見出し画像

おなじはなし

わたしたちは、何度も同じ話をする。

スターバックスのコーヒーを「おいしい」と言う。
(もう飲んだことがあるものでも、何度でも)

新作のネイルの情報を見て「捨て色ないってすごくない?」と言う。
(それ、前のシーズンでも同じこと言ったよね)

ウーバーイーツはすばらしいと言う。
「こんなにおいしいものを、家で食べれるなんて!」
「おうちの料理とはやっぱり違うわね!」

ときどき、ピアスのケースを開いて「かわいい」と言う。
「ずっと見ていられる」と、彼女はうっとりする。
わたしも「やっぱりかわいいね!」と言いながら、隣で見入っている。

口紅を塗っても、「かわいいね!」と言う。
「なんか、人間になれる感じがするよね!」
「そうそう!」とふたりで笑う。

新しいネイルを試すこともある。
わたしたちは、手の形も色も、着るものだって違うのに
お互いに塗った色を見て、「やっぱりかわいいよね」と褒め合う。

ときどき、ふたりでケーキを食べる。
わたしたちはいつも、ケーキを半分ずつにする。
「このチョコレートのやつ、おいしい」と、どちらかが言うと
「おいしいね」と言う。
そして必ず、「生クリームの方もおいしいね」と言って、笑う。


わたしたちは、何度も同じ話をする。
飽きることなく、「かわいい」とか「おいしい」を繰り返す。

そうして、わたしたちがわたしたちであることを、
日常に置かれているささやかなしあわせを
何度だって、確認してゆく。

そしてときどき、思い出す。
「あなたといるときのわたしが、好きなの」と言ってくれたことを。

わたしたちは、この新鮮な気持ちで繰り返される日常を
毎日のときめきを確認する時間を、愛しているのだ。




スタバに行きます。500円以上のサポートで、ご希望の方には郵便でお手紙のお届けも◎