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いつも心に世界地図。

今年は世界のことを意識する場面が多いというか、世界地図を目にすることが多い一年でした。
今回は世界地図をおともに2023年を振り返りながら、最後に自作の世界地図イラスト(トップ画像はその一部)を載せるので、終わりまでズズッとご覧いただけたら幸いです。

・コーヒー

まずは、先日訪れたカフェ(京都市動物園併設)の壁にコーヒー豆の産地を示した世界地図がデザインされていて、「赤道付近に産地が集中しているのが分かりやすいな」と写真を撮ったつもりが保存し忘れて残っていなかったので、自分で再現してみました。参考サイト等は最後にご紹介しています。

テキトー世界地図「コーヒー豆」

地図を描く際、いくつかコーヒー豆に関するサイトを見て、酸味が魅力のモカマタリはイエメン産、モカシダモなどはエチオピア産、ほろ苦いマンダリンはインドネシア(スマトラ島)産、あまり飲んだことはないキリマンジャロ(酸味系)はタンザニア産、などということを確認し、私にはやっぱり、いつも「なんとなく」選んでいたモカブレンド(ブレンドされているので酸味が強すぎない)やブラジル(バランスよく飲みやすい)が合っているのだな、などとあらためて確認できました。
家でも毎日飲みつつ、近所の水出しダッチコーヒーが美味しいお店に行くのが息抜きになった2023年。街を見渡すとガラス張りのカフェや本格派のこだわり店が多いけれど、おしゃれな今風の空間はどうも苦手。来年は自分にとって居心地の良い店をもう少し見つけたいです。

ほぼブラック、たまにカフェオレ(ラテ)、たまーにお店の方にすすめられたりして生クリームが載ったものにも挑戦します。写真は伝票裏が楽しい昭和チックなシュベールさん。

・ワイン

普段は瓶ビールとか焼酎の中々のお湯割などが中心の私ですが、今年は間接照明が素敵なワインとお料理の店に何度か行けました。
しゃれたカフェは苦手なくせに、ワインを楽しむ店は背伸びして行きたいのが我ながら不思議。
一度、友達とプラネタリウムを見たあとに、路地にある雑居ビルの薄暗い一室(表からはお店に見えない)でメニューも見ずに「次は赤で」「白で」とだけお願いしてお任せで料理に合う様々な産地、特徴のワインを出してもらって(味が分からないドキドキと値段が分からないヒヤヒヤが共存)裏面のラベルを眺めて遠い土地に思いを馳せたりする時間を持てたことが、今年のワイン体験のハイライトでした。

テキトー世界地図「ワイン」

ワインの産地もこうして世界地図にしてみると(ネット情報をもとに生産量1万トン程度までの国を掲載)、ヨーロッパ勢はやはり強いなと。コーヒーと同様、緯度が同じような場所でさかんに作られているものの、近年は地球温暖化の影響でエリアが広がって(英国や北欧なども)いるようです。

・クラフトビール

生産量が増えているといえば、今年クラフトビールの専門店をよく見かけて、何度か軽く飲んだりもしました。
思えば数年前から、ベルギービールで家飲みしたり、旅先(日本)で買ったクラフトビールをお土産にしたりしているので、知らず知らず自分の生活にも浸透しているのかも。世界の有名クラフトビールを擬人化した漫画つき入門書『恋するクラフトビール』という本も持っていて、飲む前の予習というより飲んだ後に「あのビールはこういう特徴のものだったのか」と復習に使ったりしています。
このクラフトビールブーム、どうやら世界的な傾向らしいので、今回クラフトビールのサイトのビール原産国一覧を参考に(別の通販サイトで見つけた韓国も追加)世界地図にしてみました。もし普通のビールの消費量で世界地図を作ったら、中国やロシア、南米なども入ってくるのでまた違うものになるかと。

テキトー世界地図「クラフトビール」

・ワニ

2022年の暮れに唐突に伊豆熱川バナナワニ園に行きたいと思い立ち、それから一年後にようやく実現して、世界中のワニや熱帯植物園を見てきました。
園内で「世界のワニの分布図」という世界地図パネルを目にしたものの、「へーなるほどぉ」と思って通り過ぎてしまい、帰宅してから「なんで撮ってこなかったんだろう」と後悔したのだけど、今回地図を作るためにネットで画像検索したら、しっかり撮影してブログなどにアップしておられる人が結構おられて、ただどれも細かな文字が見えづらいので他の情報も参考にしつつ再現してみました(バナナワニ園の分布図にはワニイラストは載っていません)。

