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クッキーはいかが?

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1200文字以下のエッセイ集。クッキーをつまむような気軽さで、かじっているうちに終わってしまう、短めの物語たち
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2023年9月の記事一覧

なにもしたくない夜

すべてを手放してしまえそうな なにもしたくない夜は 毛布の ふわふわしたところを撫でて 余計なことの中の、できるだけ暗くない部分を引っ張って 起き上がる気力があるならば、お水を少しだけ飲んで また、ふわふわの毛布を撫でるのを 飽きるまで繰り返してゆく

松屋ができたよ

駅の反対側に、松屋ができた。 駅の反対側はあんまり来ないので、もともと何があったかはわからない。 自分の住んでいる町なのに、どこかよそゆきの気分になる。 両手から何かを、零し続けてしまっているような 自分の目が、とんでもない節穴のような 自分のからだが少し浮いて タイムスリップしてしまっているような ここが、自分の住んでいる町であることを、きちんと確かめる必要がある。 そんな感覚だった。 そして、松屋はあった。 見慣れた黄色い灯りを放ちながら 煌々と佇んでいた。 牛丼

夢を見ずにおやすみ

夢を見た。 よく、夢を見る。 内容を、うすらぼんやり覚えている。 多くは、眠る前に見たアニメとか、日頃考えていることとか、そういうことに引っ張られる。 そろそろ会いたいな、と思えば、友達の家の猫が出張出演してくれるように。 そして時折、現実に紐付かない夢も見る。 今日は、やさしい人の夢を見た。 やさしい人は、時折わたしの夢に訪れる。 そして必ず、わたしを助けてくれる。 迷っているときには手を引いてくれるし 如何ともし難い、そんなときには背中を撫でてくれる、 導き、許し

金魚鉢の猫

書いていたエッセイを消した。 見栄を張った。 消すことすらできなかった。 ただ、着地できなくて、もうできるような気もしなくて、そっと閉じた。 ぼおっとメモ帳(いつもエッセイを書いているメモアプリ)を振り返ったら、書きかけのエッセイがいくつかあった。 むかしみたいに逐一へこんだりしなくなったけれど、そういう時期らしい。 すっかりやる気を削がれ でも、今日の分を書かないと、と思いながら重い腰を上げてパソコンの前に座る。 すぐに書き出す日もあれば、そうでない日も多くて そう