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第一章第四話:新たな挑戦への幕開け

 その後、夢佳は自宅で一日の出来事を振り返っていた。彼女の頭の中には、これからのトレーニング計画やチームの戦略が次々と浮かんでいた。

「明日はもっと良い走りを見せてくれるはず。みんなが成長していくのを見るのが楽しみだわ。」

そう思いながら、彼女は明日の計画を立て直し、次々とアイデアをまとめていった。

翌日、桜川レーシングの拠点オフィスで、監督の浅井とコーチの野村恭平、そしてキャプテンの松浦杏奈と共に、夢佳はチームメンバーの評価結果をもとにトレーニングプランを練り直していた。

「夢佳ちゃん、まずは昨日の評価を元に、具体的なトレーニングメニューを組み直してみよう。」浅井が言った。

「はい、監督。早速取り掛かりましょう。」夢佳は熱心に答えた。

「まずは山崎真由のスプリント力強化から始めましょう。彼女には短距離ダッシュと持久力をバランスよく取り入れる必要がありますね。」恭平が提案した。

「そうですね。基礎体力は十分ですが、瞬発力をもう少し引き出すトレーニングを重点的に行いましょう。」夢佳が応じた。

「高橋玲奈には持久力の強化が必要です。特に長距離の持久力を高めることで、彼女のバランスの取れた走りがさらに安定するでしょう。」杏奈が言った。

「はい、その通りです。長距離走とペーストレーニングを組み合わせて、徐々に強化していきましょう。」夢佳が続けた。

会議が進む中、チームの強化プランが次第に形になっていった。各選手の特性を最大限に引き出すためのメニューが組まれ、具体的な目標が設定された。

「これで一通りのプランが完成しましたね。夢佳ちゃん、どう思いますか?」浅井が尋ねた。

「はい、これなら各選手の強みを活かしつつ、弱点を補強できると思います。ただ、実際にトレーニングを進める中で細かい調整が必要になるかもしれませんね。」夢佳が答えた。

「そうだな。その都度、状況を見て柔軟に対応していこう。」浅井が頷いた。

その後、選手たちに新しいトレーニングメニューが伝えられた。選手たちは初めは驚いた表情を見せたが、夢佳や監督、コーチの説明を聞いて次第に納得し、やる気を見せ始めた。

「よし、みんな。新しいメニューをしっかりとこなして、チーム全体で強くなっていこう!」夢佳が励ました。

「はい、夢佳さん!」選手たちは一斉に答えた。

こうして、新たなトレーニングメニューの下で桜川レーシングは再スタートを切った。夢佳は自らもトレーニングに励みつつ、各選手の成長を見守りながら、チーム全体の強化に全力を尽くしていった。

日が経つにつれ、選手たちのパフォーマンスは徐々に向上していった。夢佳の指導の下で、彼らは着実に成長し、チームとしての結束力も強まっていった。

ある日、トレーニング後に夢佳はキャプテンの松浦杏奈と話していた。

「夢佳ちゃん、みんな本当に成長しているわね。あなたのおかげよ。」杏奈が感謝の意を伝えた。

「いいえ、みんなの努力の賜物です。私たちは一緒に頑張っているんですから。」夢佳が微笑んだ。

「これからもチーム一丸となって、もっと高みを目指していこうね。」杏奈が力強く言った。

「もちろんです。私たちには無限の可能性がありますから。」夢佳が答えた。

こうして、桜川レーシングは更なる飛躍を目指し、挑戦を続けていくのだった。夢佳と彼女のチームメイトたちの努力と絆は、彼らを新たな高みへと導いていく。

### 夢佳の新たな挑戦

その夜、夢佳は再びトレーニングプランを見直していた。彼女の部屋には、サイクルトレーナーの横に置かれた超高性能デスクトップPCがあり、その隣には高性能二つ折りスマートフォンとノートPCが並んでいた。戦略ノートは、折りたたみスマホとノートPCに表示されており、彼女は常に最良の方法を模索していた。

「もっと効率的なトレーニング方法があるはず。みんなが限界を超えられるように、私は何をすればいいのだろう。」

夢佳は深い思索にふけりながら、次の日のトレーニングメニューを修正していった。彼女の頭の中には、新しいアイデアや改善点が次々と浮かんでいた。

### レースの準備

翌朝、夢佳はいつものように早起きし、桜川レーシングの練習場に向かった。彼女は自らのトレーニングを終えた後、選手たちの準備を手伝いながら、次のレースに向けた戦略を練り上げていった。

