3月30日

“しんどい”理由の核心であったことが、ひとつ片付く。
 退職して一ヶ月以上経つのに、何度問い合わせても届かなかった退職の書類が、ようやく届きそうだ。これ以上どのように説明すれば伝わるのかわからないくらい、何度も言葉を砕いて送ったメールは、何処をどう読んでそうなるのかわからないような、不必要な書類一枚のデータばかりが返信されて来た。それでは国民年金も健康保険も、失業申請も出来ないと言うのに…。
 最初から謎の多い職場ではあった。
 雇用契約書はない。
 食べようが食べなかろうが、昼食代は徴収される。
 着任早々に話とは違う仕事を割り振られ、質問はないかと訊かれて質問すれば怒鳴り散らされた。理解に苦しみ、頷けずにいると、業務妨害に遭った。
 担当外業務に対する質問を担当者にしたところ、その直属の上司が飛んできてまたもや怒鳴られる。当事者がなりを潜めたまま、所属長にまで話が飛び、こちらの言い分など一切聞かずに一刀両断された。関係のない管理職が何人も入る事態に陥り、取り囲まれ、理解の出来ない説明で言いくるめようとする。わけがわからなかった。
 唯一の頼みの綱だった組合は、“話を聞けばこちらの気が紛れる”ことだけが目的だったようで、「パワハラで訴えたい」と伝えると、「事態を大きくしたくない」と途端に逃げた。
 年度途中、別の職員が思わぬトラブルで吊し上げに遭った。業務から外され、隔離され、謹慎という名の下に隠滅された。数ヶ月後、復帰が決まったその日、その人は全職員の前で“謝罪文”を読まされる。何なんだこれ?と思った。
 当事者のいない会議で、異常な処分を決定した管理職は、自らの判断がいかに正しいか、その正当性ばかりを強調した。全く説得力がなかった。
 同じことが我が身に降りかかるとは、その時まさか思わなかった。
 最初は自業自得だと思ったが、問題とは全く関係がないのに、業務から外したり別室隔離するのは違う。組合騒ぎになったとき、色々調べたそれらの行為は、立派なハラスメントに当たるとされていた。命の危機を感じたのは、十ヶ月の積み重ねの結果だ。最後は自らのミスが原因だが、前向きな想像力を発揮出来るような未来は無いと思った。脅しとしか思えないドラマさながらの台詞を、現実世界で聞くとは思わなかった。恐ろしさに震えた。
 死ぬとまでは思わなくても、逃げなければ病気になると思った。実際、診断書が降りたので、病気になっていたか、なりかけていたには違いない。
 次の一歩を踏み出したいのに、ずっと呪縛されている感じがしていた。縁を切るために逃げたのに、片付かないから切りきれない。それがようやく、すっぱり切ることに繋がる。
 書類は今日中に投函されると言った。二週間も前に打診し、十日待って催促し、無視されたうえに無駄なやり取りが二度三度続いた。
 静かなオフィスでのんびりお茶を飲み、談笑している姿は何度も見た。今が繁忙期の年度末で忙しいのだとしても、相手にとっては仕事のひとつのはずだ。こちらを疎かにするのは違うと思う。“今”になるまで時間がなかったのなら、それを証明する言い訳を聞きたい。
 結局一ヶ月以上、私は健康保険に入れなかった。通院中の病院の再診は延期したが、このコロナ禍に何もなかったことは奇跡に近い。あと一日あるので油断は出来ないが…。
 書類が届くまで二日はかかるだろうか…。予定は大きく狂っているが、月初めが一歩を踏み出す手助けになれば、それはそれで良しと捉える方がポジティブかも知れない。

 

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