America
ただ念のため、同名の本がすでにないか調べた方がいいよ、と。

これならシンプルでダイレクトで日本人にもすぐ理解できていいかな、と思ったのですが、そのあとブルースから、
Ten American Women Composers from the 19th and 20th Centuries
のように、本の詳細をきちんと表した方がいいのではないか、と言われました。ten と人数を入れたのは、これがないとタイトルを見た人が、たくさんの女性作曲家が紹介されていると誤解するかもしれない、とのこと。

なるほど。日本語は名詞に複数形がなく、「たち」などの接尾語をつけた場合も、感覚として数にはこだわっていません。二人以上いれば「⚪︎⚪︎たち」で通ります。この本の場合も10人いればもう立派な「たち」が成立するように思います。これは言葉の文化や感覚の違いでしょうね。

余談:
他のアジアの国々の名詞の複数形はどうなってるんだろう、とブルースがいうので、調べてみたら面白いことがわかりました。
1. 韓国語と中国語は日本と同じように、単数の名詞に接尾語などをつけて複数形にするようです。(あなた・あなたたち:당신 → 당신など)
2. インドネシアやマレーシアでは、単数形の名詞の後にその言葉を繰り返して複数形にします。たとえばorang(人)の複数形は orang-orangで人々に、本(buku)であれば、buku-bukuで複数の本になる、というように。
面白い! 
3. インドは主要言語であるヒンディー語、ベンガル語どちらも、アジアとヨーロッパをミックスしたような形で、パターンがたくさんあって複雑です。そういえばベンガル語はヨーロッパ言語が元らしく、インドの民は「インド・ヨーロッパ語族」と言われてますよね。

ブルースの提案のつづき:
Ten American Women Composersはとりあえずいいとして、
そのあとにくるfrom the 19th and 20th Centuriesが気になりました。
評伝で紹介している19世紀生まれの作曲家たちは、生まれは19世紀であっても、活躍したのはほぼ20世紀に入ってからです。最も早く生まれたメイベル・ダニエルズで1877年生まれ。他の19世紀生まれの人は大人になって仕事を始めたのは20世紀になってからです。なのでタイトルとしては「20世紀の作曲家」の方がいいと思いました。

そこで、
Ten American Women Composers from the 20th Century
でどうだろう、と。
するとこの場合は「from」を「of」にした方いいと思うとブルース。
で、だんだん詰まってきました、英語タイトル案。
じゃあこれでどう?とブルース。
Ten American Woman Composers of the 20th Century
え、ちょっと待って、womanなの? 単数形? と聞くと、
あ、間違えた、womenだと返ってきました。ネイティブが間違う。。。
それと20世紀のところの「the」が入ったり入らなかったりで、どっちがいいのか。

woman、womenの方は、日本語の文法説明では、名詞の前につける形容詞的用法の名詞は単数形が一般的とあったりします。たとえば花瓶の複数形は、flower vases、ペンケースはpencil cases、靴屋はshoe stores。(flowers vasesとかpencils casesとかshoes storesと言わずに)
この方式でいうとTen American Woman Composersとなってもいいように思いました。でも10人とついているから、ten American womanというのは変かもしれません。

次に思ったのは、Ten American Women ComposersのAmericanはどうなのか、ということ。
アメリカ人というのが文頭にくると、それを強調しているように見えます。10人の作曲家の中には人生の大半をアメリカで過ごしたけれど、出身地はカナダ、あるいはキューバという人が含まれています。その意味で、Americanは頭につけない方がいいと思いました。
「of the 20th Century America」と後ろにまわせば、20世紀のアメリカを舞台に仕事をした、活躍したという意味になり、アメリカ人かどうかは問題になりません。

では20世紀のところの「the」はつけた方がいいのか、なくてもいいのか。通常の文章では入れるのが普通です。でもタイトルやヘッドラインの場合、言葉が短縮されるのはよくあること。ここでは短く簡単な方がいいのでなしの方がいい、とブルースも言っていました。
わたしも「the」を入れると固い感じがするなと思っていました。この本は学問的な本ではなく、読んで楽しむものなので。

というわけで、最終的に英語タイトルは
Ten Women Composers of 20th Century America
に決まりました!

