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何度でも読み返したいnote3

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。こちらの3も記事が100本集まったので、4を作りました。
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#フードエッセイ

下駄をはいた豆ごはん

子供のころ楽しかったお手伝いに、えんどう豆のさや剥きがある。 さやの端っこにある「ここから開ける」と言わんばかりの髭を引っ張ると、ぴりっと小気味良い感触と共に筋が外れる。筋があった部分に親指、反対側に人差し指を置いて力をこめると、ぱこん、とさやが開き、つやつやした緑色の豆が顔を出すのだ。丸々太った大きい粒も、兄弟に押されるようにして縮こまる小さい粒も、どちらもかわいい。 さやの内側を指でこそげるようにして、豆を取り出す。ボウルの底に硬い豆がぶつかる、こここここ、とリズミカル

エンタメと日常の間のレモン水

めちゃくちゃ水分をよく摂る。 美容とか健康とか以前に水を飲むのが好きなのか、とにかくよく水やお茶を飲んでいる。1日、多いと3リットル以上飲んでいるかもしれない。 タバコは人生の句読点と何かで見たが、その句読点が私はおそらくややみずみずしい形で置かれているのだと思う。常に傍にはマグカップや水筒やペットボトルがあり、気がつくと飲んでいる。特に今年の夏は、句読点どころか文節ぐらいの区切りで飲んでいた。 ところで、年齢を重ねるにつれ自分の中でエンタメ水分と日常水分を分けて考えるよう

とりあえずビール考

とりあえずビール、の、とりあえずって何なんだ、と思っていた時期がある。大学生のころだ。 そのころ私はお酒を飲むことを覚えたばかりで、ビールのことをそれほど好きではなかった。入っていた部活では飲み会の機会がそれなりにあったけれど、公式の飲み会は必ず安居酒屋の飲み放題プランで、大人数で押し掛けるものだからビールはプラスチックのピッチャーで供されていた。今思えばあれは、ビールではなく発泡酒だったのだと思う。 安っぽいプラスチックの大味な容器から、くもった小さいコップに注がれて泡を

毎日スーパーのパックのお寿司を食べて乗り切った日々があった

noteの更新が久々になった。 たべもののはなしをしようとアプリを開くといつもなんだかこう、呑気な気持ちになって良い。 食べ物ありがとう、noteありがとう、 読んでくださる皆様ありがとうございます。 ここのところ人生史上でもかなり上位に食い込むハードさの日々を過ごしていた。 1日の活動時間が長い日だと20時間に迫るようなときもあり、ア〜いつかこの日々が何かのあれで良きものなってくれ〜とフモフモ不毛な願いが脳裏によぎることもしばしばであった。眠気と疲れと使命感がバトルしてい

飲酒学の担い手として|日々の雑記#55

酒呑み。呑む理由と言い訳を模索する日々。 ビール党 、日本酒派、泡盛好きのよろず酒類承り。表面的な知識に基づく実のない問わず語り、そこはかとなく下品。 豆と信州食材への愛、それはアルコール中年。(豆千:プロフィールより) 人生の大半を「飲酒学」に捧げてきました。 先日迎えた四十数回目の誕生日。気づけば飲酒学者としてのキャリアはゆうに20年を超え、ようやくこの学問の面白さが分かってきたところです。なお、主な活動は以下の通り。一般的な学術研究と何ら変わりません。 【現地調査

寄り道のカツサンドと結婚。

使い古したスニーカーは、上からも下からも嫌と言うほど水を吸い込み、歩くたびにぐじゅぐじゅと鳴いた。 幾度と経験してきても、この感覚は「不愉快」という三文字に集約される。 真っ直ぐお家に帰って晩御飯を作るべきなんだけど、ささやかなもやもやが、寄り道へと誘う。 せめて心に降る雨は晴らしたくて、少し冷えた身を気になっていたカフェに寄せようと思った。 帰宅途中にある、前から気になっていた、 かつサンドのお店。 店に一歩足を踏み入れた瞬間、落ちつける場所だなあ、と感じたのはわ