靴下の夢
今日あったこと、という話を、わたしは一生懸命に聞いていた。
夜、わたしたちは話をする。
たいしたことがあったり、なかったりする。
今日は「たいしたことのある」みたいな話で、わたしはえらそうにアドバイスをしていた。
ついつい、おせっかくになってしまう。助けたい、と思ってしまう。
懲りないなあ、まぬけだなあ。放っておけばいいのに。
だからわたしは一生懸命のはずだったのに、気づいてしまった。
リビングの、靴下。
サンタさん用に、もう何週間も前から吊るしてあったやつ。
その靴下が、ふくらんでいるように見えた。
なにか、入っている。
*
話が終わるころに、そのひとは言った。
「駅前でサンタに会ったんだよ」
「それで、頼まれた」と言いながら、靴下の中にがさがさとお菓子を詰め込んだ。
今年はお菓子以外がいい、というわたしのメッセージは届いていなかったらしい。
そういうこともある。
「お菓子は、食べられないよ」と、わたしは言った。
特定のものしか食べられないし、食べたところで味がわからないから「おいしい」って言えないよ。
「これは食べられると思ったんだけどなあ」なんていうまぬけな顔に、少しだけ腹が立つ。
ぜんぶ、試している。
そして、吐いている。
あとは「まあ食べられなくないけどおいしくはないもの」しかなかった。
だから、だめなんだよ。
もう、食べれないって苦しむのはいやなんだ。
だから、言ったじゃないか。
でも、激しく怒ったり悲しんだりしたらだめだ。
せっかくサンタさんがくれたんだから。
わたしは、笑わなくちゃいけない。
そんなふうに、思っていたのに
この物語には、続きがあった。
*
「サンタさんが君にあげたかったのはね、お菓子そのものじゃなくて。
“プレゼントでいっぱいになった靴下”なんだ」
*
そんなふうに言われたら、笑うしかないじゃないか。
靴下を振り回して、最後のひとつの飴まで取り出して。
ありがとう、サンタさん。
今年、良い子でいられたかわからない。生きるので精一杯だったけれど。
来てくれて、ありがとう。
膨らんだ靴下って、わたしの夢だったよ。
叶えてくれて、ありがとう。
※靴下を飾ったときのはなし
※困ったものをもらってしまったときのはなし
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