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何度でも読み返したいnote4

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。 こちらの4も記事が100本集まったので、5を作りました。
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#結婚

不惑まで5ヶ月、「子どもを持たない人生」を受け入れた

物心ついたときから、「私はお母さんになる」と思っていた。 弟や年下の従弟妹たちがいて、私がいちばん年上だったからかもしれない。自分より小さい子の面倒をみる機会が多かったし、それが好きでもあった。周りの大人たちに「赤ちゃんを抱っこするのが上手」と、よく褒められた。 小さい子たちはみんな「ゆいちゃん」と懐いてくれるけれど、一度何かがあって泣き出すと「ママー!ママー!!」になる。その瞬間が、いつも少しだけ悔しかった。 私ではなく、ママじゃなきゃダメなのだ。 多分あのころから、私は

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「結婚してぇ」と 「独身サイコー!」のはざまで

「あー結婚してぇ」 深夜11時。私たち以外誰もいなくなったフロアに魂の叫びが響き渡る。 急な業務対応があり、後輩と遅くまで残業していた夜だった。ぎょっとした。 「結婚したい」なんて言葉を、生身の23歳男から聞いたことがなかったから。 よほどぎょっとした顔をしていたんだろう。 「弱ってると結婚したくなりませんか?」と後輩の弁解が入る。 当時24歳の私にはさっぱり共感できなかった。 残業でしんどい週は、金曜日に友達とどんちゃん騒げばいいじゃん

このさき、いつも隣に

 駅前の広場で、スピッツのチェリーを歌っている人がいた。  小雨が降っていて、私はミスタードーナツの詰め合わせを手に家路についていた。入籍前夜のこと。  無意識に歌詞を反芻する。小さな幸せを大切に暮らすって、生きていくうえでいちばん大事なことかもしれない。感傷的な気分に浸りつつ、内心まじめに頷いていた。ないものねだりばかりしていたら、いつまで経っても満たされないもんなぁ。 「遅くなったけど夜ごはんどうしようか?」 同居人のLINEに、「ミスド選び放題だよ!」と返したら、

花 嫁 の 手 紙

澄んだ空の一端を紡いで 織り上げたような淡水色のドレス。 シフォンのヴェールを 幾重にも重ねてつくられたスカートには、 ガラスの粒が贅沢に、繊細に あしらわれています。 動き合わせて やわらかな煌めきがスカートの上を走り、 まるで 瞬く流星のようです。 私には勿体無いほどの その美しいドレスに身を包んで 前へ、前へ。 彼の肘に手をかけ 生花に彩られた会場の中を進みます。 十月の、透き通るような秋の日。 空の青と木々の緑に囲まれた式場で 私たちは ささやかな結婚式を挙げ