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午前3時の旅人

半年間悩んで、購入ボタンを押したのは深夜のことだった。

何度も見つめた画像。
いつか買おうとにんまり笑った午後
カードの引き落とし額に途方に暮れた夜
今月も買わなかった、買えなかった。
いつか、またね
いつかあなたに会えることを、ただそれだけを、願いながら
何度も見つめた画像。

桜のピアスを見つめていた。
だからきっと、半年だと思う。
わたしは、春からあなたに会いたかった。

途中から、「あなたに会うための旅」になっている気がして
出会ってしまったら、終わりのような気がしてしまっていた。

やりこんだRPGの、ラスボス直前で手放すみたいな
だって、最後のボスを倒したら、あなたとの旅が終わってしまう。
こんなのにも濃密で幸福な時間を、
失うことはとてつもなく寂しい気がしている。

旅の終わりは、唐突に訪れた。
午前3時。
ふわふわと漂うように、「もういいよね」と頷きながら、購入ボタンを押した。

ハンドメイドの、わたしのためのピアスの到着予定まで、あと1ヵ月。

1ヶ月後には、購入ボタンを押したことも、覚えていないかもしれない。
あの、漂うように、どこにも掴まれなかったわたしが唱えた希望を、思い出せなくなっているかもしれない。
それでも時折思い出して、「まだかな」なんて浮かれてみたりする時間が、訪れればいい。
ああ、この先ひとつきものあいだ、そんな幸福を抱えられるなんて
旅が終わらないことは、ときどきとてつもない甘さを放つ。

願わくば、少しだけ思い出して。
何かを繋いで、紡ごうとした午前3時のわたしを。

今度は、桜のピアスと新しい旅に出て

落下の秋を越えて、冬の孤独を抜けて
どうか、春まで



【photo】 amano yasuhiro
https://note.com/hiro_pic09
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夜桜、を買わせていただきました。





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