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何度でも読み返したいnote2

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。こちらの2も記事が100本集まったので、3を作りました。
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#眠れない夜に

05.14

美味しいもの談義「よくわからんけどとりあえずすっごい美味しいもん食べたいなぁ。」 仕事の帰り道でぼくの隣を歩くいつもの上司が笑いながらぼくにこう語りかけてきた。 「そうですね。 とりあえずすっごい美味しいもの食べたいですね。」 そうぼくも笑いながら上司へと言葉を返す。 そうやってぼくと上司のいますっごい食べたいもの談義が突然幕を開けた。 まずはじめにあがった美味しいものは「回転寿司のサイドメニュー」だった。というのも仕事の休憩時間にぼくがInstagramで回転寿司

なにごともない町

ここ数日間、大家さんへの退去の挨拶を書いては消し、書いては消しを繰り返していた。 彼らに懺悔しておきたいことや、共有しておきたい思い出。 いざ書き出してみると糸がするするほどけるように次から次へと記憶と言葉が溢れ出てきて、書けども書けども収まりそうになかった。 節分のあと自転車置き場に残された大量のハトのフン、ガリガリ削って片付けてくださってありがとうございました。 そして、本当にごめんなさい。 あの辺りに炒り豆をこぼしてそのまま放置した犯人は、私です。 なぜか真夏の昼間

ご長寿ジョークの最適解。

このご長寿ジョーク。 そこそこ生きてりゃ、誰しもいつかどこかで遭遇した事があるんじゃないだろうか。 え。何それ分かりにくいって。 じゃあ、もう一つ踏み込んだ表現でお伝えしようと思う。 ご長寿ジョークとは、お年寄りによる主に死を匂わす洒落にならないブラックジョークの事だ。 私がこのジョークに触れたのは小学生の頃。 私には何よりも敬愛する祖母がいた。 その祖母が70代半ばに台湾旅行に行く事になり、パスポートを取得。 明治生まれの祖母がそれに書いた日本語とローマ字の名前。そし

顔を覚えている男の話10

もし運命というものがあるとするなら、 きっと彼と私は運命の歯車が少しずれていて、 彼と私は一生交わることがなかった。 でも、逆に歯車がずれていなかったら、今、私の隣にいたのは彼だったかもしれないという人の話。 結婚前の私はとにかく誰とも寝るような女だった。 一緒にベッドに横になれば大抵の男はやることはやるのだけど、 私が一晩ベッドで過ごした男の中で、たった2人だけは私に手を出してこなかった男がいる。 それが今の旦那と、彼だった。 彼とは入社した会社の内定式で出会っ

ひとり、街を歩く夜に思うこと

急に歯が痛くなって、 夜遅くまでやっている歯医者に駆け込んだ。 夕食の仕度はしてきたし、子供たちは夫が見てくれる。 歯の治療を終えて外へ出ると、 すっかり真っ暗だった。春の雨が、静かに降っていた。 夜は久しぶりだ。 子供が産まれて、そのあと感染症が蔓延してから、1人で夜に出歩くことは、ほとんどなくなった。 久しぶりの夜は、 いつもの街をなんだか知らない場所みたいにしていた。 歯医者の並びに、予備校がある。 昼間は、いつも空っぽで薄暗い。 けれど今は、部屋は煌々としてい