わたしが、未来に残したい風景
あなたと、話をした。
外なのに、暖房があって
あたたかくて、良い景色で。
あなたの、知らないことを知れた。
こういう時間が必要だったのだ、とようやく気づいた。
なんでもなさそうな時間にしか、紡がれない言葉がある。
「ねえ、君はどう?」
自分が話したあと、問い掛けてくれるやさしいまなざしが好きだった。
そうしてわたしも、安心して語り始める。
「また、一緒に来てくれる?」
次は違う遊びもしてみたいし、食べてみたいものもあるんだ。
もちろんあなたの好きなスターバックスにも、連れて行ってね。
「もちろん」という、あなたはそう言う。
あなたの、やさしいところが好きだと思う。
あなたのやさしさは、わたしにも、あなた自身にもしっかりと向いている。と、知っているから。
やさしいひとと過ごす、やさしい時間。
*
「何分経った?」
「えぇと、20分くらい?」
「時間のわりに、すごい充実感だね!」
息も絶え絶え、わたしたちはほほえむ。
そうして深く息を吸う。
「登った!って感じだね」
「気持ちいいね」
「自然しかない、というようなところは、ほんとうにすてきだね」
「きっと、人間の本能に刻まれているのだよ」
呼吸を整え、もう一度笑う。
「また一緒に、山を登りたいね」
「難しくないところね」
*
「ありがとう」と言って、その日は別れた。
ずいぶんと、すっきりとした気持ちだった。
あなたを知れて、わたしを知ってもらって
そういうときは、紐解かれている。わたし自身のことも。
あなたの笑顔と声、そして紐解かれた心臓が「すっきり」の答えで
明日を生きる気力なのだと思う。
身体はどっしりと疲れているのに、不思議だ。
*
「また一緒に」と思える場所が、残り続ければいいと思う。
べつに、なんでもいいと思う。
その場所そのものに、すごく価値があっても、なくっても。
毎年冬に訪れる、イルミネーション。
少しだけの登山。
スターバックス。
ファミレスだって構わない。
また一緒に来たいね。
まだまだ遊びたいね。
そう誓った場所がなくならなければ、また来られれば
それだけで、呼吸は続くような気がしている。
帰れる、ということ。
あなたがいた場所に
あなたがいる場所に
あたたかなものが、残っている場所のひとつひとつが
消えなければいいのに、と思いながら。
わたしはこっそり何度も、足を運んでいる。
※今日のBGM
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