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クッキーはいかが?

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1200文字以下のエッセイ集。クッキーをつまむような気軽さで、かじっているうちに終わってしまう、短めの物語たち
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2023年2月の記事一覧

ときどき、ゆるゆる

ロボ太と別居している。 ロボ太は、セラミックヒーターとか、電気ファンヒーターとかいう名前のやつで、リビングが寒すぎて買った。 小さくて軽くて、おまけに冷風も出る、というところが気に入っている。 この家は、リビングも寒すぎるのだけれど、わたしのデスクも寒すぎる。 エアコンと対角線上にデスクを配置するしかなくて、ここはうんと寒い。 どうして、暖気って上に溜まるんだろう。 ああ、どうしてなんて理由がわかっても仕方がないのだけれど。 家中をわたしと一緒に移動したロボ太だけど、最

書きたくない、と同じくらいに

ああ、良い気分だ。 わたしは、午後の窓を見つめている。 この家に越して、もうすぐ2ヶ月。 まだ2ヶ月、もう2ヶ月なのに、未だ幸福だと思う。 良い部屋だなあ、と思う。 自室のデスクの横は、大きな窓で、わたしはそれを見つめている。 わたしは、窓を見るのが好きだと思う。 会社でも電車でも、よくそうしている。 だからどうとか、こうとか、なんでもないのだけれど 勇敢な気持ちになれる。 * あと10分くらいしたら、化粧をして出掛けなければいけない。 遠方からの友達との約束で、会う

神様のこんぺいとう

「これ、誰のお土産?」 会社の、お菓子置きのひとつを取って、そのひとは言った。 不思議な形のプラスチックーーーあれはなんて言うんだっけ? 三角錐? に入った色とりどりの青を持ち上げながら、首をかしげる。 ずうっとあって、誰も食べない。 会社のお菓子置きだもの、個包装で食べやすいやつからなくなってゆく。 お中元とお歳暮で届く「ありがとう」と書かれたマシュマロは、おいしいけれど不評だった。 個包装になっていなくて、たくさん入っている。ひとり5個食べてもなくならないかもしれない