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アフガニスタン情勢続報:G7首脳テレビ会議の結果と今後の政府が抱える問題点

 混迷するアフガニスタン情勢の続報です。英国ジョンソン首相の提唱で行われたG7首脳のテレビ会議。米国の8月31日までの撤退が明確化されたほか、共同声明を発出してG7としては、今後タリバンが「言うだけ番長」か?本当にイスラム法を柔軟解釈して女子供に優しい政治を行うのか否かを含め米国との間で交わした合意内容を遵守できるのか否かを冷静に見極め今後の対応を決定することで一致しました。

1 8月24日のG7首脳テレビ会議の模様

      首相官邸は、今回の模様についてホームページで次のとおり発信しています。

https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0825kaiken.html 

 また、外務省は以下のとおり報道しています。

 (原文引用ママ)

 8月24日、午後10時30分から約1時間50分、アフガニスタン情勢に関するG7首脳テレビ会議が行われ、菅義偉内閣総理大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。今回の会議は、本年のG7議長国英国の呼びかけにより開催され、G7各国の首脳、国連事務総長、北大西洋条約機構(NATO)事務総長が出席し、会合後、G7首脳声明が発出されました。なお、東京2020パラリンピック競技大会開会式に出席していた菅総理大臣が本件会議に到着するまでの間は、茂木敏充外務大臣が代理として出席しました。

冒頭、議長であるボリス・ジョンソン英国首相(The Rt Hon Boris Johnson MP, Prime Minister of the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)から、アフガニスタン情勢をめぐる英国の立場について説明がありました。
菅総理大臣からは、以下について発言を行いました。
(1)退避に関し、菅総理大臣から、アフガニスタンからの出国を希望する全ての人々の安全な退避は、我々皆にとって最も喫緊の課題であると述べ、在留邦人や在アフガニスタン日本大使館現地職員などを退避させるために自衛隊機をカブール空港に派遣したことを紹介しました。
(2)人道状況に関し、菅総理大臣から、日本は2001年以降二度にわたるアフガニスタン復興支援国際会議を主催し、約70億ドルの支援を含めアフガニスタンの復興を積極的に支援してきたことを紹介しました。また、今般の情勢を踏まえ、アフガニスタン難民を受け入れる近隣諸国への支援や、国内避難民への人道支援などの必要性が高まっていることを指摘し、G7として国連と連携しつつ、人道支援ニーズをしっかりと見極めた上で、日本としても前向きに貢献を行う考えである旨述べました。更に、アフガニスタンの人々に支援を届ける上では、人道支援要員の安全、アクセス、活動の自由の確保が不可欠であり、この点についてタリバーンに求めていく必要がある旨指摘しました。
(3)タリバーンへの関与のあり方に関し、菅総理大臣から、タリバーンは国際社会との関係を意識した発言をしており、これは過去には見られなかった行動であることを指摘しつつ、退避への協力、女性を含む人権の尊重、アフガニスタンを再びテロの温床としないことなどについて、タリバーンの実際の行動を注視する必要がある旨述べました。また、日本としても、テロ対策のための幅広い協力の構築に向け、役割を果たしていきたい旨発言しました。
茂木大臣からは、中東諸国への出張において各国要人との間でアフガニスタン情勢につき議論し、アフガニスタンにおける人道危機への懸念や、地域の不安定化に繋がることへの懸念が多く聞かれたことを紹介しました。
今回の会議では、G7首脳間で、アフガニスタンからの出国を希望する人々の退避、人道支援といった喫緊の課題への対応、また今後の展望や関係国との連携のあり方等について率直な議論が行われ、G7として国際社会とも協力しながらアフガニスタン情勢に一致して対応していくことを確認しました。
(引用おわり)

   共同声明の仮訳はこちら。

 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100226978.pdf

2 今回のG7首脳テレビ会議での日本政府のスタンス~アフガン難民受入でスリランカ人問題の汚点・批判をかわす狙い?~

   日本政府はこのテレビ会議の開催に先立ち、航空自衛隊の航空機(C-2, C-130)をパキスタンのイスラマバードに前進配置させました。

   これは、上記の外務省報道の冒頭での菅首相発言の「目玉」として行われたものと推測されます。「まずは24日の午後10時ありき」で間に合わせたため銃火器の携行、使用制限の周知、装備品、人選などを慌ただしく行ったため、準備不足の感は否めないかと思われます。記者会見した岸大臣の焦燥しきった表情と態度にそのバタバタ感が見て取れます。

  また、政府はアフガニスタンから退避させたアフガニスタン人たちを我が国に「短期滞在」(最長90日、期間更新が可能)として入国させ、個別具体的に判断して最終的には難民すなわち「永住者」として受け入れる準備があること、そしてその数たるや数百人単位を想定している旨が報道されています。

  もし、この報道が真実であるならば難民認定に対してハードコアであった日本のこれまでの難民政策が急展開することとなり、漸く日本も世界のスタンダードに追いつく可能性が出てきました。

  他方で、現在入管は例のスリランカ人対処問題を抱えて世間いや世界から非難を浴びている最中ですから、今回のアフガニスタン難民を受け入れることにより批判をかわす狙いがあることも否定できないかと思われます。

3 今次自衛隊のアフガン派遣が抱える問題点~かつての文民警察での失敗が頭をよぎる

  今次の日本政府による自衛隊の派遣及び難民受け入れ方針は過去に見ることが出来なかった国際的にも受入られる迅速な対応であったことは間違いありません。これはこれで国際的には大変高い評価を得るものと思われます。

  現在コロナ対応、東京2020問題、その他国内問題で数々のマイナス要因を抱える菅政権にとって今回のアフガン問題は正に天から降ってきた待望の「外交チャンスカード」であったに違いありません。

  成功すれば総選挙を目前に控えた「起死回生、政権支持率浮揚」の最後のポイント獲得チャンスであることも事実です。他方で今回の自衛隊現地派遣は、「諸刃の刃」でもあることを忘れてはなりません。

  もし、派遣した自衛隊員が負傷或いは死亡したら?退避させる予定のアフガニスタン人にテロリストが混入したとしたら?

  アフガニスタンにおける現地武装勢力の実態把握、空港をコントロールしている米国(米軍)との調整、避難誘導するアフガン人たちとの連絡方法や空港までの誘導方法などが全てクリアになったうえでの自衛隊派遣ならまだしも、岸大臣の会見をみると「失敗したら首が飛ぶ」的な覇気のない心配感ありありの態度を見てもわかるように「一か八か」「のるかそるか」の博打にも似た派遣であることは想像に難くないですね。

  私は今回の極めて短時間のうちに決定・敢行された自衛隊のアフガニスタン派遣ニュースを見聞きするにつけ、過去1993年にカンボジアで凶弾に倒れ殉職した文民警察官の高田警視のことを思い出さずにはいられません。

 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a196363.htm

  あの時は、時の内閣による

   甘い情勢判断、机上の空論、希望的観測

が高田警視の殉職を招いたとして今でも失政と語り草になっています。

  私は今回の自衛隊派遣のオペレーションが高田警視の轍を踏まないことを心の底から願っております。

  最後までお読みくださって、有難うございました。引続きこの問題については事態の推移を見守りつつ、発信してゆきたいと思っています。

  

 

 

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