見出し画像

ワンピースを、いくつかと

 時折する想像がある。

 定期的に訪れる、という意味では病と言っていいかもしれない。
 あるいは、癖、とか。

 YouTubeを徘徊していたらルームツアーの動画を見つけて、それが妙に素敵だった。
 お部屋そのものは、よくある賃貸で、それはわたしの部屋にも、友だちの部屋にも見えるような規模感だったのにも関わらず、デスクにも棚にもお気に入りのものが、きちんと飾られていた。
 わたしだってお気に入りを飾っているはずなのに、なんていうかゴチャッとしている。
 そのルームツアーは「引越して2週間」ということだったので、わたしの部屋とは全然違うのは承知のうえなんだけど、選ばれた精鋭のお気に入りがすごく良かった。

 わたしだって、自分の城といえる家を持って、もう二十年近い。
 テンションだけでモノを買うことの愚かさ……というと語弊があるのだけれど、捨てることより買うことのほうが易い、ということには気がついている。
 だからこそ、キャラグッズはポケモンに絞っているのだけれど、今デスクに見える限りでも、ドラゴンボールのグッズがふたつ、カードキャプターの小さなトルソーがふたつ、その他アクスタがふたつも飾られている。ピアスもネイルも増えるばかり。
 ゴチャついているけれど、どれもお気に入りだと断言できる。
 けれども時間と共に、お気に入りの優先順位は変わってきて、そろそろ前職のデスクに置いてあったハリネズミなどは手放していいかもしれない。

 最たるものは、本と服だといつも思う。
 本については精査しながら、新しいものを買おうと考えている。

 新しい本棚を買うとき、きっと今よりももっとお気に入りを詰め込もうとするだろうから、要らないものはきちんと手放せると確信している。


 いま新しく考えているのは服のことで、この部屋のハンガーラックは大きすぎる。
 大きいから何でも引っ掛けられるし、タンスを持たなくていい=服を畳まなくていいというのは18歳のわたしにとっては衝撃で、上京当時から使っている。
 確か、ホームセンターで買ったからやたら丈夫で、全然傷んでいない。分解もできるから、今までの引越しのときにも手放すことなくずうっと連れてきた。

 いやしかしデカイ。
 これを設置するために、結果的に一畳ほどのスペースを無駄にしている気がする。
 半年の休職を明け、5月から復職したのだけれど、着ている服の少なさには驚く。トップスは基本3着だった。春夏用オフィスカジュアル。
 スカートはもう少し多くて、5,6着だろうか。スカートの種類が多いから、トップス(白か黒のブラウスみたいなやつ)がどれほど同じでも、印象は被らないんじゃないかな。などと思うけれど、わたしは会社のみんなが昨日着ていた服だって思い出せないような女なのである。

 そうして自分が、「朝に着るものを選ぶのが面倒な人間であること」をしみじみと思い出している。今だって、選ぶものが少ないから無事に会社に行けているようなもの。これが、「前日の夜に準備する」という甲斐性もない。
 お気に入りのスカートというのもあるのだけれど、これは気分を上げたい日や、友達と会うときに着ている。だけど、毎日はそれなりでいい。渡しの場合は。お気に入りっていうのは、ちょっと疲れる。ハーゲンダッツはたまにだけ食べたい。みたいな。わたしは富豪になっても、特別なときだけハーゲンダッツを食べると思う。

 ということで、今は服を持ちすぎている。
 理由のひとつが、会社がオフィスカジュアルであることが挙げられるのだけれど、それほどカチッとしたものではなく、デニム・フード・スウェット・TシャツあたりがNGなだけなので、気重ではないし、普段着で出社している感覚に近い。
 でも、友達と会うときは夏はTシャツ、寒くなればスウェットなので、休みの日にしか着ない服っていうのもある。と思うと、手持ちが増えてしまうのは当然だろう……という気もするのだけれど

 例えば、会社のオフィスカジュアルがなくなって、という想像は少し難しいのだけれど
 例えば、前職みたいな完全に服装がフリーだったら、わたしは何を着るだろう。やっぱり、Tシャツかな。なぜか、冬場もTシャツの人が多い職場だった。スウェットも着ると思う。結局、今みたいな「ブラウスっぽいものにロングスカート」の組み合わせの日もあると思う。

 あとは、ワンピースをいくつか。
 ワンピースって、着るときはらくちんでいいのだけれど、洗濯はちょっと面倒だし、何よりお気に入りのワンピースばかり選ぶと、「いつも同じ服を着ている人」になっちゃうから難しい。
 でも、ワンピースはいくつか持ちたい。


 そう思うと、手持ちの服たちもそれほど多いような気はしないのだけれど……
 明らかに着ていない、存在を忘れているものがいくつかあるから、捨てるというよりも、「何を持っているか整理」の時間は設けたほうがいいかもしれない。本も然り。

 今より、一回りも二回りも小さいハンガーラックに切り替えられたらいいな、という気はしている。
 そうしたらわたしは、何を選ぶだろう。
「お外で着るお気に入り」と、「おうちのリラックス用」と、今でいうと「無難に会社用」があるから、ちょっと難しい気がするけれど、同じ服をたくさん着ることを良しとし、「持っているけれど存在を把握していないもの」をぜんぶ捨てたら、スッキリするかな。

 お部屋全体がそんなふうにスッキリしたら、ルームツアーをやりたい。
 いつも友達は居間に通しているのだけれど、「お部屋のこのスペースはお気に入りだから見て!」って言えるようなお部屋に住めたら、素敵だろうな。

 いまはゆっくり妄想している。
 そんなふうになれたらいいな、と思いながら、少しずつ手持ちと、わたし自身を見極めていけますように。



スタバに行きます。500円以上のサポートで、ご希望の方には郵便でお手紙のお届けも◎