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何度でも読み返したいnote3

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。こちらの3も記事が100本集まったので、4を作りました。
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#夏

夜涼みの缶ビール

考えごとをしていて、いつもどおり散歩へ出た。療養期間が明けて久しぶりに吸い込んだ夏の空気は、早くもどこか秋めいている。 季節ごとにタイトルを付けはじめて一年。この時期はどんな言葉があるのだろうと思って少し調べたら、良さげなのが見つかった。よすずみ。二文字で「やりょう」でもいいらしいが、夜道の足取りに関わるので夜涼みの散文とする。 整理、という言葉がある。 仕事をしているとよく出くわす。記録の曖昧な情報、数字の合わない根拠、部署間での意見の対立。少々都合の悪いことに一旦の

長月に 揺れる 風鈴のこと

まだ残暑の厳しい九月のはじめ。 灼けるアスファルトの上を 先へ先へと急ぎ歩くなか、 信号待ちに 足を止めたときのことでした。 凛、、凛、、、 どこからか、懐かしい、涼やかな音がします。 日傘を下ろして、あたりを見廻すと、 道沿いの家の軒先に 綺麗な風鈴が一鈴、 下げられているのが見えました。 海月のように丸く 下の方だけ少しすぼめた外見は 縁に向かって青いグラデーションの入った 薄手のガラス作り。 そこへ白い糸が通って、 淡い絵をしたためた短冊が キュッと、結ってありま

未婚、子なし、梅干しの味

本来なら今は、まだじめじめした梅雨時期だ。 けれど、今年は梅雨入りの「つ」を言ったとたん、終わってしまった。 異例の梅雨明け。 どの新聞にも、そんな見出しが並んだ。 どうやら異例なのは、梅雨だけではないらしい。 毎年張り切って梅干し作りにはげむ祖母が、今年は 3kgしか作らないという。 3kgでもすごいが、作る量を減らすというのは衝撃だった。 なんといっても、梅干し作りは祖母が毎年大切にしている、「仕事」だ。いつも祖母の分とわたしの実家の分、あと親戚2家族に分けるの