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「市民社会の思想史」要約

「市民社会の思想史」著間宮陽介 の要約を行なっていく
市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか (中公新書) https://www.amazon.co.jp/dp/4121014650/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_G50X5JVKGA4ZXD4CH9XM




内容:
本書は大きく古典派経済学について、純粋経済学について、ケインズ経済学についてと3つのトピックを扱っている。
それぞれに主流と反発があり自由と国家の関係が主題となっている。
☆登場するキーワード
・古典派経済学(自由放任主義)
・歴史学派
・マルクス主義
・純粋経済学
・ケインズ経済学
・新自由主義

○古典派経済学(自由放任主義)

アダムスミス
人間の同感感覚を基礎に神の見えざる手理論を展開した
利己的な利益を追求することは社会的利益につながると主張
個々人の利益の総和は社会的利益の総和になる
自己愛が分業と交換を促し、結果として社会的利益は増大する。
社会愛や公共心こそ美徳というキリスト教社会に衝撃を与えた。

同感概念
→同感という固有概念によるところが大きい
≒共感性 哀れみや同情
愛情や愛着がなくても自然と発生するもの
同感があるから規則を成立させられる
"啓蒙された利己心"と呼ばれ、他人の利益を侵害することがルール上不利だと判断されうる
行為功利主義<規則功利主義

→規則が崩れないのであれば調和する
市場は需要と供給の均衡を取る

神の見えざる手
中立的な観察者≠神、王
→利己心を社会へ統合するもの
道徳感情論-社会的規範
国富論-利己心を調節する市場システム

○古典派経済学の補強

マルサス:人口論
人口は等比数列的に増加するけど、食料は等差数列的であるから人口抑制と飢餓対策が必要

リカード:自由貿易の奨励と分配論
得意分野の生産活動を行って、不足分を貿易によって賄えば双方の国が豊かになるという考え
一方、社会主義的な萌芽もした
労働者と資本家のどちらかの賃金が上がればどちらかが下がる。
資本の分配をめぐる争いに発展する可能性を示唆
→機械の台頭などにより労働の神聖化が始まる
共同村という一種のユートピアを作ろうとする

○スミスへの反論

①マルクス主義:マルクス、エンゲルス
科学に基づいた社会主義が生まれる
マルクス主義のポイントは二つ
1.上部構造と下部構造
2.全てのものが商品化する
3.労働と労働力を区別し、その差に余剰価値を見出す(リカードは労働量によって価値が決まる=投下労働価値説)

②ドイツ歴史派:リスト
グローバル化により政治は民主化、経済は自由主義化が行われていく
しかし経済を国家ごとに段階的に捉えた場合、まず国家的アイデンティティを確保することが重要だと解いた。→後進国としての方針を示す
具体的には歴史の精密な研究を行い、対外的には保護貿易、対内的には自由な経済活動を行なった。

○純粋経済学

今までの政治経済学と呼ばれ為政者がどのように国民と主権者双方を富ませるのかが主題であった
しかし、より科学的に経済を論じようとする人々が出てくる
→純粋経済学=限界効用革命

メンガー:
効用は生産が多くなるにつれて下がっていく。
価値を労働ではなく、効用によって位置付けようとした。
また、経済学を科学的に思考しようとした。

ジェヴォンズ:
効用を基礎に経済学を体系立てていく。
その際に功利主義があった。
→ある行為の正しさを人類の幸福に寄与したかどうかによって判断する考え方。
そして幸福(善)を快楽、悪を苦痛と置く。
快楽を極大にするために全ての理論を効用の下に考えた。

ワルラス:
一般均衡理論の発見
需要と供給がある地点で均衡を迎えることを定式化、証明した。
・経済主体は予算の制約のもとで効用を最大化するように消費量を決定する(供給重視)
・効用が下がらない限りは、全ての予算を使い、最適量を決定する
→経済主体は、効用を最大化する行動をし、消費量を最適化する前提において均衡を迎える!

○ケインズ経済学

"需要が供給を決める"
背景として30年代の大恐慌がある。
需要がなければ労働力や設備を私たちは使いきれない
→有効需要の原理
有効需要を作り出すために公共事業、金融政策(多分量的緩和)を行うべきだ
市場に任せっぱなしではいけない!

不確実性を再検討する
不確実性を頻度ではなく、期待値で考えた
期待は既知を元に将来を測ること
→データなどの推測しやすさから推論を行った

貨幣の流動性
従来は貨幣は価値の尺度でしかなかった
しかし、貨幣と商品の交換は非対称でしか行われない
(マルクスは命がけの飛躍と呼んだ笑)
貨幣はどの商品とも交換が容易なので流動性が高いと呼べる
流動性は不確実性(期待)へのリスクヘッジになる
流動性が確保されているからいつでも商品に交換が可能であることで、ある状況を固定化しなくて済む
(利子は貨幣のリスクヘッジを手放すというリスクに対する報酬である)
貨幣は取引を円滑にするためのものであったのに、不況になると(不確実性が高まると)持っておかないと不安なものになり経済活動を停止させてしまいかねない

○世界大戦中、後の展開

・社会主義
計画経済下において合理的な資源分配は可能か?
→擬似的な経済計算を行うことで可能である
会員同士のセルフチェックで価格を決定していく
しかし、
1.セルフチェックだと間に合わないだろう
2.標準化されない商品(戦艦や船など)はどう価格を決定するのか
と言った反論により実質的に困難

・新自由主義
ケインズ経済学が失業問題の克服であるなら、
こちらはインフレ問題の克服である。
→結論インフレの主原因を政府の金融政策に見る
またインフレと失業率のトレードオフを否定する
政府による介入をやめろ!

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