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女であること

#ジェンダー #ドラマ
#小説

女は思った。
男はなんて無責任なのだろうと。
そう思いながら女(春田みおり)はトイレのレバーを押す。
「妊娠しちゃった・・・。」
女はこの先の不安に駆られた。妊娠した時の費用や手続き。万が一下ろすときの費用。
「いやだ。」こんなに考えなくちゃいけないことに、女は嫌気がさした。

一方
オンナは思う。
赤いピンヒールにフリルたっぷりのドレス。
ショーケースの前でオンナ(秋道たかお)は大きなため息をつく。
自分に似合うはずがない。そう思ってオンナはいつものように白い目に見られながら、いつものバーに向かった。

そこで、思わぬ事件に遭遇する。

女が男にビンタされていたのだ。
「なんで妊娠なんかするんだよ!」
いわれのない言葉にオンナはイラっとした。『あんたが避妊しないからだよ』と心の中で突っ込んだ。
「おろしてくれ。金は払う。」
こうして男はオンナに10万円払った。
これを見たオンナはなぜか頭にきて口火を切った。
「お金の問題?笑っちゃう。」
「え?」
「あんたが避妊しないから、彼女妊娠したんじゃない。責任取って子育てするとかないの?」
「は?子育てとか無理だし。第一こいつが悪いんだよ。」
そういった男にオンナはぶちぎれる。
「なに無責任なこと言ってんの?あんたそれでも彼氏?まずこの子に言うことは謝ることじゃなくて!」
そうして、オンナは水をぶっかけた。
「なん!これ高いんだぞ。どうしてくれるんだ!」
男はスーツを指さす。
そこにオンナは金を投げつけた。
「これで弁償するわ。あんたがあの子にやったように金で解決してあげる!」
そうして10万を男に渡した。

そうすると、男は苦虫を嚙み潰したような顔でその場を離れた。
「現金な男ね。」
そうオンナが言うと、もう一人の女はあっけにとられていた。
「あの。えっと、ありがとうございます。私の代わりに怒ってくれて」
女はオンナにお辞儀する。
「いいのよ。今日ムカついたことがあったから、腹いせにやれてよかったわ。」
「え?でも」
「いいのよ。それより、男に10万渡したから今お金ないの。ここ、おごってくれない?」
「あ、それなら喜んで。あ、でも今お腹に赤ちゃんが一応いるので、ノンアルコールで付き合ってもいいですか?」
「もちろんよ。」

こうして女とオンナは意気投合する

そして、いろいろ話をしているうちに話題が子供を産むか産まないかになった。

「それで、あなた。あの男の子供産むの?」
「悲しいですけど、出産資金とか持ち合わせてないですし、一人で生きるのに精いっぱいなので、下ろそうと思います。」
すると、女は涙した。
産んでも、産まなくてもお金がかかる。
そして、なにより命を殺すことに抵抗があったからだ。

「ほんとはおろしたくないです。せっかくの命だから。でも産んでも幸せにできる自信がありません。この傷は一生残ると思いますが、下ろすしかないです。」
「そう。」
オンナは涙する女の背中をさすった。
「私にはあなたの背中をさすることしかできないけど、あなたが決めたことに味方するわ。」
「ありがとうございます。」

後日
女は産婦人科で堕胎手術を受けることにした。
オンナはそれに同行した。

彼女の覚悟を見守るために。

そして、手術が終わる

手には赤ちゃんの陰影があった。豆粒サイズのほんの小さな塊。でも命には変わりない。
女は泣いて、オンナも泣いた。

泣きはらした二人はとりあえず、休憩するためにカフェに向かった。

そこで、オンナは白い目で見られる
本人は慣れているが、
女はそんな目で見るほど彼女はおかしくない。といった。
それを聞いたオンナは爆笑。
とりあえず、席に座る。

おかしくないって何?とオンナは聞く。
「女はオンナであることがあなたの普通なのに、おかしな目で見るのは失礼な気がした。」
と返答する。

すると、オンナはまた爆笑する。
「そういうことを普通にいえるあなたは、私にとっては異常で貴重だわ。」
女はそう言われて不機嫌になる
「ごめん。悪い意味じゃないわ。言葉の綾よ。私の周りにはオンナでいることを嫌う人ばかりで、異常だと言われていたから。反対のことを言われて、おかしく思っちゃったの。普通とはその人の普遍的なものであって、私の普通じゃない。そうよね。」
「?」
女は難しすぎてよくわからなかった。

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