見出し画像

【映画】もしも徳川家康が総理大臣になったら(2024年)

皆さま、毎日暑いですね。
酷暑お見舞い申し上げます…。


先週末、映画
「もしも徳川家康が総理大臣になったら」
を観てきました。
エンタメムービーでカジュアルに観られる作品…
と思っていたら
(原作は未読なのですが)
それだけではなく
しっかりと大きなメッセージが込められていました。
今日はそのレビューです。


〈物語とキャスト〉

コロナ禍の2020年、首相官邸でクラスターが発生し総理大臣が急死。未曾有の危機に政府は歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活させて最強の内閣をつくる策にでました。
当初は驚かれるも個性あふれる内閣の面々のキャラクターとその政策はやがて国民に支持されてゆきます。
国民の豊かで穏やかな暮らしを願う総理大臣となった家康は安堵しますが
それも束の間、ホログラムに仕込まれていたバグが暴れだし、内閣を封じ込め家康を追放し、国民を支配下に置こうと
ある人物が独裁的な行動に出て…いうストーリー。

2021年に出版されて話題となった同タイトルのビジネス小説を原作に映像化されたこの作品の
監督は武内英樹さん(テルマエ・ロマエなど)、
脚本は徳永友一さん(翔んで埼玉)。

キャストは
スクープを追う新人のテレビ局員、西村理沙役に渡辺美波さん
内閣官房長官・坂本龍馬を赤楚衛二さん
経済産業大臣・織田信長をGACKTさん財務大臣・豊臣秀吉を竹中直人さん
そして内閣総理大臣、徳川家康を野村萬斎さんが演じ、
他にも高嶋政宏さん、江口のりこさん、池田鉄洋さん、小手信也さん、長井短さん、観月ありささん、など。豪華ですね!


〈壊されず、薄まらず〉

歴史上の個性的なキャラクターを
令和6年の今、活躍されている個性的な俳優陣が演じられているのが面白かったですね。
お一人お一人がメインを演じられる高い演技力のあるみなさんを一度に観られるのはなんとも贅沢ですが
その分、シーンやセリフ配分、そしていかに輝いている部分を引き出せるのか、
なかなかまとまらないのでは…?といらぬ心配を勝手にしていましたが笑

互いの個性を壊すことなく
でも決して薄まることもなく
シンプルにいえば出るところは出て引くところは引いていて…。

ベテラン俳優陣の余裕、というかキャリアの濃さとでもいうのか、
いい意味で「バランス」と「圧」がありました。
監督の手腕はお見事ですね。
コメディなので笑いながら、でもラストには伝えたいことがストレートに表現されていて
考えすぎることなく迷わず楽しめました。

そしてなんといっても
渡辺美波さんや赤楚衛二さんの
ベテラン勢の中でのフレッシュ感は心地よく!

竹中直人さん演じる豊臣秀吉は期待通りの怪演で
さらに
GACKTさんの織田信長は「翔んで埼玉」の雰囲気も醸しつつ笑
また怪演で素晴らしかったですね。

映画終盤
野村萬斎さんが演じた徳川家康が
集まった人々を前に
「自らの未来は人任せにするのではなく、自分に期待して自分で決めてほしい」
と諭します。

おそらくそれは監督や制作陣が伝えたい全てが込められているシーンでしょうか。
萬斎さんの説得力あるお芝居もさすがでした。

しかしながら
やはり
見どころは(少しだけネタバレ失礼)
GACKT信長の能の舞のシーンと
萬斎家康の舞のシーン(やや尺は少なめですが)を画面上で対峙させ
それぞれの心の動きを舞に込めて表現したところでしょうか…
いやあ良かったなあ。

萬斎さんは狂言師なので所作が美しいのは無論ですが
GACKTさんは過去にも織田信長役をされたことがあるからでしょうか
「謡」の発声も綺麗でしたね〜。

コメディなので突っ込みどころだらけの作品かも?ですが
ネット社会への風刺も込められ見終わったあとは
「よく言ってくれた」と思いました。

〈あらためて映画主題歌について〉

でも実は

ただ、一つ
どうなんじゃろか

と思ったのは
映画のエンドクレジットにのせて
「新しい学校のリーダーズ」の「Change」が流れて
彼女たちの曲はやはり耳に残るサウンドと歌詞でとても面白い!んですが
クレジットに合わせて聴くと
尖りすぎ?に思えて
映画の余韻が吹っ飛びました
(※個人の感想です)。

