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あの手この手でマイナンバーカードの取得を強制すればするほど政府の信用は落ちていく/清水勉氏(弁護士)

改正マイナンバー法が昨日6月2日、自公と維新、国民の賛成多数で参院で可決、成立した。立憲、共産、れいわが採決自体に反対する中での成立だった。  
法案の成立を待たずに政府は2024年秋までに現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針を打ち出していたが、今回の法改正により、国会審議を経ずに省令のみによってマイナンバーカードに新たな個人情報を紐付けることが可能になる。現在進行形で進む健康保険証との一体化と合わせて、今後マイナンバーカードに紐付けられる個人情報は大きく膨らむことが予想され、法律上は選択制であるはずのマイナンバーカードの事実上の義務化に、さらに拍車がかかることになりそうだ。
 それにしても、今このタイミングでマイナンバーの機能を拡大する改正マイナンバー法を通すというのは、どういう了見なのだろうか。このタイミングというのは、マイナンバーカードをめぐるトラブルが全国で噴出しているまさにその最中に、という意味だ。これまで明らかになっているだけでも、マイナ保険証の医療情報の誤登録が7,312件、コンビニでの証明書の誤発行が16件、公金受取口座の誤登録が21件と、医療情報や口座など特に取扱いに注意すべき個人情報の漏洩が相次いで起こっている。他人に自分の戸籍や住民票を見られてしまうのも大きな問題だが、とりわけ保険証の誤登録によって医療機関で保険への加入が確認できなければ、その患者は全額自費負担となるなど、影響は深刻だ。
 法案に反対した立憲民主党の杉尾秀哉参院議員は、一連のトラブルはマイナンバーカードの構造的な問題を反映しているものであり、保険証との一体化は中止すべきだとマイナンバーカードを管轄するデジタル庁の河野太郎デジタル担当相に質したが、河野氏はここまで明らかになったトラブルはあくまで人為的なミスによるもので、マイナンバー制度そのものの問題ではないとして、杉尾氏の批判を一蹴している。しかし、本当にそうだろうか。  ここでいう「構造的な問題」というのは必ずしも技術的な問題だけを指しているわけではない。2013年のマイナンバー法制定時からこの問題に関わってきた弁護士の清水勉氏は、マイナ保険証には根本的な問題があり、それを放置したまま制度化をごり押ししても、必ず失敗すると語る。その理由はこうだ。  言うまでもなくマンナンバーカードを持つか持たないかは任意、つまり個々人の自由となっている。しかし、住基ネットで失敗した苦い経験を持つ政府は、今度ばかりはメンツにかけてもマイナンバーカードの普及を進めたい。そこで、マイナポイントだの補助金だのとあの手この手を使って国民にマイナンバーカードを無理矢理取得させようとしてきた。そして、ついに健康保険証と一体化させ、来年秋には現行の健康保険証自体を廃止するという強行策にまで手を染めてしまった。あくまで申請主義に基づいて発行されるマイナンバーカードが、国民皆保険という国家的制度と一体化することで、今後様々な矛盾やトラブルが発生することは避けられそうにない。  清水氏は、マイナンバーカードを持つか持たないかは個々人の自由意思に基づくことなので、クレジットカードと同じように、持つか持たないかを自由に選択できるようにしておかなければならないという。自分にとってメリットがあると思う人は持てばいいし、それほどメリットはない、あるいはデメリットが大きいと思う人は持たなければいい。また、一度は持ったとして、持つのをやめるという選択肢を与えられている必要がある。クレジットカードならそうだ。  銀行口座のみならず、戸籍や医療情報までも紐付いているマイナンバーカードを持つリスクが大きいと考える人には、持たないという選択肢が用意されていなければならない。しかし、健康保険証と一体化した上で、保険証の方は来年には廃止されるということになれば、多くの人にとってはマイナンバーカードを持つことは是も非もないものとなる。つまり、メリットがあると思う人が自由意思に基づいて持つのではなく、持たないことによって大きなデメリットが生じるような制度にすることによって、仕方なく持たざるを得なくなる人が大量に出るということになる。このような制度設計は根本的に間違っていると清水氏は言う。
 無理を通せば道理は引っ込む。既にマイナ保険証を事実上強制することに対して、医療現場や介護現場などから強い反対の声が上がっている。そもそも国民にとっても医療機関側にとっても、保険証をマイナンバーカードに一体化することのメリットはない。それどころか、マイナ保険証は保険組合の方から郵送されてくる現行の保険証とは異なり、本人が役所の窓口で申請しなければならないため、申請漏れや申請遅れによって無保険者扱いされる人が急増するおそれがある。また、介護施設や高齢者施設の入所者の多くは、これまで施設に保険証を預けていた実態があるが、銀行口座や戸籍とも紐付いたマイナンバーカードを代理人に預けるわけにはいかなくなるという問題も指摘されている。  
医療DX(デジタル化)の推進は重要だ。それはそれで是非進めるべきだ。しかし、それが銀行口座や戸籍とも紐付いているマイナンバーカードに一体化されなければならない理由はどこにも見当たらない。既存の保険証をデジタル化すればいいだけのことだ。
結局、本来一体化することに合理性がないものを無理やり一体化するから、政府の真の動機は国民の利便性を向上させることではなく、マイナンバーカードを強制的に普及させるためだと思われるのは当然のことだ。  
マイナンバーカードを普及させるために政府は既にマイナポイントなどで2兆円以上の予算を費やしてしまっている。それでもマイナンバーカードがなかなか普及しなかったのは、そもそも国民の多くが政府を信用していないからだ。政府を信用していなければ、政府がどれだけメリットを強調しても、マイナンバーという共通番号の下に自身の個人情報を次々と紐付けされ、それを政府に握られることに抵抗を感じるのは当然のことだ。  世界の多くの国が共通番号を導入しようとして失敗しているのも同じ理由だ。
その一方で、スウェーデンなどの北欧諸国では共通番号制度が普及している。しかし、それらの国々では国民の政府に対する信頼度も、情報公開を始めとする政府の透明性も、市民が政治に参加するチャンネルの多様さも、どれをとっても日本とは比べものにならないほど高い。政府がどれだけDXの旗を振り利便性を強調しても、国民の政府に対する信用がなければ、共通番号制度などまともに機能しないのだ。今回、政府がマイナンバーカードを健康保険証と結びつけることで、事実上カードの保有を強制したことによって、カードの普及自体は進むかもしれないが、そのようなやり方は政府に対する信頼度を益々低下させることになるだろう。

