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クッキーはいかが?

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1200文字以下のエッセイ集。クッキーをつまむような気軽さで、かじっているうちに終わってしまう、短めの物語たち
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2022年12月の記事一覧

ゆめのはなし

夢を見た。 みんなで、食堂にいた。 懐かしい顔を見て、少し笑った。 なぜだか、よっくんの話になった。 「アイツさあ、いまは劇団のマネージャーやってんだって」 それは、どこかばかにしているみたいな声だった。 よっくんが役者志望であることは、みんな知っていた。 わたしは、よっくんのことを思い出していた。 よっくんは、確かにこうも言っていた。 「どんな形であっても、絶対に演劇に関係のある仕事をするんだ」 それは強く、まっすぐな瞳だった。 みんなは知らないかもしれないけれ

ホワイトソースのきのこ

フライパンの中で、きのこが踊っていた。 お鍋の代わりに使う、深いパンの中は 真っ白な海になって、ぐつぐつと煮えていた。 「なにをしているの?」と問われて、驚く。 何をしているって、そりゃあ 「見つめている」 ぐつぐつと踊り、泡が揺れる 揺れて、呑まれて、繰り返してゆく。 わたしはそれを、見ている。 ただ、静かに 見ているだけだった。 「シチューになるの?」と訊いたら、「ホワイトソースだよ」と返ってきた。 シチューとホワイトソースの違いが、よくわからない。 隣から現れた

スタバのチケットを、いつ使おうか悩んでいる君へ

わかる、その気持ちわかりますぞ。 もう良い年のおとなだから、スタバには好きなときに行けるのに その、小さな紙切れが、宝物みたいになる。 まるで、ひだまりみたいに。あたたかくなる。 何を飲もうか、と考えているときは 何かを飲んでいるときとはまた違う 濃い空気みたいな、幸福感がある。 だってわたしには、スタバのチケットがあるのだもの。 なんていう、無敵感。 あのチケットを、 上限額まで使いきるのは、なかなか難しい。 ひとつのドリンクと引き換えなければいけないから フラペチ

12月の朝

書きたいことがないのか 時間がないのか、よくわからない。 朝、そろそろ仕事に行かなくてはならない。 そして、この朝のうちに1本は書くのだ。と決めていた。 毎日更新の、昨日分。 * 昨日は、帰ってきてごはんを食べて、そのまま眠ってしまった。 何度か目が覚めたけれど起き上がることもせず、部屋の電気を消すこともなく、気づいたら朝だった。 きちんと、朝に目覚ましをかけていた。 のろのろと起き上がって、ストレッチをして、シャワーを浴びて ほんの少し、時間に余裕がある。 ような気