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暴力と音楽について



暴力について考えている。
発端は特に数日前に話題になったステージ上の暴力などではなく、
もう少し前のある出来事による。
もうかなり長期に渡り考え続けているのだ。

正確には、”暴力と音楽(表現する場)について”を考え続けている。
ひょっとしたらもう何年も行きつ戻りつの思考で暴力と音楽と居場所などの概念の周りを彷徨っている。

rock 'n' rollやpunk、hard coreなどの音楽の世界観では暴力は密接していて、隣合わせの要素である。
時に非常に魅力的に映える。

気性の荒い恋人としか付き合ったことが無いのは14才のときの最初の彼氏からバンドマンだったからかな。
(急に俗っぽくなってしまった笑)

もっと幼い頃だと父親に散々殴られていた。
前科のついた勾留の際に引き受けを拒んだ兄から「叱られてはいたが虐待などなかった」と証言があったらしいけれど、
7才のわたしを数メートル先の壁に叩きつけて眼鏡が粉々になったので、
まあまあ虐待と思って遜色ないだろう。
髪の毛の中に入り込んだ硝子の破片が取れず数日後にも細かい傷が指にできて困った。

暴力は便利だ。

震えるわたしを見下ろすとき常に相手は高揚していた。
人を傷つけることは多幸感のある娯楽なんだな、と今なら言語化できる。
そして服従の姿勢を見て取ればそれ以降は意のままに扱えるのだ。

倫理も法律も無視した考えならば、ね。
暴力は肯定してはならない。
他者の自由を奪うことや拘束すること、自ら選択する機会を奪うことはあってはならないことだ。


だからこそ創作の中でfreedomに殺人を犯し敵を滅ぼし何らかの正義の潔さに高揚したり、
理不尽なまま消えゆく命にカタルシスを覚えたりすることを必要ともするのかも知れぬ。

しかしながら何の美しさも無いながら現実世界の中で、暴力は非常に便利だ。

圧倒的な力で制圧されれば善も悪もなく従うしかなかった。
父や恋人やらに殴られた理由など何ひとつ記憶がない。
殴られたときの傾いていく景色や近づいてくる拳などかアメコミ風の絵柄で断片的に記憶の中にあるだけ。
事実であることだけは確かなのだが。

ベテラン精神保健福祉士の友人によると自己防衛のため意識がフィルターをかけているのではないか、と。
確かに生々しく思いだしてしまえば叫びながら走り出しそうだ。
うまくできているものだなあ。

13才、14才だったか、初めて人間に暴力を振るった。
怖がらせてしまうし武勇伝語りと思われるのも嫌なので他人へ話す事もなかったが相手は多分記憶しているだろう。アメコミ調の画風なのかな、と不謹慎に笑う。

相手は同じような世代と境遇の女で口論になりけたゝましく叫ぶ様子と何らかの単語に腹が立ちすぎて勝手に手が出た。
「アガウガググアガググ…」
あれ気が狂ったのか、と怯む。
よく見ると口が開かないようだった。

顎の下から平手でバァンと上に向けてはたいたのが、
下の歯が上唇に刺さってしまっていた。
そんなに血はでておらず滲むように赤いだけだった。

怯えた目、小刻みに震える身体、
落ちていく膝。
何だこいつは。さっきまで自分が神であるかのようにこちらを貶めていた癖に。
世の中の糞たちの大半が暴力で返されることなど全く想像も想定もせずモノを言うとるんやな。
簡単やな、シバいたればええんやわ。

そう思ってしまった。
幼い頃から暴力に震えて制圧されてきて憎んでいたのに、父や数々の短絡的な人間の行う暴力の利便性を実感してしまったのだ。
簡単に人が思い通りに言うことをきくんだ。

暴力は便利だ。

何度か傷害で勾留されたが起訴まではなかなかされず大概は相手が訴えを取り下げた。
両親も亡くし金もない未成年に時間と金をかけて弁護士を雇い裁判をする者はそうそういなかったというだけ。

ミナミの街角で歌舞伎町の片隅で、
ライブハウスの打ち上げで、
美しくもない無様な暴力を見かけて、
やはり何処か高揚する自分に気づく。

そして映像作品や絵画、写真、
音楽、身体表現の中での
「安全な暴力(少なくとも自らの肉体が傷つくことはない。精神はその限りではなく破壊される危険があるが)」
に触れたい、と今も求めてしまう。

制御不能な衝動を目の当たりにしたいのだ。
そしてそれはある種の創作の上で最重要事項とも言える事なのだ。

自他との境界や暴力の是非、
表現の中での扱い方、要不要、
どこをとってもまだまだ自分の中で結論が出ない。
答えを見つけ出した気になっても翌日には逡巡する。

湧き上がる衝動や純粋さゆえの残額さなどをどうしても愛している。
ならば自らその愛憎をどう扱い付き合っていくのか、考え続けなければならない。

とりとめなくもここまでで。
もう少し惑い行きつ戻りつの思考させていてください。

なんとか決着をつけたい。

良かったらサポートしてください。 生きるための色々に使うと思います。 リアル世界あんまり生きれないから、 創作に全振りやとおもう。