宅建士試験で40点取って合格するための最も簡単な方法はこのライトノベル小説を読むことです 権利関係編1-4
「その心配は無用です。そのようなこともあろうかと考え、私が偽造した遺言書の日付は今のところ空欄にしてあります。死亡する前日の日付を書き加えれば、まあ、違いないでしょう。そうすれば、先にどのような遺言を書いていたとしても撤回したものとみなされますから」
民法
第五節 遺言の撤回及び取消し
(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第千二十四条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
(撤回された遺言の効力)
第千二十五条 前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
※遺言者が遺言を撤回した後で、撤回したことを撤回したとしても、一旦、撤回した遺言は無効だという意味の条文。
(遺言の撤回権の放棄の禁止)
第千二十六条 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。
侠元先生が民法の条文を解説して見せると、成金組長は、侠元先生が取り出した遺言書に目を向けて、ほくそ笑んだ。
「つまり、宅本健一の強欲ジジイがどんな遺言書を残していようとも――それが、公正証書遺言という形のものであったとしても、侠元先生が偽造したその遺言書によって、撤回することができるというわけですなあ」
「そのとおり。このたった一枚の紙きれによって、成金組長は、宅本健一の遺産のほぼすべてを手中にできるわけです」
「でも、ちょっと待ってください。宅本健一は、既に、かなりの遺産を若妻の宅本春子に生前贈与しているんじゃないですか? 相続税対策とかで」
古鉄若頭が身を乗り出した。侠元先生はうなずくと、
「確かに、いくらかの財産は、既に宅本春子に移しているようだ。だが、宅本健一の遺産の全額からすれば、はした金だ。奴は、まだまだ、長生きするつもりでいたらしいからな」
「はした金ですか……。億の価値のあるマンションとかじゃないですか」
「まあ、そのとおりだが、既に宅本春子に渡ったものを回収することはできん」
「どうせなら、宅本春子の遺言も偽造してはどうですか。そこにちょいちょいと書き足して」
遺言書の本文には、宅本健一そっくりの筆跡ですべての遺産を成金組に包括遺贈するという趣旨の文言が書かれているが、余白が大分ある。古鉄若頭はそこを指で示したのだ。
「宅本春子も一緒に、成金組に包括遺贈すると書けばいいんじゃないですか。億の価値のあるマンションですよね。もともとは、宅本健一の遺産でしょう。それをむざむざ、宅本春子の親だか誰かに渡してしまうのはもったいないじゃないですか」
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