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歯医者さんに行くのが怖い

最近、歯医者さんに行くのが怖い。憂鬱になる。

わたしは、治療自体や治療後に痛みで困ることはほとんどない。時々あっても(許容できないほどじゃない…)で、大概は済む。
痛いのが怖いわけじゃない。単純なことに気づいてしまったのだ。

わたしは閉所恐怖症だが、本質的に怖がっているのは、息ができなくなることだ。わたしの中で、狭い場所にいることは息ができなくなることに直結してしまう。
そして、歯医者の治療は、口の中にたくさん器具を入れられるから苦しい。
つまり、治療のために口の中を覆うゴムマスクが(息がしづらくなるから)怖い。口を閉じるのを防ぐバイトブロックという器具が(つらいと口で言えなくなるから)怖い。何なら、目元を覆うタオルが少し鼻にかかるのさえも。

この前、型取りをしたのが致命的だった。型取り中は口を閉じるわけにいかないので、器具で固定される。やわらかい樹脂が口の下半分を覆っていく。その日わたしは風邪気味で、鼻の通りが悪かった。樹脂が固まるまで、タイマーをセットすると、医師も助手も処置室を出て行ってしまった(そばにいてもすることはないんだから当然だ)

生きた心地がしなかった。いつ、この、息がしづらい状態が、息ができない状態に変わるのかと思うと、冷や汗が止まらない。周りに誰もいない処置室で、いつになったら終わるのかわからない状況は絶望的だった。

…で、わたしは取り乱して、横たわっている台から転がり落ちそうになった。
ギリギリのところで助手の人が戻ってきてくれて助かったものの、危なかった。いろんな意味で。型をはずしてもらって、深呼吸し、なんとか落ち着いた。

ちょっとヤバい患者とかカルテに書いてもらえたのか、その日以来、処置する際に「これいけそう?」と先生が確認してくれるようになった。それはそれでありがたいことだが、一度経験した恐怖を消すことはできない。閉所恐怖症の恐怖が、閉鎖空間じゃないところでも起こるという気づきも、刻まれてしまった。

36歳にもなって、歯医者さんに行くのが怖いなんて。それも、治療してたら息ができなくなりそうで怖いからだなんて。
息ができなくなるなんて起こりようがないと理解していても、怖い。恐怖は制御できないことを痛感する。

そういうわけで、最近のわたしは、歯医者へ行くために風邪をひかないよう気をつける、という不思議なことに心を砕いている。

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