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クッキーはいかが?

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1200文字以下のエッセイ集。クッキーをつまむような気軽さで、かじっているうちに終わってしまう、短めの物語たち
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傷跡

 友達に、マッサージをしてもらった。  足の裏を触られたときに、右足に傷があることを思い出した。  小指と薬指のあいだ  中学3年生のときに、プールの階段で転んで切った。  すぐに病院で縫ってもらったのだけれど、あれから右足の小指は、左足の小指と同じようには動かない。  別に日常生活に支障があるわけではないし、すっかり忘れていた。  左手にある縫い傷(中学1年のとき、自転車でガードレールに突っ込んだ)と比べて、痛むこともほとんどない。  けれどもこうして触れられると、傷が

どこでもない場所

 バスを見る。  朝の、通勤するときも  夜の、まばらな明かりの中も  バスを見る。  どうしてバスが好きなのだろう、と考えてみたら  乗らなくてもいいから、という結論に至った。  わたしにとってのバスは非日常で、生活に必要な手段ではないから。  何か、特別な感じがする。  どこへゆくかわからない、というのもいい。  もちろん、行き先が書いてあって、そこは知っている場所だったりするのだけれど  知らない道を通るというのはもう、どこへゆくのかわからない。と同じだった。  ほ

だから、もし選べるときには

 夏は過ぎ去り、冬ではない。  ということで、今は秋。  夏と、冬の、いいとこ取りの季節。  夏はアイスコーヒーばかりだったけれど  涼しくなったので、ホットコーヒーも飲む。  まだまだ、アイスコーヒーも飲む。  そういえば、紅茶にも良い季節になってきた。  ティーバッグを、お気に入りのタンブラーに淹れて  熱湯を7割で蒸らす。  蒸らし終わったら、お水を足して、ちょうどよいお茶を作る。  これが簡単なので、最近の執筆のお供は紅茶ばかりだったのだけれど  今日は、飲みか

ふわりとまぬけに

 スターバックスの、11月からの新作情報が出始めている。  ハロウィンが終わると、もうすぐクリスマスで、もう冬。  一年で、いちばんきらびやかな季節な季節の、新商品が並ぶ。  そろそろかなあ、と思っていたジョイフルメドレーティーラテの名前を見つけて、にんまりする。  もう、それだけで嬉しい。  スターバックスのティーラテがすごおく好きで  一時期は、「疲れたときには、イングリッシュブレックファストティーラテを、ゼンブミルクで」と決めていたのだけれど  味覚と嗅覚が壊れてし

エスケープ、ワンモアコーヒー

 朝、予定より早く着きすぎちゃって。  からだは重たくて、ぜんぜん元気が出なくて  すうっと逃げ込んだスターバックスでコーヒーを飲む。  今日は、カフェミスト。  ドリップコーヒーに、温かい牛乳の組み合わせは  優しく勇ましく、からだをめぐってゆく  用事が終わってへろへろで  でも、まっすぐ帰る気分じゃなくて  何かをするわけでもなくて、ひとりになりたくて  スターバックスで、おかわりのコーヒー。  ごくごくと、アイスコーヒーを飲む。  今日もよく頑張ったね、お疲れさま。

勇敢なコーヒー

 朝、コーヒーを淹れた。  豆を20グラム挽いて、お湯の量を60gずつにわけて5回そそぐ、丁寧なやり方で。  ああ、コーヒーが美味しい。と思えた。  それは、勇敢な気持ちだった。  自分で作ったものや、してきたこと、選択に、不安になったりする。  これでよかったのかな、やらないほうがよかったかな、またできなかったな。自分の弱さに傷つくのに、わたしはまた立ち止まる。規則正しく走れたら、傷つく暇もないのだろうに、よそ見ばっかりして眠ってばかり。  それでも、コーヒーが美味し

電源と、悲しい気持ち

 このあいだ使ったばかりの、ワイヤレスヘッドフォンがつかなくなっていた。充電したのに。  そういえば、外してピアノの上に置いて、電源を切らなかった。Bluetoothの接続だけ、iPhoneから切って、そのままだった。  ああ、電源ってのは切らないとなくなっちゃって、充電が必要なんだ。って、馬鹿みたいに感心して  そうだ、あたしも電源を切らなくちゃ。  ずっと自分を動かしてばっかりじゃなくて、きちんと、意図して、お休みをしなくては。  それは、寝ることも食べることもそう

