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ふと蘇った記憶〜謎のお姉さん編

遠い昔、小学校1年の頃だった。
登下校時に学校近くで目にする、とある高学年のお姉さんがいた。彼女は嬉しそうに駆け寄ってきて私の下の名前を呼びながら「かわいいねぇ!!」といって後ろからぎゅっと抱きしめてくれた。そういう「学校の行き帰りにお姉さんに遭遇→抱きしめられる」出来事が何度かあった。

その度に、なんだかよく分からないが照れくさくて嬉しくて、年上のお姉さんの包容力に戸惑いつつもぼーっとする…という不思議な幸せな感覚だった。彼女は一体誰だったのだろう?地区も離れているし(お姉さんは学校近辺で町内の南部の人口が密集した地区、私は町内でも僻地といっていいくらい北端の過疎地区)なのになぜか彼女は私に「だけ」親しげに近づいて声をかけてくれるのだ。名前も顔もおぼろで覚えていないが、ワンレンボブ風の黒髪おかっぱ頭で、前髪をヘアピンで留めておでこを出していた。目が大きめで眉毛が濃くて太めだった印象だ。

ぼんやり考えていてふと思い当たったのが、当時小学校では時候の良い時に「手つなぎ遠足」という行事があった。低学年と高学年がペアになって(確か1年生+6年生/2年生+5年生という組み合わせだったように思う)、昼時にテイクアウトの給食(サンドイッチと箱牛乳)を持参し、小学校の裏手にある丘に出かけて、めいめいペアでお昼を一緒に食べて校舎に戻る、といった行事だった。(ちなみに3年生と4年生は1学年しか違わないのにペアになっていたか全く記憶不明)

彼女はもしかして、その手つなぎ遠足で1年生だった私とペアになった6年生のお姉さんだったのかもしれない(しかし私はその遠足の時のことは全く記憶にないのだが)。そして私と顔見知りになったのかもしれない…と、半世紀近く経つ今になって推測が浮かんだ。ひょっとして、長年の謎が解けたかもしれない。
彼女も、私のことを覚えていてくれているだろうか。

通学路途中の、彼女の自宅と思われる民家やその周辺の畑の畝に生えた青菜など、おぼろげながら記憶がある。今更ながらそこに突撃訪問して「私、実はこうこうこういう者ですが、昔小学校1年の頃に声をかけてくれたお姉さん、ここのお宅のお嬢さんだと思うのですが当時高学年でいらっしゃって、現在は○○歳くらいのご年齢かと思われますが、今でもお元気でいらっしゃいますか?」と訊ねるのはやはり唐突で滑稽だろうか。
もし、あのお姉さんと再会できたら、当時おとなしくて目立たなかった私のことを気にかけてくれたこと、ぎゅっと抱きしめてくれたことが照れくさいながらも嬉しくて、忘れられない思い出であることを伝えたい。

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