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オブリ研第4回 : "The Autumn Leaves"(3)

 1:曲について
 2:Mさん(tb), Fさん(tb)作例
 3:Oさん(tb), 私(tb)作例   ←Now

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Oさん作

Oさんは参加者の中で唯一九州在住。社会人になってからコンボジャズをはじめていらっしゃる方です。

Fig.1a "The Autumn Leaves" Oさん作 take.1 (F Clef)

これも個性がでて、いいですね。
BメロからCメロの流れがかなり自然に思えました。5段目は今回の作例の中で一番いいかもしれない。また音の高さで盛り上がりも自然に表現できる。7段目がピークになっているのが自然にわかるのも好ポイント。

フレーズの動きにも特徴があります。例えば3段目3小節目のC#とか、アプローチノートがすごく自然に置かれている。往年のバップ世代のコピーをやってる人感あるわー。
4段目3小節目、7段2小節目〜4小節目みたいに音が行ったり来たりするフレーズが多いですが、これはOさんの癖なんでしょうね。ターゲットの音を上下に挟むアプローチもあるし丁寧にフレージングするタイプかと思いました。例えばボブブルックマイヤーのようなウネウネっとしたラインの影響がうかがえます。
8段目ラストはお約束のリフ!Gm6のEの音が効いております。ちょっとニヤりとする瞬間ですね。

私にはないオブリガートラインで、とてもよかったです。
少し修正するところがあるとすれば、4段目3小節後半はE D# E(下げ上げ)よりE F Eの(上げ下げ)方がわかりやすいかも、とは思いました。
個人的には5段目2小節のFはF#の方がいいです。そうすると6段目2小節目のFと対比になるので。しかしそのままでもいいんじゃないかとは思いました。あとは譜面上でいうと、八分音符の三連なのか16分音符かちょっとわからない記載がいくつかあったくらいでしょうか。

さて、私の作例です。
二つ作っています。

半熟(すなおバージョン)

Fig 2a. 半熟作 (すなおバージョン)(F Clef)

1・2段目は吹き伸ばしなども使ってそろーりと入るという常套手段。
3・4段目は少しだけ音数を増やしています。バッキングのピアノが裏拍でコンピングするのに調和すると思う。
5段目はそれまでの2小節単位から4小節単位のゆったりとしたコールアンドレスポンスにして雰囲気をかえました。
6段目はメロと少し離れてハモるカウンターラインを作っています。細かい仕事として、1小節目から3小節目で一つずつフレーズの音数が増えるように変化をつけてみました。
7段目はベタなハモリライン。そして3,4小節目はコード進行を強調するバッキング的なフレーズです。
8段目は、3小節目頭でブレイク(そしてその後のピックアップ)がある前提のフレーズを入れてます。

邪魔しないことを念頭に置いたオブリガートラインを心がけました。
I'm NINJA !! の精神です。
そう、オブリガートは忍者というか影武者なんですよ。

ただ、これだけだとあんまりおもしろくないので、もう一つ作りました。

半熟(チャレンジバージョン)


Fig 3."The Autumn Leaves" 半熟 take.2 (F clef)

音数はそんなに多くありませんが、かなり攻めたつくりをしています。
コード楽器(ピアノ)が、黒本のコードフィギュアを弾くというセオリーから卒業し、ある程度自由に弾けて対応力がある場合を想定しています。
ジャズ研的には「ちょっと上のうまい先輩」。コンテンポラリー系を好み、オールドスタイルはダセエというイキっている盛りの人。
「枯葉?あ?トロンボーンがオブリ?ダセエダセエ!」と言いたげな先輩がいれば、このラインを提案してみてはいかがでしょうか。

枯葉は「どスタンダード」であるが故に、リハモにも常套句のパターンがあります。
一つは1段目(3段目も)の3-4小節目。Bbmaj7 Ebmaj7のかわりに、
|Bm7- Em7|Bbm7 -  Eb7 |と半音のツーファイブを重ねるパターン。ピアノトリオとかでしたらまず間違いなくこのリハモがでてきますね。
1段目ではそれを想定したオブリを吹いてかるく誘い水をむけています。
そして3段目。Ebのメロディーに対して Bをあてています。
これ、かなりチャレンジングですよね。
普通に長3度のインターバルなので、フロント同士は調和するのですが、Cm7のコードトーンでは解釈できません。
このあたりは、Herbie Hancockが代表的ですが、他のコンテンポラリーの方もリハモしているリハモ常套句です。
|C#m7- F#7|Cm7 -  F7 |となんと半音上の2-5からアプローチするパターン。これを想定しています。コンテンポラリーだと、これはむしろベタネタのはずです。で1段目の後半とつなげると、
|C#m7- F#7|Cm7 -  F7 |Bm7- Em7|Bbm7 -  Eb7 |
アウトサイドからツーファイブの半音下降の連続で4小節。
ただ、このオブリのラインからこのコードチェンジに瞬間的に反応するかは、ちょっとわかりません。リズムセクションがフロントプレイヤーをどう値踏みしているかにもよると思います。

5-6段目はいわゆる5度のサステインペダルで、これは本来ベースがやるべきやすです。フロントですが、オブリがこれを吹くことによって、そのサウンドを誘っています。勘のいいベースなら5〜6段目はきちんと追随してくれます。
7段目。3-4小節目ではこれも半音上の2-5をひっかけて、それに即したフレーズをいれています。
8段目。1小節目のEb7を強調するフレーズラインです。

いかがでしょうか?このオブリガートに関しては、主旋律にひっそりとよりそう影武者というよりは、かなり積極的にバッキングへ干渉しサウンドに介入する動きをみせています。
影武者が本体を乗っ取った!みたいな感じでしょうかね。

事前打ち合わせすればできますが、事前示し合わせなしのセッションでできるものかどうかはわかりませんし、できるべきかどうかもわかりません。
ただ、勘のいいリズムセクションなら対応するようには思います(よくあるリハモパターンなのでコンテンポラリー畑の人にとって想定内だと思う)

ま、いずれにしろかなり応用編な感じではあります。

まとめ

  • オブリの際「メロディの音は地雷。踏むと死ぬ!」くらいに思ってメロディを「よける」練習をしてみましょう。

  • オブリガードの時は「Thank you. But I'm NINJA」の精神で、ひっそりとメロディによりそいましょう(時には前にでてもいいとは思いますが、基本はメロディーの引き立て役です)。

  • 時にはリズムセクションを「挑発」してサウンドの方向性を誘導することもできます。ただし相応の危険を伴いますのでご注意を(リズムセクションにもよりますが)




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