テキトー世界地図「ワニ」
熱川バナナワニ園にて撮影。中南米に生息するメガネカイマン。

・世界の紛争と人道危機

数年前、奈良に住んでいた頃に近所のロシア雑貨のお店で一枚の地図に惹かれて買い求めて、初めのうちはどこの地図か深く考えずに眺めていたものの、2022年2月からロシアによるウクライナ侵攻がはじまり、この可愛らしい地図は両国の紛争のきっかけ(2014年ロシアによるクリミア侵攻・併合がはじまり)の地、クリミア半島だと知ったのでした。

奈良「マールイ・ミール」さんで購入したクリミア半島の地図。

それ以前からシリア内戦と難民の方々の苦難、ミャンマーのクーデター以降の状況や香港のデモ弾圧など、テレビやSNSを通して心が痛むことが続いていたけれど、ウクライナ情勢も硬直したまま月日が流れる中、2023年10月にイスラム組織ハマスがイスラエル領内に侵入・攻撃したことからイスラエル軍が応戦(どころか圧倒的な軍事力での過剰攻撃であり、それ以前の長い歴史や経緯を無視することもできない)して、結果、逃げ場のないガザ地区で信じられないほどの犠牲が出て、終わりが見えない状態に。こんなディストピアに自分はどう生きていけばいいのか。

先日書店でこんな絵本(児童書コーナーで)を見つけました。
一般書のコーナーでも複雑な紛争や宗教対立などをイラスト付きで解説した本が増えているようです。あと『夜と霧』(ヴィクトール・E・フランクル)が今ふたたび読まれているらしいのも、こんな時代だからでしょうか。

地形が国ごとの有利不利をわけ、歴史や不公平を生み出すことから世界が抱える様々な問題について俯瞰する視点を与えてくれる一冊。解説がわかりやすく絵が美しい。

現在の紛争や人道危機、人権侵害に関する状況を世界地図でみるとこのようになりました(実際にはもっと色々あるはずですが)。
日本にいる自分もよそごとではないと感じていますし、実際にこの地図では日本にも人権侵害の水色マークがついています。

紛争と人道危機の世界地図(不完全で抜けや間違い等もあるかもしれません)。

11月の終わりに、【イスラエル、パレスチナを隔てる壁を越えてどちらの住人にも会って撮影し、それぞれ言語が通じない相手に対して書いてもらった手紙とともに展示する】という活動を続けておられる小山幸佑さんの写真展を見てきました。

小山幸佑さんの写真展「#RE」(From the place where We are Right, flowers will Never Grow#RE) 東京、恵比寿Koma galleryにて

奈良にいた頃、近所のカフェに「ファラフェル」というメニューがあり、ひよこ豆をマッシュして揚げたコロッケのような料理で、軽食やおつまみにちょうど良くてお気に入りだったのですが、それが中近東のシリアやレバノン、パレスチナなどで食べられている庶民の味でした。
同じく奈良のファッション雑貨店で目にしたサボ(かかとのない革靴)は、イスラエルの工房の商品だったと思い出したり。
実は10代後半からイスラエルの過剰な防衛と一方的な攻撃に対して疑問と抵抗感を覚え、私はこっそり一人不買運動というのか、サボや健康食品などイスラエル製だと分かると買わないように生きてきたのですが、小山さんの写真展示を見て「もっとフラットに見なければ。どちらも日々を生きる人たちなのだから」と反省したものの、その後の現地での被害を見るにつけ、やはりあまりに一方的で許し難い攻撃に再び感情的にになってしまうのです。国民の中には政権に批判的な人もいるはずですが…イスラエルとガザ地区での即時停戦(とくにイスラエルによるあまりに非人道的な行いとそれを支援・許容する国や企業に)を求めます。
世界地図を描こうとすると、それがほのぼのタッチであっても、どうしても楽しいだけでは済まされないことが見えてきます。

