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何度でも読み返したいnote5

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。更新は終了しました(2024.6.10)。
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#母

謝らないことしかできない。

私の両親は、六十代で地方移住し、いまは夫婦二人で暮らしている。 田舎暮らしも八年目を迎え、もうすっかり、その町の人になった。ふだんは遠く離れて暮らし、年に何回か、顔を見せに会いに行っている。 五月の連休にも、父と母に会いに行った。静かで小さな町には海があり、山があり、広い空がある。滞在中は、いろんな路地を散歩したり、庭でビールを飲んだり、小さな畑でつくっている野菜の様子をみたり、両親にスマホを教えたりして、のんびり過ごす。母の手料理を味わいながら夫婦のいろいろな話を聞くのも

殿方は座って用を足してください

近所のケーキ屋さんはチーズケーキが人気で、私もお気に入りだ。でもプリンが好きな母のために、プリンを2つ買って実家へ急いだ。 おしゃべりしたくてたまらなかった母は、私が椅子に座る前から、堰を切ったように話し始めた。 息継ぎも忘れて話し続ける母。 話の内容が入ってこないくらいに、母の独り暮らしの淋しさがズシンと胃に重い。持っていったプリンを、箱から出せなくなった。 元々、母はおしゃべり好きで、なんでも思うままを口にしてしまう人だ。それを、父がずっと受け止めたり制止したりし

母と歩けば。

実家を出て二十数年が経つ。 気がつけば、家族で暮らした年月よりも一人暮らし歴のほうが長くなっている。 私もきょうだいも巣立ち、両親は六十代後半で地方へ移住し、今はそれぞれがそれぞれの場所で生きている。 そんな家族も、毎年お盆とお正月には全員で集まる。 両親の家に集合して、たくさんしゃべって、さんざん食べて飲んで、賑やかに過ごす数日間。その楽しい時間の中で私がいつも思うのは、「もう二度と、家族みんなで住むことはないんだな」ということ。 そりゃそうだ、きょうだいにはパートナーが

ねぇねぇ聞きたいこといっぱいあるんだけど。

3/18は母の命日です。母は3年前にがんと戦い抜き、62歳の若さで亡くなりました。 noteをはじめたのは、正直なところ、母への気持ちをまとめておきたかったから。 もう3年、まだ3年、か。 4年前の春、ようやく妊娠した。母も大喜びだった。臨月に入り、大阪の実家に里帰りした。産前産後は母に甘えて、身の回りのサポートをしてもらおうと思っていた。こまめにLINEでやりとりしていたものの、里帰りして実際に会った母はどうも体調が優れない様子だった。今まで見たことがない辛そうな表情

母の隣りは

五月の連休、帰省した実家の庭先でビールを飲んでいたら、母が家から出てきた。育てている花や野菜の様子を見て、水をやって、それから私のいるベンチに腰掛けた。少し横にずれて、並んで座る。 あの花はお隣の○○さんが株分けしてくれたものだとか、来月に入ったらオクラの苗を植えるのだとか、楽しそうに話している。移住したら家庭菜園をやりたいって言ってたもんね、夢が叶ってよかったねえ、なんて思いながら、私はふと気がついた。あれ、私いま、緊張していない。母と二人で居るのに。 そういえば前回遊

母と行くユニクロは特別

ゴールデンウィークのこの時期、例に漏れず私も実家に帰って来た。 私の実家は九州の田舎にある。と言っても、車で10分ほど行けばショッピングセンターやらスタバやらユニクロやら、それなりのお店はあるから、それなりに住みやすい田舎なんだと思う。 ちょうど直近で発売されたユニクロの服で気になるものがあったので、ユニクロに出かけることにした。 家に居た母にも一緒にどうか?と声をかけるが、暇だし行っておこうかな、という返答。あんまり乗り気じゃないのかな?と思うが、最近いつも同じ服を着てい