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正義のあたたかさ

あたたかいものが、美味しい季節になって嬉しい。

基本的に飲むことが好きなので、
水でも麦茶でもカルピスでも、なんでも飲む。
コーヒーはたっぷり淹れて冷蔵庫に押し込まれるので、だいたい冷たい。

それでも、ひんやりした季節の「あたたかさ」ってたまらない。

同じ温度でも、夏は「暑い」になってしまう。
「あたたかい」は、涼しい季節の特権のような気がしている。

あたたかさ、というと思い出す話がある。
友達の家が、浸水したときの話だ。

それはもう、浸水というのだろうか…
漏水?
上階から、水が降ってきたらしい。
わたしは人生で経験したことのない、不幸な事故だった。

そのときの話は、後に聞かされた。
不幸中の幸いという言葉は、あまり好きではないけれど
ちょうど、引っ越しを決めていたところではあったとか、
上階の人が蛇口を締め忘れた?とかで、とにかく彼女は何も悪くなかった、とか。
わたしは事後処理として、濡れてしまった靴の処分を手伝っていた。
気の毒だったね、以外の言葉が出ない。

彼女はそのとき、また別の友達に事の悲惨さを、リアルタイムで伝えていたらしい。
びしょびしょになりながら。

「とりあえず、シャワーを浴びなよって言われたの」と彼女はそのときのことを語った。

とにかく、気が動転していたし、管理会社の人にも連絡して
このあと、現場検証的なことも行われるから、来る人を待たなきゃいけない。
それでも、言われた通りおとなしく、シャワーを浴びたらしい。

「シャワー浴びたらね、すごく落ち着いたんだ」
あったかくなったし、と彼女は笑った。

わたしは、彼女のアドバイスをしてくれた友達に、感謝した。
そう、シャワーだ。

そう、あたたかいこと。

寒いときに、幸福を思い描くことは少し難しい気がする。
あたたかさが、守ってくれるのだ。
幸福に近づき、安寧を纏う。

あたたかさは正義なのだ、と
わたしはこの話を聞いて、確信した。

今日はもうダメかもしれない、なんて
3日に1回、
いや、2日1回は思いながら生きている。

でもわたしは、友達からもらった秘蔵の、ルピシアのティーバッグを取り出した。
1つだけ、のティーバッグ。
贅沢なそれを、マグカップに放り込んだ。

今日も確かに、
あたたかさはわたしを、守ってくれている。





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