・動物園と水族館

2023年の夏、Twitterは「X」という名前になり仕様もかわりました。基本的に「キーワード検索して見る」のがメインではあったけど、どんどん気持ちが萎えてしまって、なんだかなぁ、と。

もともとSNSに疲れていたところだし、そろそろやめ時かなと思っていた私を引きとめたのは、動物園や水族館の公式アカウントでした。
見ているうちに動物たちに会いに行きたくなり、物理的に行ける範囲で実際に訪れることができたのは、葛西臨海水族園、横浜市立野毛山動物園、伊豆熱川バナナワニ園、京都市動物園の五ヶ所。
動物に限らず、熱川バナナワニ園では熱帯植物園がとても充実していて興味深く、動植物がどの国で生息しているのかを知ったり、世界地図で分布状況を紹介しているパネルを目にしたりしているうちに、徐々に世界地図に色々な動物をレイアウトした絵を描いてみたくなってきたのでした。
印象的だったのは動物ごとにスポンサーや協賛者のプレートが目立つ場所に掲示されており、寄付によって運営や設備改修等が賄われていることを実感して、今年話題になった国立科学博物館のクラファン(9億円集まったけれど手数料はいくら抜かれるのだろうかと心配になったり)のことを思い出したりもしました。

フェアリーペンギン (コガタペンギン )。葛西臨海水族園。
パラグアイオニバスと海外のスイレン。熱川バナナワニ園。
シロテテナガザル「シロマティ」(パートナーの黒毛の「クロマティ」はこの日不在)。京都市動物園。

・国立民族学博物館

いよいよ世界地図の絵を描こうと決めて、その前に世界中のものを何でもいいからたくさん見ようという意気込みだけで、関西に帰省した機会に大阪万博記念公園内の「みんぱく」へ行ってきました。

今年1月には九州国立博物館へ行ったので同じような感じかと思ったら、そちらは「日本文化の形成をアジア史的観点から捉えるというコンセプト」(公式サイトの館長ご挨拶より)で日本を中心に文化財をじっくり鑑賞するという形だったのに比べると、大阪の国立民族学博物館の方は「世界の諸民族の社会と文化に関する最新の情報と知識を人々に提供し、異なる文化についての理解を深める」(館内案内パンフレットより)という目的どおり、世界一周旅をして最後に日本に到着するような気分になれる展示でした。
用事があって2時間ほどの滞在で切り上げたので、全体をざっと眺める程度で写真撮影もほとんどできず無念。

ただ、会場では、例えば韓国のドラマ「チャングムの誓い」(私は未視聴ですが姉が好きだった宮廷女官のドラマ)が人気のあまり世界各国で放送されたそうで、そのエリアを世界地図にしたパネルまであったりして、本当に様々なトピックで世界地図が至るところに掲示されていました。
オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、西アジア、東南アジア、中央・北アジア、東アジアなど地域ごとの膨大な展示品を見ながら、それぞれ個別の特徴より類似性にこそ意味があるというか、世界の諸民族が相互の繋がりの中で存在していることを感じられたのがよかったです。

前から興味のあった更紗がどのようなルートで日本に入ってきたかの展示。
貝を加工したビーズのバリエーションと民族分布図。
楽器に限らず生活用具や葬送儀礼に至るまで膨大な展示があり何を撮ってよいやら。

・世界地図を作る

そんなわけで、2023年は出先で見るものやニュースで世界を感じたり、世界地図そのものを目にする機会も多い一年でした。
ただ、自分で世界地図を1から描くとなると面倒くさいもので、やる気がなかなか出ず…
とりあえず来年3月ごろまでかけてじっくり作るつもりで、初回デザインを上げてみました。地球は丸いのでもう少し実際に近いイメージで表現したいのと、山や川、湖などを入れるかどうかということなど、色々難しいところ。

