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ソロを「もりあげる」方法とは(3)

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(cf). ファンクなど一発ものの吹き方

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では、実際に「盛り上がり」を身につけるにはどうしたらいいか。
それには(2)の視点にそって「要素分解」し、他者のやり方を「解析」するといいでしょう。

盛り上がりを「要素分解」する


もりあがりの一例

(2)で概説したように、ソロの盛り上がりでは、複数のパラメータが複雑に変化します。そのパラメーターの変遷が、ソリストの個性といえましょう。

慣れるとソリストが複数の要素をコントロールしてソロを盛り上げてゆく様子が見えてきます。でもそれをしっかりと理解するのは時間と経験が必要ですし、それを自分で体得するとなるとさらに難しいもんです。

まずは要素分解して一つのパラメーターごとに視点を注力しましょう。

「音の高さ」:
後半に高い音のフレーズを入れると盛り上がりますよね。
レジェンドのライブ録音などでも、後半にハイノートを印象的にとりいれてるパターンはよく見ます。

(以前のソロの『盛り上がり』を定量的に検証した試みを参考に)

「音量」:
後半音量を少し上げるだけでも、ソロは盛り上がります。
また、ドラムが少しフィルイン入れて激しめに叩くだけで、ソリストの音量が変化がそれほどなくても盛り上げることも可能です(後述)。

要素の複合解析

それぞれの要素を、自分の好きな音源のソロで検証してみましょう。
音の高さは?音量は?フレーズの細かさは?
ソロのアナリゼというと、コード進行に対するフレーズのアナリゼが一般的ですが、こういうソロの全体進行を俯瞰することも立派なアナリゼです。

次は自分で複数のパラメーターをコントロールしましょう。
たとえば、ソロの前半では、すこし休符を多めにゆったりと。ソロの後半で、やや細かいフレーズを入れ、少し高めの音域のソロを入れる。
……と構成すれば、起承転結感をつくりだすことができます。

やってみるとわかりますが、複数の要素は簡単に足し合わせできない。
例えば、大音量でハイノートでなおかつ細かいフレーズを吹くのは、現実的に難しい。フレーズの細かさと音量、音量と音の伸ばせる時間などトレードオフの関係の要素もある。自分の脳内で計画した通りに演奏がついてゆくとは限らない。

すべての要素を意識しつつ構成したソロは練習で試しておく必要があります。可能なら、自分なりの定番の流れを作ってみましょう。

プロの演奏で「またこのパターンかよ」と言いたくなったこともあると思いますが、その「パターン」を作ることさえ結構大変なんですよ。
やってみるとわかる。

バンド全体でソロを盛り上げる

前述の通り、ソロの「盛り上がり」はソリスト一人の手によるものではありません。「盛り上がり」という要素に関して、ソリスト以外のプレイヤーが介入できる範囲はかなり多い。

リズムセクションに協力してもらいましょう。
ソリストの微妙な起伏を、リズムセクションの方々(特にドラム)は増幅することができるからです。

しかしソリストは、リズムセクションが常に自分の手足のように動いてくれる、とは思わない方がいい。ソリストの起伏にレバレッジをかける程度であると、くらいに思っておいた方が精神的に健全でしょうね。

リズムセクションが反応してくれない時はあります。
桶狭間の戦いで部下が付いてきてくれないパターンの織田信長ですね。
その場合、孤軍奮闘するしかありませんし、そういう時に自分でできることは最低限自分でできないと。ソロは基本的には自己責任ですから。

バックが反応しないパターンには二つあります。
一つは反応する経験が足りないなど、能力を満たさないリズムセクションのパターン。

もう一つは反応する能力をもった上手いリズムだけど「お前のそれくらいのソロの盛り上がりじゃあこっちは反応しねえよ」みたいなパターン。

この場合はソリストの提示する起伏が、リズムセクションが反応する閾値に足りていないというメッセージと考えましょう(単にイケズのこともありますが、イケズにはイケズの理由はあります)。

定型と非定型

「定型的」なもりあがりのパターンは想像しやすいし、理解しやすい。
ライブ録音などを聴きこめば、その起承転結・熱狂のパターンを追体験しやすいものです。

が、楽曲の「盛り上がり」に関しては、さまざまなパターンがありうるものです。

特殊なパターン:静かにもりあがる

たとえば、怒鳴る上司よりも、淡々と詰める上司の方が怖くないですか?

「盛り上がり」とは 興奮であり、Adrenergicであるといいました。
しかしそういった生理的な(動物的な)反応ではなく、あくまで理性のレベルで興奮を表現することも可能です。
「盛り上がり」で、あえて音数をしぼって冷静な雰囲気を演出するのも一つの演出方法でしょうか。
ECMなどの「ライブ感」の少ないアルバムには、静かに盛り上がるヒントがふんだんに隠されています。

特殊なパターン:自分の盛り上がりは放棄する

Miles Davisの"Nefertiti"という曲があります。

テーマメロディーは変えずに、コーラスが繰り返されます。
しかし単なる繰り返しではなく、バックのサウンド、コード進行やアンサンブルは、静的な状態から動的な状態に遷移し、サウンドは豊穣になり、静かに盛り上がります。そして最後は静的な状態に回帰します。 

ソリストは全く動きません。アドリブフレーズさえも吹かない。
ソリスト以外のバックサウンドを動かして、曲全体の盛り上がりを演出しています。
これはリズムセクションを完全に自分の手足のように動かせるマイルスならではの最も極端な手法ですが、極めてクールなこういうスタイルも状況によっては可能だということです。
マイルスは、このNefertitiに限らず、Coolな盛り上がりが得意です。一般的なジャズマンの「動物的なHotな盛り上がり」をせせら笑うかのごとくね。
しかし、これもスターだからこそ許されるわけで「セッション大部屋俳優」みたいなプレイヤーは、Hotに盛り上がってみせて実力の一端を示さないとな…という感じもあります。

まとめ

  • ソロの盛り上がりや起承転結は様々な要素で形作られています。

  • いろいろな要素の組み合わせについて要素分解して解析し、練習の段階で試しておきましょう。

  • 定型的な「もりあがり」のパターンに加え、非定型的な構成美もあります。さまざまな音源を聴き、音楽の構成について知見を深めると、自分がソロを演奏する際のヒントになると思います。

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