何色を選ぶ?
※後半に追記(10/25)あり。
普段、noteは取引先の方に画像を交えながら提案するときや、メールで伝えづらいことをやはり画像を並べて誰かに説明する際に、下書き保存した記事を「共有用リンクをコピー」して相手に伝えて見てもらう形で使うことが多い。
ただ、数日前、通知欄に「8/31までに記事を書くことで、連続投稿12ヶ月を達成できます!」とあったので、せっかくだから何か投稿しておこうか、と思ってはみたものの、さて何を書こう。
最近知人から「Twitterは登録者以外の閲覧を排除する様に設定したらしく、まずは登録を強いる画面が現れ、kumさんの近況は見られなくなりました」というメールをいただいたのを思い出し、せっかくなので、近況がてら今気になっている「何色を選ぶか問題」を綴ってみることにします。
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はじめに
先週、取引先の方にお誘い(ご招待)いただいて、立川志の輔さんの落語「牡丹灯籠」(下北沢本多劇場)を見に行き、心をわしづかみにされて帰ってきた私。
チケット難の貴重な公演を体験できて、自分の人生の年表にその日を境に紀元前・後のように、BS,AS(ビフォアー志の輔の牡丹灯籠、アフター志の輔の牡丹灯籠)と書き込みたいほど、本当に素晴らしくてよい日だった。だけど、一点気になることが。
劇場のロビーでは記念の手ぬぐいが販売されていて、長い列に私もいそいそと並んだ。が、列が進むにつれて、不安になってきた。
どうしよう。何色を選ぼう。
青、緑、ピンク、黒、黄色(記憶違いかも)…えーどれもいいけどどうしよ。
キッチンで使うから目立たない色がいいけど、柄がくっきり見える濃い色ベースの方がいいかなぁ。悩んだ末、上の画像の通り、濃い青を選択。
満足な中にも「色を選ぶの難しい〜」という思いが残った。
私は半年前にも旅先で柄を気に入って手ぬぐいを買うとは決めたはいいが、3色展開されている中でどれを選ぶか迷いすぎて、その場を立ち去って、別の駅の支店に後から出かけてそこでも迷った末にやっと緑を選んだのだった。きっと、どの色でも後悔などしなかったはずなのに、どんだけ悩むんだ自分。そう呆れたことを思い出してしまった。
おりしも、いま私は仕事で手ぬぐい制作の話をすすめている。
昨日は色のバリエーションはどうするか相談するために、noteの下書き記事に色見本画像を載せてご提案した。
以前より印刷代が上がっていて、それでなくても手ぬぐい印刷は枚数を多くしないと一枚あたりの価格を抑えられないので、費用も紙製品に比べて大きくなる。予算の都合で一色刷り×2種類くらいまでしか作れないだろうということで、では何色と何色で作るかが目下の課題となっている。
私は買う側としてもこんなに悩むのだから、売る側に回るともっと大変なことになりそうだ。
*ちなみに、普段の大半の仕事では会社の企画会議でほぼイメージが決まっていて、下請けの私は指示にもとづいて制作するため色で悩むことはないし、最終的に変更してもらえるので仮の色で送っても問題ない。ただ、たまに入稿まで担当するようなお仕事があって、その場合は色に対しても責任を負う立場になるのです。
そんなわけで、ここに今進行中の仕事の画像を載せることはできないので、私が自分の屋号「ハニホ堂」で今度デザインフェスタ などに出るとして、手ぬぐいを制作販売するならという仮の設定で進めて検証してみます(デザインはオリジナル)。
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色を決める
まず柄ありきなので、その柄に合う色味はどういったものかを1から考えてみる。
今回仮で作った柄は、ほのぼのタッチのアルファベット。