「玲奈ちゃん、今日は持久力を試すために長距離走を行いましょう。真由ちゃんはスプリント力をさらに引き出すために、短距離ダッシュを重点的に。」

選手たちは夢佳の指示に従い、熱心にトレーニングに取り組んでいた。彼女たちの姿を見て、夢佳は自分の役割の重要性を再認識した。

「私たちのチームは成長している。このまま全員で力を合わせれば、必ず結果を出せる。」

夢佳の心には、チームの成功への強い意志が宿っていた。彼女は桜川レーシングの未来を見据えながら、次のステップに進む準備を整えていた。

### 新たなレースへの挑戦

トレーニングが進む中、次のレースが近づいてきた。桜川レーシングの選手たちは、新しい戦略とトレーニング方法で自信を持ってレースに臨む準備が整っていた。

「次のレースでは、これまでの努力をすべて出し切るわ。みんな、最高の走りを見せてくれ。」夢佳が選手たちに語りかけた。

「はい、夢佳さん!」選手たちは一斉に答え、その目には強い決意が宿っていた。

こうして、桜川レーシングの新たな挑戦が始まる。夢佳と彼女のチームメイトたちの努力と絆は、彼らを新たな高みへと導いていくのだった。

夢佳はチームのエースとしてやらなければいけないことがあった。それは桜川レーシングの新しい機材(ロードバイク)についての交渉である。

「監督、華陽サイクルジャパンに行って、機材供給について交渉をしましょう。」

「そうだな。君の人脈だからすんなりいくのかもしれないね。」

「夢佳ちゃん、新しい機材が来るのね。」とキャプテンの松浦杏奈が期待を込めて言った。

「そう簡単に行くかはわかりません。まだまだ設立して2年目のチームですから、うまくいくかどうかはわかりません。華陽サイクルジャパン側も供給するからには、それなりの成績を求めてきますよ。」

「そのとおりね。私たちチームの成績は、下手をすると華陽サイクル側にとって宣伝効果になるからね。」

夢佳、浅井、野村、妙織は重要な話をしていた。桜川レーシング一番の問題であったロードバイクの機材である。これまではアステリア・プロ搭載グレードを使用していた。

「個人的には、女性向けブランドKayo Femmeのレースロードバイク5、Kayo Femme Race5の供給を考えてもらっています。最上級モデルで、アプレリア・エクセル搭載しています。」

夢佳は華陽サイクルから送られていた関係者向けの資料をプロジェクターで映して見せた。

「これ130万なのね?でもアステリア・エクセル搭載グレードでないとだめね。あと、これは最近主流の電動変速と油圧ディスクブレーキね。」

「そうなんです。このレベルでないとだめです。」

「これを軸に考えないといけないな。夢佳ちゃん、参考に男女兼用のモデルについても教えてほしい。」

「わかりました。こちらになります。」

夢佳は華陽サイクルのKayo RシリーズやKayo Aシリーズの内容を見せた。女性向けブランドよりも全体的に価格は上である。

「これはこれで凄いな。男子ロードバイクチームがこぞって採用するのはうなずける。」

「ありがとうございます。個人的には気に入っていて、イタリアのチームで利用していましたから。」

そして夢佳たちは供給を受けるモデルを決定した。

翌日、夢佳、チーム代表妙織、監督浅井は、華陽サイクルの日本法人、華陽サイクルジャパン本社に向かった。夢佳にとっては慣れ親しんだ場所であるが、妙織と浅井にとっては雲の上の存在である。

