見出し画像

桜の季節

3月という季節の、街全体が何だか浮き足立っているような雰囲気が結構好きだったりする。始まりと終わりに挟まれた分水嶺のような季節。消化試合とでも言うような宙ぶらりんな季節。誰もが期待と不安に胸を躍らせている。日に日に暖かくなる気候も相まって、心は自然とわくわくとする。

相変わらず季節に敏感でいたい。

画像4

東京は、てんやわんやの大騒動で、なにが正解なのかよくわからないまま喧々諤々の議論が白熱している。傍から見ててもうんざりとする。それでも、今年も桜は咲いた。桜はやっぱり良い。桜の下では誰もが素直になる。恍惚とした表情で空を仰ぐ瞬間なんて、一年でこの時しかない人間も多いのではないかと思う。ほんの1週間程度、期間限定のインスタント奇跡。「桜の樹の下には死体が埋まっている」、なんて言い始めた作家の気持ちもわかる気がする。そうでもなければ、これほどまでに神聖な現象、到底納得ができないのだ。あまりに美しいものを見た時、人は自然と本当にそれが赦されるべきものなのかを疑う。種も仕掛けもあるわけないのに。

画像1

カメラを新調したので、子供のような気持ちで写真を少しだけ撮っている。本当は今の世間の動向からすれば、自粛すべきところなんだろうけど、ほとんど近所なので。

画像2

画像4

写真も文章もそうだけれど、表現したいことを素直に表せるようになりたい。鈍化していく感性に、鞭を入れたい。

喜ばしいことに、桜は来年もこれから先も、おそらくきっとしばらくの間は毎年咲き続ける。目に見えない何かに怯えながら、そそくさと桜を眺めるようなことが来年以降も続かないことだけをただただ願う。