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新しい靴を卸て

 「羽田さん、左足の人差し指のところに穴が開いてますよ」
 朝食を食べに施設の食堂に降りていった時、宿直の職員さんから突然そう声をかけられた。
 何のことだろうと思い、自室に戻ってからすぐに言われた部分を触ってみた。すると確かに左足の靴の先に小さな穴が開いていた。これは職員さんに言われるまで全く気がつかなかった。

 施設内ではずっと靴をはいて移動している。
 この施設に入所してから約1年半。そりゃあ1年半も毎日はき続けていたら穴も開くだろう。
 おまけにこの靴は、母が趣味のママさんバレーで使っていた体育館シューズのおさがりである。それも含めると、トータルでは1年半以上も使っていることになるようだ。
 現在入所している訓練施設は後3週間ほどで退所してしまうが、それ以降も同じ施設の中にある作業所に行く予定でいるので、中ばきようの靴は今後も必要になるだろう。
 とそんなわけで、週末買い物に行ったついでに新しい靴も買うことにした。

 行きつけのスーパーの2階にある靴売り場で見つけたのが、足のところに靴ひもではなくゴムがついた、小学校の時にはいていた上靴のようなタイプの靴だった(ちなみに店員さんはバレーシューズと言っていた)。
 これだったら解けた靴ひもを結びなおす手間が省けるので、ひも結びが苦手な自分には便利かもと思い即購入した。

 「サラピンのものは朝に卸すと良い」と聞いたので、翌日の朝に早速卸てみた。
 それまではいていた靴よりもこんどの靴は底が薄いので、なんだか床の上をはだしで歩いているみたいでへんな感じがした。
 足先の感覚が変わるだけでどこを歩いているのかが分からなくなるのか、歯を磨こうと洗面所に行こうとしたら通り過ぎてしまっていた。まあこのはき心地にもそのうち慣れるだろう。

 新しい靴を卸て、今日からの新しい1週間も新たな気持ちで過ごしていきたいと思う。

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