早速Pantoneカラーから直感で選んでみた。
色が濃すぎるかも?と思い、ビビッドさを抑えてみたのが次の画像。
手ぬぐいとして使うにはこれでも少し強いかも?と思い、微調整したのが次。
どうしても、似たような色ばかり選んでしまう。冒険しなさすぎで情けない。
そこで、思い切って変化させてみたのが次。
手ぬぐいは、インテリアとして使うほか、キッチンの流し用手拭きや食器用ふきんとして使うことも多いだろうから、清潔感も欲しいな、とネガポジを反転させてみたのが次。
…と、こんな風に、今、お遊び程度に自分で好きに売る場合にも結構悩むのだから、広く販売するための手ぬぐいの色選択の難しさたるや。
お土産用に販売する場合、「万人受け」を目指す必要があり、具体的には「ピンクや赤」だと(それが好きな層は確実にいるとしても)老若男女誰にでも配れる色ではないと判断できる一方で、ベージュだのグレーだの、無難な色を二つ並べても売り場で映えないからそれもダメで。
少し、別の柄の場合も考えてみることにする。
普段の仕事(100円ショップなどの量産品の絵柄を作成することが多い)では猫柄のアイテムが多いので、アルファベット柄とは別に、ポピュラーな猫柄でも色選びを試してみよう。
まずこちら。ここでは自分で考えず、宝塚歌劇団の各組のイメージカラーに寄せてPantoneカラーを探してみた(左から宙組、月組、花組、星組、雪組)。もしかしたら推し活の一貫で買ってもらえるかもしれないという姑息な考えもあるけれど、ただ、手ぬぐいにしては可愛すぎ、甘すぎかも。
と思って調整してみたのが次の画像。うーん、弱いだろうか。1柄の中で2色使えたら印象は変わるはずだけど、1色で作るのって難しい。
実際のお仕事の方では、2色分を商品化する予定なので、ここでも2種類制作するつもりでペアの候補を選んでみた。
片方を「万人向けの色」(相手を問わず渡せる)にして、もう一方を売り場で映える色(本人が欲しくなる)にすることでバランスをとると、この3案かと。
と書きながら、「うーん、どうだろ」と迷いだし、ふとこの記事のトップ画像を見返すと、そこに理想のバランスが既に提示されていることに気づいた。この記事を書くにあたり、何の気なしに選んでトップ画像を作ったはずだけれど、ここには自分の結論が出ている気がする。
そんなわけで、結論。上の画像から組み合わせてみた候補ペアがこちら。
いや、でも上の全色作って売りたいのが本音です。右端の赤もいいなぁ、と自画自賛している場合か。
猫柄は当初考えたパステル系は一旦忘れて考えた。ただ、こちらは結論が出ず。
おわりに
6〜7年前、通りがかりに見かけて気に入ったデザインの洋服がお手頃だったので、白と紺色の二枚を買おうとして、お店の人に「私、いつも紺色ばっかり買うんですよ。ブラウスもワンピースもコートも紺ばかりで…」と語ると、「それなら今回はカーキ色にしませんか?白は必ず使うとして、いつもと違う色を選んでみては」とすすめられ、どうだろうかと思いつつカーキを買ったところ、そのブラウスがお気に入りになった。そういえば何で自分は紺色の服ばかり着るようになったのか考えたら、昔バイト先の喫茶店でママさんに「あなたは紺が似合う」と、エプロンを褒められた、それだけのことなのだった。
カーキもいいじゃないのと気に入って、その後、一時期カーキばかりになったので、今自分のクローゼット(正確には押し入れ)の中は思いっきりくすんでいる。
私の色に対する悩みは、楽しみでもあり、好奇心でもある。結局私は色に憧れ、色のことを考えるのが好きなのだ。
以前住んでいた家で店を開ける時だけ、のれんを出していたのだけど、オーダーで3色の組み合わせて作ってもらって、それがこの2種類だった。