いい感じじゃないでしょうか。日本語の「作曲する女たち」とは少し、ニュアンスが違いますが。日本語のタイトルはちょっとフェミニズムっぽいニュアンスがあるのに対して、英語のwomen composersはもっとニュートラルです。でもfemale composers(この場合femalesとは言わない気がする)とするよりは日本語のニュアンスに近いです。
また頭に「ten」がついて「Ten Women Composers」になると、具体性が出るせいか、さらに主張があるような感じも出てきます(そんな気がする)。

ところでKindle版の入稿原稿はWordで作っているのですが、「20th Century 」の「th」が小さい上付きのthになってしまいます。フォントをいろいろ変えてみても変わらないので、これがWordの表示ルールなのでしょうか? ネットで「序数 上付き」などで検索すると、設定を変える方法が載っていましたがそれが効きません。で、ふとメニューの「ボールド」「イタリック」などが並んでいる列にある二つある「X」の「下付き」を選んでみました。あ、直りました。普通に「20th」と表示されます。よかった。

office 365はもう解約日間近なのですが、間に合いました。解約日前に最終検証をもう1回やるつもりです。

これでほぼペーパーバックの本も含め、完成に近づきました。実はオンデマンドブックの表紙のファイルを133ページで完成していたのですが、最後のところで扉ページを2つ入れたせいで、135ページになってしまいました。2ページ分、つまり紙1枚分、厚さが変わったわけです。KDPのプレビューでは問題なかったので、多分大丈夫かと思いましたが、念のため出来上がりのサイズを確認しました。133ページで作ったファイルは、26.81×20.92cmでした。135ページの場合、KDPの表計算ツールによると26.807×20.93cmです。問題になるのは幅の方で0.03cm(0.3mm)の違いなので問題なさそうです。というか133ページのファイルの方がサイズが大きくなっています。これはわたしのファイル作成の際の手の加減かもしれません。大きく食い違っていたら、作り直そうと思っていました。よかった。

あとはKDPの書誌情報の確認をして、校正をとって問題がなければ出版できそうです。

書誌情報のカテゴリー分けですが、Kindle版は不備があって、音楽書の「クラシック」以下のカテゴリーが「ピアノ」しかない状態で、選びようがありません。選びようがないだけでなく、選ばないことには先に進めないので、選ばざるを得ないのです。でも、出版する本は「ピアノ」の本ではありません。このカテゴリー分類の不備は以前からあるようで、日本語で書いた小説が「フランス文学」しか選びようがなかった、と何年か前のブログに書かれているのを見ました。

どうしようか、と思いましたが、ちょっと思考を変えて「音楽書」ではなく「アート」を選んでみました。
Kindle 本 › Kindle本 › アート・建築・デザイン › 芸術一般 › 芸術理論・美学 
ここでいうアートに音楽は入っていないように見えますが、
…. クラシック › ピアノ › こども
を選ぶよりましな気がします。

実は音楽書は、楽譜と一緒のカテゴリーになっているため、楽譜と音楽書が混ざっていてとても探しにくいのです。たとえば「モーリス・ラヴェル」で検索すると、楽譜がいっぱい出てきて、その間に一般図書が出てくるといった具合。音楽書を探すのと楽譜を探すのでは目的がまったく違うので、分けてほしいです。カテゴリー分類をプログラムし直す、そんなに複雑な過程があるとは思えません。(ペイパーバックの本の登録では、音楽書でも大きな問題はなかったのですから)

まあいろいろ不備があって不満もありますが、KDPで本が簡単に作れるのはありがたいです。工夫を重ねて、今後もおおいに利用していきたいです。

補足:この原稿を書いている間にも本の制作は進み、おととい校正本が届きました。すでにモニター上では何度も見て、校正もしているのですが、ペラペラとページを繰っていたところ、あれ、という箇所がいくつか出てきました。

文字の大きさが(そうであるべき)指定と違っているところ、段落の頭が下がっていない箇所、説明のところに入るべき同じ項目名が入っていない、、、、など。大きな問題ではないものの、揃っていないといけないものがバラバラでは編集の欠陥です。

編集とは何かといえば、 Aの箇所を1と指定したなら、どこにAが出てきても1にしなければならないということがあります。1冊の本の中で作り手の意図が統一されているということ。こっちのAは1になっているけど、こっちのAは3になっている、のようだと、その二つは意味が違うことになってしまうからです。

こんな風に細かい直しや調整をさんざんやって、やっと完成に近づきます。


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