もうすでに、この国に対する信頼など、失われて久しいです。
この国は人治国家のなり果ててしまったのです。


朝日新聞デジタル

これだけトラブルが頻発しているのです。
マイナンバーカードはいったん中止すべきです。

身近な健康保険証を廃止し、トラブルが続出しているマイナンバーカードに一本化するのは無理があろう。廃止方針をいったん凍結し、国民の不安を 払拭するのが筋だ。
 2024年の秋に保険証を廃止し、マイナカードに一本化する関連法が成立した。来秋以降、患者はマイナカードを医療機関に提示し、診療を受けることになる
 政府は行政のデジタル化を進めるため、マイナカードの普及を図っている。保険証の機能を持たせるのもその一環だ。
 だが、マイナカードを巡るトラブルは後を絶たない。コンビニで別人の住民票が交付されたり、給付金の受取口座が、別人の口座で登録されていたりした。
 とりわけ深刻なのは、マイナ保険証に関する問題だ。他人の情報がカードにひもづけられていたケースが7300件あった。

 行政文書は、あとで修正できるかもしれないが、医療に関する手違いは、国民の健康や生命に重大な影響を及ぼす恐れがある。政府は事態を軽視してはならない。
そもそも政府は昨年6月の段階では、現行の保険証とマイナ保険証の「選択制」を打ち出していた。希望すれば、カードだけで受診を可能にするという構想だ。だが、河野デジタル相が10月、唐突に来年秋の保険証廃止を表明した。

 カードを持たない人には、健康保険組合などが「資格確認書」を発行するという。しかし、確認書の取得は本人の申請が前提だ。1年ごとに更新する必要もある。

 政府は、病気や障害を理由とした代理申請も認める方針だが、具体的な運用は検討中という。

 現在、何ら不都合なく使えている保険証を廃止し、事実上、カードの取得を強制するかのような手法が、政府の目指す「人に優しいデジタル化」なのか。

 マイナ保険証の不具合が相次いでいることを踏まえ、医療関係団体などは保険証の廃止に反対している。医療現場から懸念の声が上がるのも無理はない。

 法律が成立したからといって、制度の見直しは不可能だ、と考えるのは早計だ。
政府は1980年、納税者番号の一種「グリーンカード制度」を導入する法律を成立させたが、政財界から批判が噴出したため、5年後に法律で廃止した。

 マイナ保険証の見直しは、今からでも遅くはない。トラブルの原因を解明し、再発防止に努めるのが先決だ。当初の予定通り、選択制に戻すのも一案だろう。

みんなで返納して、このカードを葬るしかないです。

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