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80分おきに記憶を失う博士

小川洋子「博士の愛した数式」(新潮文庫)

◆あらすじ

事故に遭い、80分しか記憶がもたない数学者の博士と、家政婦として雇われた主人公とその息子の心温まる愛の物語。

◆感想

博士は初めて会った人の誕生日を聞き、その数字にまつわる数学の知識を披露する。披露といっても、その数字の素晴らしさを相手に伝える博士なりの挨拶だ。そんな挨拶が
80分ごとに行われる。けっこう大変なことだと思う。
そして、記憶を失っても自分の状況を理解できるように、博士の背広にはクリップで止めたメモがたくさんついている。
奇妙な博士なのて、今まで雇われた家政婦たちはことごとく辞めていき、主人公がその役割をあてがわれた。
博士の奇妙な習慣や様子は折に触れて描かれている。周囲からの目線を主人公は気にしているが、自分自身はそれで博士に偏見を持つこともないし、当たり前になっていて、印象に残った。奇妙な博士と友達になれたのも、きっと息子の√の存在があってのことだと思う。√は博士のことをすぐ受け入れていて、子供の順応力を感じた。さらに子供を大切なものとして扱う博士の描写も心温まるものがあった。
本の感想を書くのは難しい。

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