萬斎さんも新しい学校のリーダーズのファン?ということもあり起用が実現したと聞きましたが
もちろん話題性と高い歌唱力・編成力など他にも多くの理由で起用されたと思いますが
いやなんとも微妙な…(すみません)

この作品は若い世代へより伝えたいセリフがたくさんあったようにも思いますが
若い世代に人気のグループの曲が
エンドクレジットで流れるから
じゃあ映画を観てみるかいなと
彼ら彼女らが映画館に足を運んでくれるのかは…未知数ですね。

エンドクレジットが流れる時間は
作品に感動して流れた涙が乾く時間
などと言われて久しいですが(タイパ重視の今はもうそんなことも言わないよね。そもそもクレジットは見られていないかも)

「もし徳」のメッセージを振り返る時間として
せめて歌詞なしのリズミカルなインストゥルメンタルでも良かったのでは…と感じましたがどうでしょう。

〈「映画」のこれから〉

ところで

音楽の楽しみ方としてストリーミングが台頭するようになってから
その曲が世間に受け入れられる速度は一段と速くなったように感じますが
同時に忘れられる速度も強まったように見えます。

ここからは無礼を承知で書きますが

これは映画に関しても同じで
ここ数年の映画制作は
以前よりもさらに制作スピードがあがり年間の制作本数も増えた印象がありますね。
毎週末、たくさんの映画が誕生するけれど数ヶ月後にはもう話題にもならない…という作品もより多く見かけるようになりました。

撮影技術・機器の向上だけではなく
スポンサーからの資金が潤沢にあるのか
または
シネコン上映が主流になって劇場の数が増え公開場所に困らないからなのか
あるいは
演じる側も俳優さんに限らず
歌手やアイドル、芸人さん、バーチャルキャラクターなどなどそれぞれの垣根を超えて広がっているからなのか…
いずれにしてもひと昔前よりずっと
環境は整っているのかも知れません。

私はその業界にはいないので確証はありませんが
先の音楽と同じで
作品が完成すると一斉に全国の会場で上映され、ある程度観客を動員したらまた次…のように
映画が消耗品のように見えてなんとも歯がゆい。
映画はエンターテイメント、娯楽だけれどただ消耗されるもの、とは分けて考えたい。

このスピードバランスはそれなりに日本経済をまわしているかも知れませんが

映画は映画館で…ということをが前提で話すと
なんだか令和の映画制作の有りようはすべて観る側に見透かされていて
映画は次から次へと出てくるからネットでOK、映画館に行く必要はない…となり
物価高のなか決して安くはない映画代金を考えてみても
今後、劇場への観客動員数は極端に上下する日がくるかも知れないと感じています。
もちろん観客動員数の大きさと映画の完成度が比例するとは限りませんが。

また、配信作品も様々なアイデアと工夫でテレビや劇場に向いていたお客様を振り向かせようと切磋琢磨しているのが伝わりますし、
私たちは今まさに映像世界の転換への踊り場にいるのが知れませんね。

だからこそ
どんなジャンルでも丁寧に人の温かさを感じるような映画に出会うと嬉しくなります。
そんな作品たちは激しくまたは静かに観る側の心を揺さぶってくれます。

たとえば観た後に明日の朝が待ち遠しいと思わせてくれる映画。
些細なシーンの「何か」で私たちに「大きなもの」を気づかせてくれる映画。
私はそんな作品をいつも待っています。


・・などと
最後は「もし徳」のレビューからかけ離れてしまいましたが(!)

笑いながらちょっぴり未来を考えたい方、そして「飛んで埼玉」が好きな方にもおすすめです笑。

ぜひ。
劇場で。



#映画が好き
#映画感想文
#わたしの推しキャラ

この記事が参加している募集

サポートいただけましたら詩(エッセイ)作品集の出版費用の一部として使用させていただきます★ どうぞよろしくお願いします。