今日のコーヒー、明日のコーヒー

 コーヒーを飲みたい、と思う。  最近はいつも、そう思っている。  我が家の冷蔵庫には、サーバーになみなみ淹れたコーヒーが冷やされている。  これがいつもなみなみ、満タンだったらいいのだけれどそうもいかない。  残りが少なくなったらボトルに移送されて、次のコーヒーを淹れる。また冷やす。その繰り返し。  あたたかいコーヒーそのまま冷蔵庫に入れてるので、冷えるまではしばらくかかる。アイスコーヒーには、仕込みが必要なのだ。  明日のわたしが、アイスコーヒーを楽しむため。今日も豆を

ころりころりと転がるうちは

 休日。  ころりころりと過ごしていたら、あっというに過ぎてしまった。  調子がいいなと思った午前中は洗濯をして掃除をしてコーヒーを淹れて  ごはんを食べて散歩に行こうかと思ったら頭が重くて  少し眠って、だからって散歩に行けるような気分にならなくて  見ようと思ってたアニメの残り(ヒロアカの最後2話)と、はじめしゃちょーの動画(タクシー100万円で日本の最北端からどこまで行けるのか)を見て、ごはんを食べてまた眠った。  本当は、いろいろ書きたいことを元気よく書いて、夜はゲ

今日もわたしは、カーテンを開ける。

「晴れた日の朝、カーテンを開けるみたいにスッキリするかもしれないよ」 と、言われたことは、今でもハッキリと覚えている。  恋人と別れるべきか、悩んでいるときに掛けられた言葉だった。  わたしは離れるべきなのか、離れたいのか、よくわからなくて、ずっともやもやしていて……今思えば、そんな不安をひとりで抱えていたのだから、もう恋は終わっていたのだと思う。あったのは見栄だけで。いや、それこそを恋と呼ぶのだろうか。もうわからないけれど。  カーテンを開けて、日差しがさあっとひるがえ

日頃の安心

 手紙を書いた。  手紙には、シールを貼った。  わたしはこう、オシャレ全般のセンスが皆無で、ノートも手帳も全然可愛くできないタイプで、シールは好きなんだけど、どうしていいかわからなくて貼る場所はいつもふたつ。 「◯◯さま」と名前を書いて、吹き出しで囲む。その横にひとつ。  もうひとつは、封筒を止めるところ。  他は、どうしていいかわからない。  今日は、1シート使い終わった。  それはハロウィンのシールで、もらったのは去年か……もしかしたら一昨年だったかもしれない。

ちっぽけ

 10月。  わたしはずっと長袖で  今日から、リュックに詰め込むカーディガンを、秋用に変えた。天気予報は、相変わらず見ない。  長袖のブラウスで家を出て、寒くない気がして、通りに出たら陽が強くて、日傘をさした。まぶしくて、外皮を削られるような気がして。  夏はあんなにみんな日傘だったのに、今日はわたしひとりだった。  ひとりで日傘で、何にも恥ずかしがることはないのに、そわそわした。  駅前まで来て、日傘の仲間を見つけて安堵する。  自分がすごくちっぽけな気がして、わざ

ケーキにコーヒーが必要みたいに

 今日は一日中ねむい。  いつもそんな感じなんだけど、今日は特別で一日中ぽやぽやしている。  洗濯と掃除、体だけ動かせば済むものを午前中にすませて「アタシってば今日は調子いい!?」なんて思ったのも束の間。  ごはんを食べて出掛けようとしたら、やたらと眠かった。それは、食後のアレじゃなくて、別次元と圧倒的な眠たさだった。  30分ほどアニメを見て、30分ほどぼーっとして、1時間半くらい寝て、また1時間くらい様子を見て、ごはん食べて、また眠くて寝た。  そのあいだ、一定数の重さ

誰かの喜び

 切手を買いに行った。  10月から郵便の料金が変わって、84円とか94円で送れていた封筒が、110円になった。  コンビニで10円金切手を買って、付け足して貼っていたんだけどそれもなくなって、近所のコンビニでは10円切手が品切れだって。みんな考えることは一緒だね。なんて言って。金曜日の16時。後回しにしていた郵送、せっかく今日明日で片付けようと思ってたのに。  残りの84円と94円の切手の枚数を数えて、26円と16円の切手を買いに、エコバッグを下げて慌てて「郵便局に行ってき