見出し画像

建築を分解する隈研吾の独特の思考とは

 隈研吾という人は、「モノの成り立ち」に注目している人だと私はこの本を読んで感じました。隈研吾のつくる建物は割とSNSなどによって発信される写真と実際に見るのとではすこし印象が違うと感じた。だからこそ少し表層的な建築家だと感じていた。しかし、この本ではなぜそのようなモノになったかを成り立ちからの説明が多かった。
 この“成り立ち”に注目した結果、ボリュームを解体し点・線・面で構成している。その構成の説明はかなり幅広く、日本の独自の建築や絵画、建築の歴史など様々だった。
例えば、建築の歴史からみた結果あの「石の美術館」ができた。むかしのヨーロッパでは組積造が多く、石という点で構成されていた。しかし、この点では建物を成り立たせることが難しく、コンクリートによって固めた。そのため、本来は点という小さなものできているのに、重たく大きなボリュームになってしまっていた。しかし、この石をつくって点のままで構成するために、隈研吾は石をスリットとして重ね、ずらしていくことで隙間作った。これによって点を作り出した。この作り出した点は2つの手法で用いられ、そのまま隙間として使われ、もう1つは光が透過するぐらい薄くスライスしてはめる方法だ。これにより石という点をボリュームから開放できた。
日本の歴史からみたとき、隈研吾は歌川広重の「大はしあたけの夕立」を参考にしていた。この絵は雨を直線としてかき、それと橋を書いている。橋の上から雨をかくことで1つのレイヤーを作り出し、遠近法を使わずに雨による見え隠れの透明性によって遠近感をだした。また、雨を直線という幾何学で表現している。自然は曖昧で不定形としてとらわれていた中この幾何学で表現されている。幾何学の人工物より不定形の自然の方が劣っているという概念を壊したような作品だ。このような人工物と自然と考えが「馬頭広重美術館」のきっかけになっていた。木々という自然の線の中にある美術館を、細く製材された人口の木という線で構成することで、外部の木々から細くなるルーバー、この線の細さのグラデーションによって、自然と身体を繋ぐ装置となっている。
正直、よくわからないところがおおくあったが、モノ成り立ちという観点では独特でかなり面白い本でした。是非読んでみてほしい本です。

<945字>

参考文献 「点・線・面」著者 隈研吾 岩波出版    
      https://bijutsutecho.com/museums-galleries/596

                                               

この記事が参加している募集

404美術館

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?