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クッキーはいかが?

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1200文字以下のエッセイ集。クッキーをつまむような気軽さで、かじっているうちに終わってしまう、短めの物語たち
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2022年3月の記事一覧

好きな花を買えばいい。1本だけでも買えばいい

最近は、コンビニでお菓子を買うような気軽さで、花を買うようにしている。 去年までは、週に1度を目安にミニブーケを買っていた。 かわいい花を、ぎゅっとひとまとめにされたときめきには、抗えないものがある。 ブーケを選ぶには、もうひとつ理由があった。 言葉にすると悲観的過ぎてしまうんだけれど、どうしても本音で わたし”なんか”が、 こんなにたくさんの中から、いくつかを選んで 花瓶に並べても、可愛くなるわけがない。 と、思っていた。 たくさんから好きなものを選ぶ、っていうのは

アネモネの横顔

アネモネが、また閉じていた。 * 「完全に開花するまで、閉じたり開いたりしますよ」と、おねえさんは言った。 ぐわりと開くアネモネを、わたしは愛している。 育てている、という感じがいいのかもしれない。 もちろん、開花状態で購入するガーベラとかスイートピーも好きだけど。 アネモネは、ぐわりと咲く。 立っていた花びらが、横たわるように咲く。 その様子が、たまらなく愛おしい。 * 数日前から開花に向かったアネモネは、日中に少し開き、夜には戻っていた。 昨日あたりには、ま

5メートル先の、裏側を見よ

うちの、隣の通りで工事をしていた。 よく晴れた、午後の出来事だった。 日課の散歩は、いくつかのルートを持っている。 歩きたい場所と、時間の兼ね合いで、ルートを決めたつもりが わたしはふらっと、曲がりたくなる。 または、曲がることを取り辞める。 もう少し、というのはなんと甘い響きだろう。 もう少し、行ってみようと思う。未知の誘惑に打ち勝てない。 または、少しだけさぼっちゃおう、という日もある。 その日は、行ってみよう、と歩き出したところだった。 家からはほど近いけれど、