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ヒプマイは生物

好きなモノを好きなように語りたい!今回はヒプノシスマイクの新曲『CROSS A LINE』について想いのまま語ろうと思います。以下は、筆者の独学による独断された独り言になりますので、軽く楽しんでもらえると幸いです。

ということで、皆さんはもう聴きましたか?聴いてない方は人生損してるなどとか言うつもりはありませんが、1stディビジョン・ラップバトルの後からヒプノシスマイクにハマっている筆者が溢れる想いを吐き出しますので、こちらを読んでみて、もし気になった方はヒプノシスマイクを楽しんでみるのも一興かと思います。

さて、先行配信されました『CROSS A LINE』ですが、2022年6月15日に発売する『2nd FULL ALBUM』に収録されている新曲になります。6ディビジョン18人で歌う全体曲であり、彼らが紡ぐリリックは『過去を乗り越え、未来を見据えた現在地』を描き、まるで青空に1本の真っ直ぐと伸びていく飛行機雲を想像させるような爽やかなトラックと共に、2stディビジョン・ラップバトルというイベントを終えた寂しさと、その先にあるこれからを期待させるような前向きな一歩を感じる曲となっています。

ヒプノシスマイクという音楽原作キャラクターラッププロジェクトが2017年に発表された時、各キャラクターたちは一枚の立ち絵と簡単なプロフィールしかありませんでした。そんな彼らがラップをやるというのです。そも筆者はHIPHOPのことを『自分語り』だと思っています。自分のこと、自分が感じたこと、自分が言いたいことを、自分の言葉でぶつける。芸術表現とは少なからずそういうモノではありますが、あらゆる人間性が曝け出されるのがHIPHOPであり、筆者が一番魅力的に感じ惹かれる理由でもありました。

そんな『自分語り』ができるのは、自分自身を見つめ、現実を見つめ、葛藤を受け入れる覚悟がある、現在を生きる人間だけだ。そんな風に思っていた筆者は、当時のヒプマイには興味を持ちませんでした。

ヒプマイのキャラたちは現実に存在しません。筆者たちが暮らす世界に中王区はありませんし、男性がヒプノシスマイクでラップバトルをする日常はありません。そんな『作られたモノ』に『現実(リアル)』は表現できないと思っていたのですが、それが意外にも彼らの曲を聴いていくと、彼らのリアルを感じることができ、共感を覚え、面白いと思えるようになるのです。

それは別に意外ではないのかもしれません。ヒプノシスマイクは元々『音楽原作キャラクターラッププロジェクト』として始動しています。つまり、『リリースする曲が増えるごとに、キャラクターの人間性が増していく』ということを狙って展開しているのです。

各キャラクターは『ソロ曲』を主軸に、ディビジョンメンバーと歌う『チーム曲』、別ディビジョンとバトルする『バトル曲』、オールディビジョンメンバーで歌う『全体曲』でリリックを披露することで、色んな側面を魅せてくれます。

各楽曲は、プロジェクトの主軸が音楽レーベルなだけあって本格的であり、トラックは勿論、リリックも様々な実力者が参加して一曲、一曲が作られています。普段から自分を表現することに長けている神々が、一枚の立ち絵と簡単なプロフィール、先にリリースされた曲を聴きながら、ヒプマイのキャラを想像して創造されていくリリックは十分に『自分語り』をしています。

しかし、ヒプマイの楽曲を真の『自分語り』とさせているのは、歌い手である声優の方たちのチカラでしょう。声で演技することを生業としている彼らが、ヒプマイのキャラクターたちに命を吹き込むことで、リリックが生きて聞こえてくるのです。

彼らは声優であり、ラッパーではありません。初期の楽曲は確かにフロウに乗り切れていないようで、違和感を覚えることもあります。聞き手もキャラクターの情報が少ない中、心地良く乗り切れない曲に不満も出るかもしれません。そこも含めて聴いてみてください。トラックを聴いて、リリックを読んで、キャラクターの自分語りを、最初はふーんと聞き流しても構いません。音楽に乗って聴いてみてください。

