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何度でも読み返したいnote4

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。 こちらの4も記事が100本集まったので、5を作りました。
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#家庭

春 空 の ア ク セ サ リ

窓の外は隅から隅まで 青いタイルをぴっちりと敷き詰めたような 快い空です。 カーテンを開け放ち、 部屋に 四月の日差しをたっぷり呼び込んで アイロン台の前に座ります。 休日の午後2時。 まとめて洗ったシャツやハンカチの アイロンがけタイム。 襟、カフス、腕、肩、身頃と シャツのカタチに合わせて アイロンをすーっと這わせます。 裏に返したり、スチームを使ったり、 アイロン台の先端を使ったり。 皺が綺麗にのびていく様子を見ていると なにか、自分の気持ちまで 整っていく心地

ごめんなさいを、言わなかった。

これは自分のために書いているのかも しれない。 きっと自分が楽になるために。 そうすることがいいことなのか どうなのかわからない。 SNS的でなにかを書くということ その向こうに誰かが読んでいる ということにまだ不慣れなのかも しれない。 とりわけ家族について書くことは なんども自問してしまう。 人はいつか記憶を失うものだし。 そばで暮らしている大切な人が 覚えてほしいことを忘れてしまう ことに今年からずっと直面している。 時々、記憶が揺らぐから

息子には まだ教えたくない言葉がある

「ねぇママ、お手紙よんでないのにもう捨てるの?」 ポストから束になったチラシを持ち帰り、ゴミ箱に捨てようとした私を見て、息子が言った。 私は捨てるのを躊躇い、ゴミ箱の上で手を止めた。 「ママ見て、ピザのお手紙もあるよ?」 “チラシ”と言う言葉をまだ知らない息子は、チラシのことを”お手紙”と言う。 お手紙か、そんな風に言われたら何だか捨てられない…。 「これはね、チラシって言って、要らないチラシだから捨てるんだよ」とは言えなかった。 一応ざっと目を通したものの、

夕陽の部屋と秋映りんご

リビングの扉を開けると 部屋に、西日が差していました。 斜めの日差しが、 波打つレースカーテンの縦縞を通過して ソファに、床に、光を投げています。 ワックスの効いた木目の床に 光が反射して、部屋全体が 明るい色をしています。 昼間、ついうたた寝をして 起きてみると すっかり夕方になっていたのです。 やさしく揉みほぐしたような 夕陽のぬくもり。 手のひらで受けるとそれは ふっくらとあたたかく、 肌の上に心地よく広がります。 リンゴをひとつ、剥きました。 長野生まれの品

花 嫁 の 手 紙

澄んだ空の一端を紡いで 織り上げたような淡水色のドレス。 シフォンのヴェールを 幾重にも重ねてつくられたスカートには、 ガラスの粒が贅沢に、繊細に あしらわれています。 動き合わせて やわらかな煌めきがスカートの上を走り、 まるで 瞬く流星のようです。 私には勿体無いほどの その美しいドレスに身を包んで 前へ、前へ。 彼の肘に手をかけ 生花に彩られた会場の中を進みます。 十月の、透き通るような秋の日。 空の青と木々の緑に囲まれた式場で 私たちは ささやかな結婚式を挙げ