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短歌二十四首 【2023年9月まとめ】


愛おしさに気づいて触れた指、まるで夏の魔法だブルーサルビア

生きている尊さ噛みしめ水澄みずすましのつくる波紋をしずかに見てゐる

優しさは所詮偽善だ。それでもきっと、今も誰かが救われている

釘を使わずに木材をげるならあなたにもっと優しくありたい

秒針の音がやけに響く夜中 取り込まれてもいい闇がある

愛を信じきれない「ぼく」はまだ物置の奥でうずくまったまま

色なき風 主人あるじうしなひしデスクには万年筆のがらのある

保健室カーテンそよぐさざなみが泣きたい気持ちにそっと寄り添う

ささ、さらら、下闇したやみに溶け込んで読書しているきみの瞬き

あまりにも周波数が合ってたね 感情きもちを共有しすぎたかもね

黒酢ドリンク作ってみたけど飲めなくて きみの理想の彼女にはなれない

未送信メールにある「好き」 (つづく)で終わってしまった物語のよう

花便り 「様」のはらいが右上にぴょんと跳ねてる貴女の癖字

失くなった絆は結びなおせない 弟切草のかぼそき悲鳴

冷ややかに揺るるをみなへし かをりたつ髪のひと房を指に絡めて

ふたり寄り添って老いていく秋蝶 夫婦揃の湯呑みに欠けもなく

「同じだね」なんて軽率に言わないで イコールスラッシュを引いて拒絶

僕よりも有用な人ばかりだろう コンビニのレジでありがとうと言う

難しく考えなくてもいいんじゃない 塩辛蜻蛉シオカラトンボがついと飛び去る

澄む秋にえのころ草は語らひつつ見守ってゐるとんぼ追ひし子

真剣な吾子のまなざし アンパンマンラーメンにしづかに湯をそそぐ

補助輪をはずして乗った自転車はぼくを発射する蒼茫そうぼうそら

叫喚きょうかんを誰か聞かなむ稲光 真白き華焰かえんが焦がすたましひ

たれぞ シンギュラリティの夜明けごろ暁星ぎょうせいに問ふ存在理由レゾンデートル


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