筆者も初めは最初に出たソロ曲が苦手でした。作ったキャラクターという印象が強く、他のアニメのキャラソンのようで全然HIPHOPな感じがしなかったからです。なので『ヒプノシスマイク -Division Battle Anthem-』などの全体曲やチーム曲ばかり聴いてました。それぞれのキャラでリレーしていく構成が楽しかったのと、人数が多く早いテンポで進むのが心地良いので、それらばかり聴いていました。

そんな私が、本当にヒプノシスマイクにハマったのは1stディビジョン・ラップバトルの決勝曲である『DEATH RESPECT』を作詞作曲した山嵐さんのインタビューを読んだ時でした。元々好きなリリックとフロウでしたが、あの山嵐が提供した楽曲だと知った筆者が見つけた記事です。(今も検索すれば読めると思います)

その中で、作詞をしたKOJIMAさんは楽曲を作成するにあたってヒプノシスマイクを読み込んでいったそうです。アニメと縁のないラッパーがドラマトラックを聴いてキャラクター個人を理解しようとしてくれたのです。そしてワードを拾い、リリックに取り込んでいき、出来たバトル曲でした。

筆者が初めからこの曲に感じていた生きている感じは、山嵐さんがヒプノシスマイクのキャラクターを作り込んでくれたおかげであり、それを声優さんが表現していたからなのだと理解した時、筆者はヒプマイの沼にドポンと落ちました。

『人間的魅力』とはどこにあるのでしょうか。筆者は一つに『挫折』があると思います。人間は誰しも一度は選択を間違え、後悔を持って生きています。勝者がいれば必ず敗者がいます。判官贔屓という言葉があるように、そんな状態であっても足掻こうとする人に魅力を感じるように思うのです。そして、もう一つに『成長』です。葛藤を乗り越えた人は強い。様々な経験をして自分を手に入れた人の言葉は、聞いている人間にチカラを与えてくれるのです。

そして何よりこの『成長』が、キャラたちだけの、ストーリー上だけではないのが、ヒプノシスマイクの凄いところです。楽曲を提供してくださる神々が新曲を作る際に、先にリリースされた曲やドラマトラックを聴いてキャラを深掘りして書き下ろしていくことで、更に『リリックがリアル』になります。歌い手である声優さんも、キャラに対する理解を深めラップ技量も上がっていくと『フロウにも説得力』が増していきます。そして、聞き手である我々も曲が増えるごとにキャラたちへの理解を深めていくと、リリックとフロウを聴いて『彼ららしい』と思うようになるのです。

筆者も今は最初にリリースされたソロ曲を聴くと、あの頃は皆尖ってるなとか、その頃から色々考えてたんだなとか深読みが捗るので好きになりました。過去曲を現在に聴くと違う印象になるのはヒプマイに限ったことではないのですが、より実感できるような気がします。

現実世界でも、気になったアーティストの曲を何曲も聴いて、その為人を理解したつもりになることがありますが、その感覚に近いと思います。関連インタビューやSNSだったりを見て、よりそのアーティストを深く知っていき、新曲がリリースされればその曲がどうできたのかを妄想してみる。リリックがその人らしいと思えるようになれば、それはもうファンなのです。

ヒプノシスマイクプロジェクトは、2017年から2022年の活動で見事にそれを体現しています。1stディビジョン・ラップバトルで勝敗を決したメンバーたちは、様々な葛藤を曲にしました。そして乗り越え2stディビジョン・ラップバトルへと挑んだのです。また勝負を終え、今回の新曲たちを引き連れての2nd FULL ALBUMとなります。

現実世界で各々プロフェッショナルに生活している神たちが、己の最大の技量で『自分語り』をして生まれた『ヒプマイの世界』には何曲もの音楽を経て『現実(リアル)』が出来ました。

今回の新曲『CROSS A LINE』は、そんな彼らの集大成であり、現在地であり、通過点を感じさせる一曲になります。

ヒプノシスマイクは『作りモノ』だからこそ、そこには『真実しかない』のです。それを『現実(リアル)』だと感じるのは、筆者たちが『生きている証』であり、成長するヒプマイの彼らだって『現実を生きているモノ』になるのではないでしょうか。

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