左が定番、右が春用の「三色団子色」(左のよもぎ団子色は特注で淡く染めていただいた)だけれど、考えてみれば今回手ぬぐいで思いついた色と似たり寄ったりなので自分の守備範囲の狭さを感じる。もっと冒険したいけど、きっとこれが好きなのだな。また誰かに背中を押されたり飽きるまで似たような色を使って「色変」の機会を待ちたい。
そんなことで8月は過ぎてゆくのでした。
ちなみに色については、過去に「イエローコレクション」、「ピンクの効能」、「梅雨こそ、ブルーコレクション」という記事を書いたりもしているので、黄色、ピンク、ブルーをお好きな方はそちらもよかったらどうぞ。
(10/25追記)この話を書いているときにお仕事で関わっていた新色手ぬぐいが出来上がりました。過程と結果を少しお知らせします。
もともと鮮やかなグリーンの手ぬぐいが発売中で、在庫数の関係から別の色でも作りたいとのことで、色々ご提案を重ねた結果、最終的に当初予定より多めの3色追加となった。
様々な色の中から先様がしぼってくださった3色(ブルー、ピンク、グレー)をさらに色味(黄色が入っているか、黒が入っているかなど)の違いが分かるように並べ…
念のためこちらでバランスの良さそうな色をチョイスしていくつかご提案(下の画像)して…
最終的には1色ずつ希望を教えていただいて下の画像の3色に決定。現行品のやや蛍光色っぽいグリーンからすると少し方向性を転換させた、くすんだブルー、黄色多めのピンク、落ち着いたグレーの組み合わせに。
ところが、いざ印刷注文をしようとすると、私のiMacに入っているPANTONE+CMYKcoatedのカラーチップは、お世話になる印刷業者さんで扱っていない(PANTONE SolidChipsCoatedの扱いはある)ということで、DICでの指定となり、同じ色が再現できないので苦戦しつつ色味を選んだのが下の通り。
ただ、普段の紙雑貨の仕事では網点を使えるものの、手ぬぐいに関しては不可ということで100%の色で選ぶと、ピンクとグレーはご希望色から結構離れてしまった。
色選びだけでなく色指定も難しい。
そういえば、仕事を始めたての頃、手描き100%だったため指定されたカラーチップ通りの色を作るため絵具をたくさん使って「ああ違う、ちょっと黄色を足してみよう」などとやっているうちに絵具皿から溢れそうになった記憶が蘇る。
最近はCMYKで入稿する仕事が多いので、特色のカラーガイド(冊子)が手元になく、特色なのにパソコンのモニター上で確認するのとプリントアウトして確認するだけになって(家庭のプリンターやコンビニのネットプリントでは色の再現性が微妙)、しかも手ぬぐいになる場合はどんな色に仕上がってくるか不安と期待が半々だった。
そして数週間後。クライアント様からサンプルをお送りいただいて新色手ぬぐいとご対面しました。やはり指定した色とは違う気がして、ピンクはもう少しくすみがあった方が大人っぽいような気もするし、グレーが想像より薄すぎて透けるのが気になるものの、眺めているうちに好きになってくる。結果が正解なのだと。
光の加減によって写真では現物の色が伝わりづらいので、手元にある雑貨と組み合わせてSNSで色を伝えようと苦心したのがこちら(笑)。ただブルーが鮮やかに見えすぎかもしれない…
そんなわけで、色々難しさはあるものの、無事3色を含めて手ぬぐいが発売になりました。福島県相馬市の福祉作業所、工房もくもくさんの「相馬手ぬぐい」(ハニホ堂デザイン)です。
今後様々なイベントや道の駅、浜の駅などの販売所、そしてオンラインショップでも販売されますが、公式サイトの方の写真でも光の加減などで正確な色が分かりづらいかもしれませんが、イメージが近いのがこの記事中、3枚吊り下げた形で撮影した最初の画像です。
お客様が「色を選ぶ」のに迷って結局買うのやめた〜なんてことがないように、2色どちらも欲しくて二枚買っちゃった、という嬉しい結末を願っています。