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鬱病を感染された 14

14)たいがい俺はいい加減だ。皆が困っていても無関心
一時期、営業の仕事をしていた頃があった。
コミュ障の俺は他人と会うのが辛くていつも喫茶店でサボっていた。用事も無いのに相手の職場にお邪魔する意味がわからなかった。
まさに邪魔しに行ってるとしか思えなかった。
それでもたまに躁状態のときパンフレットを配って1日に2〜30件まわる事があった。
その後に必ず俺指名で仕事が舞い込んで来る。
そういう時の打ち合わせは目的がちゃんとあるので訪問するのはさほど苦痛では無かった。
だが俺の場合、客の為に親身になったり、より良い提案が出来るわけではないので途中から雲行きが怪しくなる。例えば客が要望を出して来ても俺にはその要望を叶える力がない。だから持ち帰って相談するのが普通だが俺の場合違う。
客の要望を叶えられないのは仕事が出来ないと思われる、それは恥ずかしいことだと思ってしまう。その結果要望を安請け合いしてしまう。そして困る。
もう誰にも相談出来ない。自分でなんとかしなければならない。でもどうにもならない。もう誤魔化すしかない。そうなると要望に応えてなくても知らんぷりだ。客が怒っても謝るだけで対処は出来ない。ただ謝る。謝るしかない。そのうち客の 方から諦める。こんなんだから本当に俺は営業が出来ない。我ながら本当にいい加減だと思う。

「やばいよね」「本当に・・」
今回は聞かれたくなかったが、やっぱり声が聞こえてきた。
「営業以前に人としてダメだよね」
ダメ押しされても何も言えない。
「何を言われても出来ないものは出来ない」
これはもう開き直りだ。
「出来ないなら出来ないと言えば良いじゃない」
「カッコ悪いだろ、出来ないって言うの」
「後から困るより良いじゃない」
「後先考えられてたら苦労はしないよ」
相手も呆れたのか沈黙が流れた。
やがて相手が口を開いた。
「他人に迷惑をかけてまでも自分を甘やかすの」
マジな指摘に心が疼いた。
「そういう考え方しか出来ないんだよ、俺は」
また沈黙が流れた。今度は溜め息が沈黙を破った。
「はぁ、カッコ悪いって言うけど出来るってウソをつく方がよっぽどカッコ悪いんじゃないの」
おっしゃる通りで防戦一方だ。開き直る・・
「なんとかなると思っちゃうだよ」
「他人に助けを求めるのがそんなに恥ずかしい事なの」
「俺にとってはそうなんだよ」
「それは治したほうが良いわよ」
俺はどうやったら治るのか詰め寄った。
相手はこう言った。

「他人に嫌われる事に慣れることね」

目からウロコが落ちた。俺は良いカッコしいで他人の目ばかり気にしていた。
嫌われるのが怖くて相手の顔色ばかり気にしていた。
「そうか・・そうだな」
俺は負ったダメージに比べて失った物が大きいような気がした。
「まずどうしたら良いんだ」

あれ、返事が無い。
「ねぇ、どうしたんだ」

「あとは自分で考えて下さい」
「そんなぁ、冷たい事言うなよ」
突然の塩対応に困惑しながらも俺は助けを待った。だが返事はなかった。


つづく(14/53毎週日曜日18:00更新)

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