「ここが世界最大手の自転車メーカー華陽サイクル日本法人です。」

「ここなのね?まさかここまで来れるとは当然思っていなかったわ。」

「もう緊張してきた。」

「大丈夫ですよ。事前に連絡はしてあります。私があいさつをして、お二人の紹介をさせてもらいます。」

そう言って3人は本社の入っているビルの中に入っていく。25階建てビルの20階以上にあるのが華陽サイクルジャパン本社である。

「夢佳さん、お久しぶりですね。」

「お久しぶりです、松浦CEO。イタリアでは大変お世話になりました。またご協力いただきましてうれしいです。」

「とんでもない。女子ロードバイク界の絶対的エースが日本に復帰となるとは嬉しい限りですよ。」

「で、私の隣にいる二人を紹介します。桜川レーシング代表の安西妙織とチーム監督の浅井亮一です。」

「初めまして、代表の安西です。」

「同じくチーム監督の浅井です。」

「こちらこそ初めまして、華陽サイクルジャパン代表取締役CEOの松浦海斗です。」

「さて本題のバイクの供給ですが、夢佳さんから聞いています。うちのバイクを使用したいということを、立花氏も何なので、お部屋で詳しく聞かせてもらいます。」

3人は松浦の部屋に通される。そこは全面ガラス張りの部屋である。会社のトップの部屋らしからぬ室内であった。

「あらこれは?」

「あぁー。これは夢佳さんとイタリアで撮った写真ですよ。彼女の強さが垣間見れます。」

そしてその横に置いてあったロードバイクは、夢佳の所属していたイタリアのチームに供給をしてた華陽サイクルのロードバイクそのものである。

「懐かしいです。あの時がよみがえってきます。てか、海斗さん、ちゃんとメンテナンスしないとだめですよ。ところどころさびついてますよ(笑)。」

「(笑)そうだな、そうだな。華陽サイクルジャパンのトップであるのに、なんて恥ずかしいことを。夢佳さんにはいつも怒られてばかりだな(笑)。」

妙織と浅井は二人の深い関係に目が点となった。

「供給いただけるのでしょうか?いくらうちに小田がいるといっても、そう簡単に供給してもらえるものではないでしょう。」

「確かに、通常ならあなた方のチームに供給するのは非常にこちらとしても考えるべきことです。すんなり供給を認めるというわけにはいきません。」

「お二人には内緒にしていましたが、海斗さんにはすでに相談はさせてもらっていたのですよ。」

「我々としても大きな挑戦となります。で、桜川レーシングはあの桜川プレジョンメカニクスとは関係ないのでしょうか?」

「はい、偶然名前が一緒になっていますが、資本関係も一切ありません。また桜川プレジョンメカニクスからこの件で何か言われたわけでもありません。それに名前について承諾も公式に頂いております。」

「それなら一安心です。それでバイクの供給については、前述の理由があるので社内で検討をしてきたのですよ。もちろん反対意見もありました。いくら小田夢佳が所属しているといっても許可できないという考えが大勢でしたからね。」

「そうですよね。私たち弱小チームなどに供給してくれるなど夢のまた夢ですからね。」

「そうでしょうな。私たちに供給してくれる企業などありませんからね。」

「でも私としては、御チームの現状を見ていて何かできないかと考えてもいたのです。そして夢佳さんから今後のチームの計画を見せてもらったのです。そこには現実的かつしっかりとチームを再建したいという夢佳さんらしい考えが載っていました。」

「海斗さんにしっかり現状と今後の計画についてお話はしました。」

「それを社員にも見せたところ、社員の考えも変わっていきました。反対していた社員もこれならいけると言ってくれています。また今後チーム状況がどのようになろうとも供給を停止することはしないということですすんでいます。前振りが長々と話しましたが、御チームに供給させてもらおうかと考えています。」

「本当にいいのですか?」

「それは本気で言っています?冗談ではないでしょう?」

「お二人とも海斗さんは本気で言ってくれているのですよ。疑った目で見ないで上げてください。」

「もちろん本気です。ぜひ供給させてください。私たちはあなた方を機材面でサポートさせてもらいます。」

「疑ってしまってすみません。そこまで言ってくださるならよろしくお願いします。」

「前々気にしないでください(笑)。」

「一同(笑)。」

ついに桜川レーシングにとって最重要課題の機材確保のめどがついたのである。その後担当者との間で詳細の供給する機材についてやり取りがなされる。

「再確認させてもらいますが、女性向けブランドのレースロード最上級のKayo Femme Race5でいいですね?」

「もちろん事前の話通りです。それでお願いします。私も慣れ親しんでいるモデルなのでお願いします。そしてラッピングについては、こちらのジャージをベースにお願いしていましたね。」

「もちろんです。ピンクの桜をイメージしつつ、水色のラインが入った形にしてあります。」

と、華陽サイクルジャパンの担当者はデザイン原案を見せた。妙織と浅井は、夢佳の素早い対応に感心していた。

「ではこれで本日は終わりです。あと今後、桜川レーシングの拠点に伺えればと思います。事前に夢佳選手から拠点の写真や撮影してもらった動画を見せてもらいました。桜川レーシングらしい素敵な拠点だと感心しました。ただ、一部を除いてですが。」

「メカニックの場所のことですよ。あそこについてはさすがに何とかしてもらわないとだめです。監督、そこは何とかしましょう。」

「そうだな。あいつがそれに従ってくれるか心配だけど、せっかくの超高性能モデルをメンテナンスするにはあれでは…。」

「監督、私から案があるのですよ。雅也さんの性格にもこたえつつメンテナンスできる方法を、イタリアのチームでも見てきたのでそれを採用しましょう。DIYは私ができるので、あと華陽サイクルジャパンの皆さんにもDIY趣味の人がいるのでそれで経費も削減してできます。」

