午前3時の旅人
半年間悩んで、購入ボタンを押したのは深夜のことだった。
何度も見つめた画像。
いつか買おうとにんまり笑った午後
カードの引き落とし額に途方に暮れた夜
今月も買わなかった、買えなかった。
いつか、またね
いつかあなたに会えることを、ただそれだけを、願いながら
何度も見つめた画像。
桜のピアスを見つめていた。
だからきっと、半年だと思う。
わたしは、春からあなたに会いたかった。
途中から、「あなたに会うための旅」になっている気がして
出会ってしまったら、終わりのような気がしてしまっていた。
やりこんだRPGの、ラスボス直前で手放すみたいな
だって、最後のボスを倒したら、あなたとの旅が終わってしまう。
こんなのにも濃密で幸福な時間を、
失うことはとてつもなく寂しい気がしている。
*
旅の終わりは、唐突に訪れた。
午前3時。
ふわふわと漂うように、「もういいよね」と頷きながら、購入ボタンを押した。
*
ハンドメイドの、わたしのためのピアスの到着予定まで、あと1ヵ月。
*
1ヶ月後には、購入ボタンを押したことも、覚えていないかもしれない。
あの、漂うように、どこにも掴まれなかったわたしが唱えた希望を、思い出せなくなっているかもしれない。
それでも時折思い出して、「まだかな」なんて浮かれてみたりする時間が、訪れればいい。
ああ、この先ひとつきものあいだ、そんな幸福を抱えられるなんて
旅が終わらないことは、ときどきとてつもない甘さを放つ。
*
願わくば、少しだけ思い出して。
何かを繋いで、紡ごうとした午前3時のわたしを。
今度は、桜のピアスと新しい旅に出て
落下の秋を越えて、冬の孤独を抜けて
どうか、春まで
【photo】 amano yasuhiro
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