 現時点では正確な地図ではありません。

コサックダンスとひまわりを描いているあたりがウクライナで、ひまわりの茎がクリミア半島にかかっています。バナナワニ園でみたミシシッピーワニとナイルワニ、可愛い目と背中の大きさに驚いてすっかりファンになったマナティー、印象的だったパラグアイオニバスも入れてみました。
葛西臨海水族園まで会いに行ったペンギンの中で最小のフェアリーペンギンはニュージーランド(とオーストラリア南岸)に、フンボルトペンギンとケープペンギン、エンペラーペンギンとアデリーペンギンも生息地にそれぞれ入れました。
京都市動物園で目が合ったワオキツネザルはマダガスカル島に配置。なぜか段ボールを「あたりめ」みたいに手で裂いて食べていたユーモラスなオオバタン(オウム)はインドネシアに。だけど一番お気に入りのシロテテナガザルは絵にするのが難しくて断念。
家でたこ焼きを作る時に買い物に出かけたスーパーでよく見るモーリタニアのタコや、同じくスーパーでよく見かける韓国のパプリカも入れてみました。
今年で人生最後の出展、とか言っていたのにまた来年5月にデザインフェスタ に出展(5/18土曜のみ)することが決まったので、この世界地図企画も何か形にして持って行きたいです。

今後も様々なものを俯瞰する視点を持って世界の流れ(地形や気候、民族の暮らしや文化、宗教、歴史と紛争などの諸問題)を想像して目をそらしたいことにもなるべく向き合いながら、感情的になりすぎず、この世界の中に今生きている一員として、毎日を大切に過ごしたいです。

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おまけ:
今年読んでとても印象的だった、やまじえびねさんの『女の子がいる場所は』(エンターブレイン2022.6)の目次ページの世界地図。女性の生き方にまつわる物語でいえば、他に今年は韓国の漫画『大邱の夜、ソウルの夜』ソン・アラム著、町山広美解題、吉良佳奈江翻訳(ころから株式会社 2022.2)や、以前から話題になっていた『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ著、斎藤真理子翻訳(筑摩書房 2018.12)も読みました。

世界のかわいい雑貨と、それらを見つけて素晴らしい手仕事を日本に伝えようとする女性たちの物語。ワクワクするものと人がたくさん登場する本です。

地図制作の参考文献、参考資料:『人権の世界地図』(丸善出版2019)
・『地政学でわかるわたしたちの世界 12の地図が語る国際情勢』(評論社2020)
・『ちずでぐるり!世界いっしゅうえほん』(PIE International2017)*この本は国ごとの索引があるので調べ物をするときなどに大変便利です。
・『ビジュアル博物館第54巻 ジャングル』(同朋舎出版1995)
・『VOYAGE! 世界のかわいいもの、たのしいこと探して、いつでも旅の途中』1〜3(Mrs.f著/フェリシモ出版2004〜2007)
・『世界手芸紀行 アジア、アフリカ、ヨーロッパ、中米の手仕事をつなげる日本人女性たち』(日本ヴォーグ社2017)
・『世界の生きものMAP』(株式会社エクスナレッジ2019)
・『動物の図鑑』(小学館1958)(小学館1974)
・『学研もちあるき図鑑 まるごと海の生きもの』(学研2013)
・下敷き「ペンギン・海獣大全」(株)ザ・アクセス(葛西臨海水族園売店にて)

地図制作の参考サイト:危険生物.information「ワニの全23種類、分布域や特徴、生態について」
・「子どもの習い事図鑑」サイトより「すたペンドリル世界地図イラスト」
・株式会社澤井珈琲「世界のコーヒー豆の特徴」ページ
Bigin公式サイト「国別コーヒー豆の特徴」ページ
コーヒー豆研究所のサイト「国・銘柄別の味わい分布」
Firadis WINE COLUMN(ワインベルトを示す世界地図)
AtlasBig.com「国別のワイン生産」
CRAFTBEERHUNTクラフトビールハント(クラフトビール・地ビールの原産国一覧)、赤十字国際委員会JETORO(日本貿易振興機構)※、
Spaceship Earth(スペースシップ・アース)国際人権NGOアムネスティ日本
※日本貿易振興機構ジェトロのサイトには「米国国務省による人権報告書’22では日本についても33ページが充てられ、前年調査に引き続き、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)へのアクセスへの障壁が指摘されたほか、障害者や国籍・人種・民族的マイノリティーなどに対する人権侵害が報告された」等の表記あり。