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好きをおかわりする

先日、久しぶりに友達と旅行に行った。
行先は小さな島。自宅から在来線を乗り継いで港に行き、そこから船に乗る。片道1時間と少しの小旅行だ。

いつもとは反対方向の電車に乗って、窓を覗く。
だんだんとビルが消えて、街並みが消えて。自然が多くなってきたな と思ったと同時に、窓の奥に海が見えた。
私の住む町がこんな景色と繋がっていたなんて。
線路の延長線の知らない世界にわくわくが止まらなかった。



直前まで雨予報で 毎日天気予報とにらめっこしていたが、当日は暑いくらいの晴天で。
島を散策して、海を眺める。

海は透きとおっていて、キラキラしていた。エメラルド色に光る海を見たのは何年ぶりだろう。
この景色を残したいと 何度スマホを向けても、瞳越しの海にはとても敵わなくて。
肉眼に焼き付けるしかないな と思うと共に、瞳と同じくらい綺麗に写せるカメラもあるんだろうか、なんて少し気になった。

ぐるりと島内を1周し、船に乗って引き返す。
本土へ戻ってからもう一度海を眺めると、同じ海なのに少し曇って見える気がした。
海岸から見える さっきまでいた島。近いのにすごく遠くて名残惜しくて。もっといたかったな と、何度も振り返ってしまった。

絶対また来よう。
心の中でそう思って、ふと気がついた。

知らない土地に出掛けるのも楽しいけれど。
お気に入りの同じ景色を何度も観に行くのも同じくらい、もしかしたらそれ以上に 好きかもしれない。
そういう話です。


例えば ビュッフェに行ったとして。
1巡目では満遍なく 気になったものを取る。2巡目では、その中からお気に入りのものだけを集めて 「絶対美味しいもの」を楽しむ。そんなマイルールがある。
いわゆる「俺が考えた最強のプレート」だ。

また、ときどき行くひとりカラオケ。
初めは好きな曲や思いついた曲を自由に入れて。
最後の1時間はやっばり、履歴からお気に入りだけを抜き取って2巡目を楽しむのだ。

他にも 好きな映画だけを集めて何度も観たり、好きな小説を並べてみたり。いままで意識していなかったけれど、コンテンツも繰り返し楽しむことが多いように思う。


食べた事のないもの。行ったことのない場所。聴いたことのない音楽。
どれも魅力的だけれど、それでも。

最高だとわかっているものを、安心と信頼と確信を持って再び味わう。
味わう前から舌鼓をしてしまうような、そんな楽しみ方だってあると思うのだ。

できるなら、いまのうちに厳選した「好き」を集めて。死ぬ前の1年で全部おかわりしたい。それを人生の2巡目にできたら、どれだけしあわせだろう。

それまでは 新しい場所を巡って「好き」をたくさん見つけておこうかな。
今回訪れた小さな島も、人生の2巡目に回る候補にしよう。

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