プリティーモンスターズ ケリー・リンク
Am 28. Februar
PRETTY MONSTERS プリティー・モンスターズ
Kelly Link ケリー・リンク
訳 柴田元幸
「僕のこと、食べるの?」
「どうかなあ」
男女差別者じゃあないけれども、こういう不気味で笑える話を書くのは女性ならではと思わずにはいられない。
なんとなく男の方がロマンチストなんだ。
リンクのこの短編はどれもホラー的な怖い話なのに、なぜか笑いを誘う滑稽さがある。
どの話も身近に起こりそうなことなのに、変にねじくれて不思議ワールドに連れて行かれてしまうんだ。
これらの話の何が怖いかって、恐怖を気の抜けた日常気分で語るところだ。
だらか「死」が絡んでいてもなぜか滑稽で笑える。
墓から蘇ったゾンビなのに、普通のティーンの女の子然としていたり。
家族・友達みんなで大ファンの神出鬼没ドラマの世界に知らぬ間に入り込んじゃったり。
夫が地獄の番犬がいるハンドバックの中に住んでいたり。
キャンプ中に得体の知れない怪物に喰われそうなのに、そいつがなぜかフレンドリーだったり。
感染ウイルス蔓延で隔離されてるのに、恋とサッカーを楽しんでいたり。
幽霊を腰から下げて飼ってみたり。
兄弟喧嘩が流血沙汰になったり。
その中でも表題のプリティー・モンスターズは「物語を読む私」の入りこ構造になっているけれど、読んでいるのは果たして人間なのか?
ファンタジックな可愛らしい描写だからこその薄気味悪さにまみれている。
「あたしが終わりを決めれるんだったら、みんな友達のままでいるのにな」
まるで自分に起こったことような気になるブラックな不思議ちゃんワールド。