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8月になり、母の何度目かの命日が訪れる。 大人になるまで、私は母が好きではなかった。 はっきり嫌いとまではいかなくても、自分の母と周りを比べて子供の頃からコンプレックスを感じていた。 母は看護師だった。 私が幼い頃から両親は共働きで、私と姉は当時でいう鍵っ子だったので学校から帰ってくると夜までひとりで留守番していた。 年が離れた姉は中学で部活をやっていたから、帰宅は母より遅かった。 留守番は苦ではなかったけれど、母が仕事の日に友達と遊びに行けないのが嫌だった。 ふだん
まだ残暑の厳しい九月のはじめ。 灼けるアスファルトの上を 先へ先へと急ぎ歩くなか、 信号待ちに 足を止めたときのことでした。 凛、、凛、、、 どこからか、懐かしい、涼やかな音がします。 日傘を下ろして、あたりを見廻すと、 道沿いの家の軒先に 綺麗な風鈴が一鈴、 下げられているのが見えました。 海月のように丸く 下の方だけ少しすぼめた外見は 縁に向かって青いグラデーションの入った 薄手のガラス作り。 そこへ白い糸が通って、 淡い絵をしたためた短冊が キュッと、結ってありま
先日、久しぶりに友達と旅行に行った。 行先は小さな島。自宅から在来線を乗り継いで港に行き、そこから船に乗る。片道1時間と少しの小旅行だ。 いつもとは反対方向の電車に乗って、窓を覗く。 だんだんとビルが消えて、街並みが消えて。自然が多くなってきたな と思ったと同時に、窓の奥に海が見えた。 私の住む町がこんな景色と繋がっていたなんて。 線路の延長線の知らない世界にわくわくが止まらなかった。 直前まで雨予報で 毎日天気予報とにらめっこしていたが、当日は暑いくらいの晴天で。 島を
法事の日が嫌いではない。仕事や学校をお休みして、家族そろって朝から出かける。故人を思うと寂しくもなるけれど、特別ないちにちだ。 お寺に到着すると、控え室へ通される。そこでおとなたちは再会の挨拶を交わし、お茶を飲みながら近況を語る。日ごろ顔を合わせない親戚が集まるのだから、話題には事欠かない。だれが結婚した。かれが引っ越した。あれのローンが終わった。それが入学して、これが就職した。そういった話だ。 どれも近くはなくとも身内の話である。お互いに、ほどよく興味があり、ほどよ