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何度でも読み返したいnote5

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。更新は終了しました(2024.6.10)。
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2024年3月の記事一覧

しりとりが繋いでいくもの

昨日の夜、交差点で信号が赤から青に変わるのを待っていたら、遠くから手を繋いだ親子が歩いてきた。 真ん中を歩くのは3歳くらいの男の子で、右手をお母さんに、左手をお父さんに繋がれ、地面を少しだけ浮いたように歩いている。絵に描いたような親子だ。 親子はそのまま近づいてきて、横断歩道の手前で待っている私のすぐ後ろに来た。楽しそうな声が耳に飛び込んできた。 ス・タ・ン・プ! 男の子は「スタンプ」の「プ」に音符マークでもつけたように、語尾を跳ねながらそう言った。 スタンプ?何か

今日は嵐みたいな風でお散歩中止だから、ちょっとした文房具のお話。

この間文具屋さんに行ったら、面白いものを見つけた。 DELFONICSのRollbahnっていうノートがあるでしょ? 中身のノートはちょっと黄みを帯びた方眼ノートで定番中の定番だけど、手を替え品を替えいろんな種類のデザイン表紙を出してくるノート。 出始めの頃はサイズは色々展開されてても無地ばっかりだったけど、最近はいろんなイラストとか、ラメったやつとか、プラスティックの表紙とかも出てる。 モレスキンも日本で出始めの頃は、黒一色で中身はルールドと白紙と方眼のみ。 結構作りが

人生を幸福に仕上げるコツはウインナーコーヒーにあるのかもしれない 《会社員》

「こんな簡単なこともできないのか」 会社で言われる度に落ち込んでいた。 私には、"簡単なこと"ができない。 ・・・ およそ10年前—— 特に栄えてはいないが、田舎とは言えないような町。ほどほどに人々が笑い、青ざめて見える。涙を忘れたかった日々。風に流され、空き缶が不気味に音を立てながら転がっている。 駅前の混雑も落ち着き、会社員たちが概ね出勤しきった午前10時半頃、私はゆらゆらと町を歩いていた。 太陽があまりに目にしみる。 私はくたびれたスーツを身にまとっていた

好きじゃない仕事、の先にあったもの

「好きを仕事に」 「好きなことして生きていく」 などのキャッチコピーが世の中に定着して久しい。 個人的には、単純に「好きなこと」を仕事にするってなかなか難しい、と思う。どんなに好きなことでもそれが仕事になってしまえば「好き」だけでいられなくなることもあるし、逆に全然興味がなくても仕事として向き合ったことで好きになることだってある。 以前働いていた会社では、自身の仕事を振り返る指標として 「WILL(やりたいこと)」 「CAN(できること、得意なこと)」 「MUST(やらな

沈黙はお洒落

電車で面白い人を見つけた。 向かいに座った上品そうなお爺さんが、仕立ての良いトレンチコートの膝の上にハンカチを広げて、そそくさと取り出したカップ酒を背筋よく飲んでいた。 こんなにシャンと背筋を伸ばして、エレガントにカップ酒を飲む人を初めてみたので、なんだかすごく面白かった。公共の場でお酒を飲むのはあまり良しとされないが、このお爺さんに至っては、まるで高級寝台列(ななつ星とか、カシオペアみたいなやつ)の食堂車両にいるかのような気品ある佇まいで、東京メトロ利用者の層の厚さに驚き