「そうだわ。夢佳ちゃん、DIY得意だったわね。外注するよりいいわ。華陽サイクルジャパンさんもご協力いただけるのですか?もちろん手弁当というわけにいかないでしょうから、しっかり契約書を作ってお願いということになりそうですね?」

「もちろんです。CEOも趣味でDIYをやっているので、私たちならご協力させてもらいます。契約などはそんな大それたことは不要です。華陽サイクルでは他の国の現地法人でもこういった依頼はありましたからご安心ください。」

「それに当社華陽サイクル創業者である現会長兆季は、こうした案件についてもサポートしてしっかり関係を築くことも大切とおっしゃっていましたから。AIも活用して図面なども作って使いやすいメンテナンス場所にしましょう。」

「ではよろしくお願いします。これからよろしくお願いします。もう何と言ったらいいのでしょうか?結果を出して恩返しをします。」

「そんな無理をしないでください、安西さん。私たちは粘り強くサポートしていきますから。ねっ、夢佳さん。」

「もちろんですよ、海斗さん。引き続きよろしくお願いします。」

「さて、本日はうれしい記念に、私の部屋でエスプレッソを淹れましょうか?それで自転車業界のことについて楽しく語りましょう。」

「そうですね。今日はこの話のために一日空けましたので、まさかここまですんなりいくとは思っていませんでしたので(笑)。」

「一同(笑)。」

「海斗さん、エスプレッソは私が作りますよ。海斗さんの作るのは今一つ…あ、ごめんなさい。」

「(笑)気にしていないから、じゃあお願いするね。」

その後、CEO室で自転車業界のことについて、夢佳が作ったエスプレッソを片手に楽しく話をした。これは桜川レーシングにとっても有意義な内容ともなった。浅井はこのことを伝えるために電話でコーチの野村に連絡し、野村からチームメンバーにも知らせた。

「やったー!ついに新しい機材でレースに臨めるね!」

「流石夢佳。彼女をチームに迎えたのは正解だ。」

「夢佳さん、素晴らしい!」

と、メンバーたちは喜んだ。

「これから結果を出していこうね。いくら供給してもらうといっても、それは私たちの実力が伴ってこそ意味があるのだからね。」

「もちろんですよ。キャプテン、そこは夢佳を中心にみんなで取り組んでいきましょう。」

その一方で、夢佳、妙織、浅井の3人は華陽サイクルジャパンのCEOなどと挨拶を終え、これからの決意を新たにし、供給が決まったことを祝してささやかながらの食事をすることにした。

食事は、夢佳が会員となっているあの会員制カフェで行った。

「夢佳さま、お待ちしておりました。会員様につき最大2名までOKということですので、ぜひどうぞ。」

「お二人とも入ってください。今日は、ゲイシャ3種ブレンド中浅煎りナイトロコールドブリューを3人分で。あと定番のパスタとサラダもお願いします。」

「かしこまりました。ご用意いたします。」

「妙織、ここはすごいな。夢佳ちゃん、こんなところに通っていたのか。」

「そうですよ。イタリア本店でもチームメンバーとよく行っていました。」

3人は注文が来るまでの短い間に今回の振り返りと今後の予定を確認した。

そして極上のパスタとコーヒーを嗜んだ。

「これは本当に酸味がすごくていいわね?見た目は黒ビールだわ。噂のナイトロコールドブリューは伊達じゃないわ。」

「流石夢佳ちゃん、今日は本当にありがとうな。これから機材を使って結果を出していこう。」

「もちろんですよ。スタッフさん、すみません。コールドブリューコーヒーをロックで食後にお願いします。」

店を出たのは夜の20時になっていた。本当に怒涛の一日といった感じであったが、華陽サイクルとの機材供給契約は桜川レーシングにとって大きな意味を持ったことは間違いない。

「さて、明日から心機一転ですね。最新ロードバイク機材が届くのはもう少し先ですが、それまでも気を緩めずにトレーニングをしましょう。」

「そうだね。夢佳ちゃん、よろしくね。あなたにかかっているから。」

「皆さんと共に続けていきますから。私一人ではできません。妙織さん、監督、コーチ、キャプテン、メンバー、華陽サイクルの皆さん一丸で前を向いていきましょう。」

「そうだな。夢佳ちゃんだけでは無理だからね。」

「そうでしたね。ごめんね(笑)。」

「気にしないでくださいよ(笑)。」

ここから新しい毎日が始まろうとしていたのである。

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