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君に伝えたい百の言葉

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あなたに伝えたい言葉が残っている。見失っても、百個積んだ先に何かがあるかもしれない。光を追う者のエッセイ集
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2021年7月の記事一覧

心にも、ハンドクリーム

やっぱり気のせいじゃなかった、と思う。 多くのことの大半は、「気のせいかもしれない」から始まる。 痛みも、違和感も、苛立ちも。 気にしすぎかもしれない、と。 ほんものだ、と気づくまでは時間を要してしまう。 どうして、予防をするような生き方ができないんだろう。 手が乾燥している、ような気がしていた。 数日経っても「気のせい」はおさまらなかったので、「ほんとうだ」と太鼓判を押したところ。 いまさら慌てて、会社のデスクにハンドクリームを仕込ませる。 カバンの中にもハンドクリ

大切なことは、ライブハウスに教わった。

新しい部署に移動して、2週間が経った。 教えてもらって、まとめて、 それを確認しながらもう一度やってみる前に、新しいことが舞い降りてきて 気づくと、繋がっている。 「Aと流れは一緒なんですね」とか 「AがあるからBってふうになってるんですね」なんて言いながら、「そうそう」「なるほど」と笑い合う。 ゴール地点を見据えて、少しずつ前に進んでいることに、強い実感を伴う日々は、慌ただしく過ぎてゆく。 * “仕事”ということの大枠を考えるときは、いまでも思う。 大切なことは、ライ

寂しさと、出会わないように。

晴れの隙間を狙って、IKEAに行った。 この瞬間を待っていた、 枕を買うことは、もう決めていた。 ふたつめの枕。 抱きかかえる用の枕、転がすようの枕。 ふたつあるって、なんて美しく自由なんだろう。 想像するだけで、うっとりしてしまう。 枕を買うなら晴れの日だ、と決めていた。 それが今日。ついに今日。 わたしはうきうきとIKEAに向かい、目当ての枕を手に取った。 ひとつめの枕と同じものを買う、と決めていたから迷わない。 浮かれて、ピンクの枕カバーを選ぶ。 あとは、タッパー

小指と親指くらいは、遊ばせておけ

手を、グーにする。 そこから、小指と親指を立てて、くるくるとまわす。 「何かあったらいつでも呼んで」 画面の中、そのひとは笑って言った。 電話の受話器に見立てられていたと思ったその手が、「ハングルース」だと気がついたのは、映画の終わりだった。 * 「大切なものができたら、一歩離れてみなさい」 中学生のころ読んでいた小説で、そんなセリフがあった。 女子高生の学園モノの中の一節で、いまでも忘れられない。 理解できない言葉のいくつかは、わたしの心臓に刺さって抜けなくなる