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【ドラマ】「先生を消す方程式」初回感想 ※辛口です。

 2020年も残り2か月ですね。今年はコロナ禍でドラマ、演劇、映画と各現場はスケジュールの変更を余儀なくされたよう。同時に俳優業とこれからの製作現場のあり方を問う年になったのでしょうか。

 それでも今年も気になり、印象に残るドラマがありました。そんな中で田中圭さん主演土曜ナイトドラマ「先生を消す方程式」初回を観ました。


 物語は帝千学園という進学校が舞台。田中圭さん演じる「吉澤経男」が担任として赴任した3年D組は成績優秀者が集まるクラスだけれど実は生徒たちはそれまでゲーム感覚で大人を追い詰めメンタルを啄み退職に追い込んだという経緯がありました。しかし教室で生徒たちから何をされても吉澤は笑顔を絶やさず指導。やがて生徒たちは行動をエスカレートさせ吉澤を殺す計画を立て、両者の間でバトルが始まる…というもの。どんな計画があるのか、どんな罠があるのか、吉澤はどう切り抜けるのか、そして吉澤の本当の正体は…などなどを「考察」するドラマなんですね。

 さて初回を観た印象ですが、ドラマは若い俳優さんたちの「チャレンジドラマ」のようでした。これから羽ばたく若手のためのドラマ。演技指導、カメラ割りも若手のいい意味での青っぽい瞬間を撮っていて良かったと思います。

 しかしながら衝撃的なシーンはやはり予告ですでに話題になっていた生徒たちとのやりとりで吉澤が謝罪を要求されて土下座し床を舐める場面でした。吉澤が床を舐めるんですね。ペロって感じじゃなくベローーっと。その後に笑顔で床が美味しいと。確かにインパクトがとても大きい。これで初回のつかみはオッケーなのか(←これはもう古いのか)。

 と、このシーンの生徒の演技を観てあらためてこのドラマは若手のためのドラマなのだと気づきます。生徒がいい感じで上手すぎない。セットもリアルではないので重いシーンが重くなりすぎず私は良かったと思います。けれど床を舐め切った田中圭の演技が吐出していて馴染まない。生徒たちと対比して田中圭の見せた表情とねっとりとした舌の動きが気持ち悪く上手い。上手すぎて重い。むしろ田中圭ひとりが別世界にいて教室の中で浮いていました。


 実は圭さんは私の推しの俳優のひとり。推しになったきっかけはこの時間枠でのもはや伝説となった「おっさんずラブ・天空不動産」でした。おっさんずラブ天空不動産については長くなるので(笑)ここでは割愛しまして。圭さんはよくインタビューで自身の役作りについて、台本を読む段階ではあまり役作りはしない、芝居は相手がいるのだから自分は実際に撮影現場で相手の芝居を受けながら役を作り上げてゆく…というようなことを話されていました。けれど今回の「先生を…」については雑誌のインタビューで、役作りだけではなく台本、企画全体に対しても「へんなドラマで自分は迷路にいる」と話されているのですが、それはやはり企画・脚本の鈴木おさむさんが今回のドラマをバズらせるのが命題とされていて、企画としてのゴールは見えていても話題になったドラマ「3年A組 今から皆さんは人質です」や「あなたの番です」を追随していることを考えると「あなたの…」で主演を務め高視聴率を叩き出し、さらに芸歴20年を超える圭さんとしては、俳優として演じるだけでいいのか、それ以外に何があるのかも考える、考えざるを得ない立場に追い込まれているのかもしれないのかな、と。確かに迷子になりそうですね。それでも「挑戦できる喜び」や「鈴木さんの台本や長セリフに負けず面白い作品にする」ともおっしゃいました。でも同時に私は圭さんの言う「ゴールが見えない」というのは『そもそもドラマの脚本(ストーリー)になっていない』または『SNSの反応次第で結末か変わる可能性がある』を意味してるんじゃなかろかと勘繰ってしまいました。

 

 さて私のような推しを見る視点を外して(笑)今回の圭さんのねっとりと異常な床舐めのシーン、ご覧になった方は何を感じたのでしょう。私は屋根裏を徘徊し覗き見をしていた青年がやがて犯罪を犯してゆく江戸川乱歩の小説を映画化した「屋根裏の散歩者(1992年 実相寺昭雄監督)と、一卵性双生児の産婦人科医の兄弟の恋愛とそれをきっかけに心が破壊してゆく悲劇を描いた「戦慄の絆」(1998年カナダ デヴィット・クローネンバーグ監督)のふたつの映画を思い出しました。どちらも初見は鳥肌がたち特に戦慄の…は映画館のスクリーンで観たのでラストは身体の芯から怖さがジリジリと来てしばらく引き釣りました(笑)。この異常でねっとりとした質感と衝撃のラストのある二作品の登場人物たちに今回の「先生を…」での圭さんの演技はまったく引けを取らず、良くも悪くもこの教室に、30分のドラマ枠に、彼の芝居は入りきれないんだと感じました。その後の台詞に続く表情、声の出し方も説得力がありましたし素晴らしかった。教室の中でのキャリアの違いを見た感じ。でももしかしたらご本人は、生徒たちの芝居を受けて、もう少し外した演技をされたかったかもしれませんがとにかくなんというか…

 色々ともったいない。

 

 この作品は『ドラマ』なのか『ドラマ風考察バラエティ』?なのか←私はここんところを考察したてしまいますし『ドラマ風考察バラエティ』も嫌いじゃないです、と言う方多いかもしれないですが、ですが、

 『ドラマ考察バラエティ』だとしたらそんなのは私は嫌いです。

 

 と、ここまで物語については床舐め以外書いてませんが、そういうことというか、物語についてはうーん…まだ語るに足らず。なんかすいません。考察意外のドラマテーマがあるのかないのかわからないしあるのかもしれないけど見つからない。いずれにしても田中圭さんや山田裕貴さん、松本まりかさんの演技までゲームのひとつ、にして欲しくないな、というのが初回の感想です。

 

 殺人を犯すまでに至るサイコパス的な人物が登場するドラマや映画はどの時代でも支持され好まれます。それは自分の周りにある現実世界から遠いところにあるため憧れてしまうのかもしれないし、脳や神経がある一定の状態になると刺激を求めるのかまたは抑えるためなのか、いわゆる「普通ではない状態」を目撃したくなるのでしょう。考察上等!命を狙うゲーム大好き!と言う方もそれぞれの好みなので、今回のドラマもSNSでは盛り上がると思います。


 最後にも少し勝手にあれこれ言わせてもらえるなら、圭さんはやり切ったけれどいくら芝居とはいえ吉澤が床を舐める必要はあったのか?土下座だけではダメなの?そんなに半沢直樹を越えたかったの?と鈴木さんに聞きたくもなりました。吉澤経男から田中圭に戻ったときのメンタルを考えるとその後の芝居にも影響する可能性もあるしマネジメント的にも私が事務所の社長だったら止めるかも…でもシルベスター・スタローンが映画ロッキーでトレーニングのシーンで米国では習慣のない生卵を飲むという撮影を行ったことと同じように、カメラが回ると役者は自身の守りを壊してでも何処かに行きたくなるような瞬間を掴めたときに、芝居の面白さから離れられなくなり演ずるのかもしれないですね。

 

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