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何度でも読み返したいnote1

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。 100作品たまったので、何度でも読み返したいnote2を作りました。
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#我慢に代わる私の選択肢

春が半分泣いている。

「彼女、美人だけどニコリともしないでしょ。だから”冷子さん”」  西藤さんは紙の左上をホチキスで留めながら言った。何も応えられずに曖昧な笑みを浮かべると、「悪い人ではないんだけどね」と控えめに付け加えてから別の話題に移っていく。  私はほっとしたのを気付かれないように相槌を打ちながら、別のデスクの島で黙々と作業をするその人を横目に見た。  清潔感のある白い壁紙に艶を消した灰色のオフィスデスクがひしめく一室。密やかな話し声と複合機が紙を吐き出す音が満ちる中、その人だけが別

救ってくれたのは、冷蔵庫のプリンだった

1ヶ月ほど前から、週に1回のペースでこちらから実家に帰ったり、逆に母に来てもらい、買い物やちょっとした家事などをお願いしている。 30代半ばにもなり、己の面倒さえも己で見れず、むしろ本来なら逆の立場なのに、年老いた母親に身の回りのお世話をしてもらっているこの状況。 情けなくもあるし、抵抗もある。 けれど、最近はほんの少しずつだけど、 「…ごめんね。お願いしてもいいですか」 と言えるようになった。 きっかけは、母の言葉と、冷蔵庫に入っていたプリンだった。  ⭐︎ 1

平日の夕方、役所のトイレで泣いてしまった

この文章は、ツムラ#OneMoreChoiceがnoteで開催する「 #我慢に代わる私の選択肢 」コンテストの参考作品として主催者の依頼により書いたものです。 数年前にできたのであろう、白を基調とした清潔感たっぷりのトイレで、私は泣いていた。なるべく息が漏れないように、歯を食いしばり、顔を手で覆いながら涙が止むまでじっと耐える。めんどくさいヤツだと思われるだろうが、小学生の時からたまにトイレに閉じこもって泣いてきた。公の場で突然目頭がカッと熱くなったとき、私は我慢ができない

やっぱり無理だった。抱えきれなかった。

無理が祟った。 最近私の心配性が悪化している。 今までずっと自分の将来に不安を抱えていた。 でも今は親の健康が気になって…心配で仕方ない。 私の母は今年67歳。 母の母、私の祖母はこの歳で亡くなった。 私は祖母が亡くなった後生まれた。 だから会ったことがない。 そして母が母を亡くした歳が今年の私の年齢なのだ。 厄年にビビり過ぎていると言われればそれまでだけど、そんな母の過去が頭から離れない。 何かあったらどうしよう。 そんな矢先、母が少し体調不良を訴え出した。 すぐ