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仕事つくる#41 ゼロイチ到達の定義

chatGPTによれば、ビジネスにおける「ゼロイチ」は以下の意味を持つそうです。

ビジネス用語としての「ゼロイチ」は、「ゼロから一を創る」という意味で使われることが多いです。これは、新しいプロジェクトやビジネスを何もないところから立ち上げる、つまり全く新しい価値や製品を創出するプロセスを指します。スタートアップや新規事業の分野で特に一般的に用いられる表現です。

chatGPT4の回答

他も調べてみましたが、だいたいこの意味合いでした。実はこのnoteを書き始める前まで、上に書いてあるような認識はほとんどなく、今までの世にない新しい価値を創出していなくても「何もないところからビジネスを立ち上げる」というただそれだけのことと思っていました。要するに、ゼロイチ = 起業のことと思っていたわけです。

なので、世間の認識とはズレたままこのnoteを書き進めまることになりますが、ビジネスの実践を繰り返す中で私なりのゼロイチの定義が定まったので言葉でまとめてみたいと思いました。

この類の話でよく耳にするのは、「0→1」「1→10」「10→100」とかではないでしょうか? でもこれ、どこからが「1→10」でどこからが「10→100」か定義づけせずに何となく使ってる人が多い印象です。僕はこの表現がずっとしっくりきていませんでした。理屈を持って言い直すなら「0→1」「1→2」「2→10」がわかりやすいです。その理屈をこのnoteでつらつら書いていきます。

「なんとなく」が許せない人には是非読み進めていただきたいです。


0→1到達の定義

「ゼロから一をつくる」という言葉自体が曖昧なために、さまざまな角度から様々な言い方ができると思いますが、今回はわかりやすく「収益」という角度のみからゼロイチ到達の条件を定義づけてみます。

まず、「お金と時間」「集客リズム」の大きく2つの条件に絞りました。

①お金と時間の尺度

同じ業界のサラリーマンより、時間を短く、利益は多く、効率よく稼げているかどうかという尺度です。本来独立するということは組織の取り分がなくなりダイレクトに自分に利益が残るはずです。そうではなく、同じ業界のサラリーマンよりたくさん働いているにもかかわらず手取りが少ない状況というのは、「需要をつくれていない」か「価格以外のメリットを出せていない」状況といえます。それはやっていることや生み出した商品そのものの価値が市場より低いということになります。反対に、効率よく稼げているのであれば市場価格以上の価値を見出せている可能性が高いといえます。

②集客リズムの確立

お金と時間の尺度に加えて、もう一つ重要な視点が「安定した需要を作り出せており、集客リズムを確立できているかどうか」という尺度です。お金と時間の尺度の条件をクリアしていたとしても、需要が尻すぼまりになっているケースがままあります。営業やマーケティングが上手くても商品サービスの実が伴っておらず、口コミ等のインスパイヤが発生していない状態がそれにあたります。

また、よくあるのがご祝儀来店というものです。起業当初や美容師であればスタイリストデビューの際に見られる現象ですが、商品サービスそのものの価値ではなく、「おめでとう!」や「応援するよ!」という意味合いで友人から支援されている状態。これは持続的なものではないので注意が必要です。もちろん、このご祝儀来店を打ち上げのエンジンにして大気圏を突破することは非常に重要なことです。しかしながら、それと同じくらい「応援は持続しない」ということを言い聞かせて、商品サービスそのものの価値を高める努力を継続することが大事です。

「ビジネスモデルを組む」とは、集客→ 価値観教育→販売→リピート&インスパイヤの流れを無理なく循環させることだと僕は考えています。いい商品サービスであれば、販売のその先で必ずリピートやインスパイヤが発生し、ビジネスモデルの最も風上にある集客に戻ってきます。この座組みを意図的に組み上げることが「ビジネスモデルを組む」ということです。

①と②の定義を2つともクリアして初めてゼロイチに到達した状態であると僕は認識しています。

ビジネスモデルについては過去のnoteに詳しくまとめているので、深掘る方は覗いてみてください。

「ゼロイチをやりました」という人がいても、僕の定義で言うならそれは0→0.3あたりだよねって方が結構います。打ち上げ花火を上げるのは難しくないので、その先の需要諸々を作り込むまで完了してはじめて1になったと解釈する方がしっくりきます。

そして、1に到達したビジネスには必ず到達の要因があります。そこを冷静に分析して探っていき、答え合わせするのが次の「1→2」フェーズになります。僕はこの「1→2」フェーズが最も重要で難しいと考えています。

次のフェーズでのキーワードは「抽象度を上げる」です。

1→2のフェーズ

0→1に到達したら、次はなぜ達成できたのかの要因を探ります。先ほどの章で「キーワードは抽象度を上げること」と書きましたが、まずはこの「抽象度を上げる」という言葉についての僕の理解を記載させていただきます。

ピアノを弾ける人はコード進行が頭に入っているのでギターの覚えが早かったり、英語を話せる人はほぼ同じ文法のフランス語の習得が早かったり、 つまり「抽象度を上げる」=「法則を抽出して他に応用すること」である。

出典:まも

ビジネスにおける1→2のフェーズでもこれと全く同じことを行います。店舗型ビジネスで例えるとわかりやすいのですが、「人口〇〇人の都市で、駅徒歩△△分の立地に、このクオリティのサービスを、□□の値段で」といった具合に1店舗目で上手くいった要因を冷静に分析します。そこでは従業員の採用方法から広告等の集客方法までビジネスモデルの全てを網羅する必要があります。そして、分析した結果得られた仮説をもとに2店舗目を探します。2店舗目で行うことは先程も書いた通り「答え合わせ」になります。

答え合わせの結果、うまくいくのか。うまくいかないのか。うまくいけば次のフェーズへ。うまくいかなければ再び成功要因の分析へ。そのようにして事業に対する知見を蓄積していきます。

僕は一度このフェーズに挑戦したことがあります(一旦ストップ中)。ジャンルは築古戸建の賃貸業で、1号物件で確認できた基準をもとに2号物件を購入。さらに3号4号と買い進めていきましたが、完全にうまくいっているのは1号物件と4号物件だけです。2号物件は立地を外しており、3号物件はそもそも建物が古すぎました(苦笑)。2号3号ともに現状利活用されているものの、末広がりの物件とは到底いえず、他の事業が好調な時に調子に乗って緻密な分析を行わなかったことが敗因だと考えています。分析が甘いと僕のように将来的にマイナスを食らってしまうことになります。

ちなみに、現在(2024年5月)はスポーツウェアの企画・販売を行っている合同会社MAMOで1→2フェーズに挑戦中です。賃貸業の反省をもとに、「集客の要めはどこにあるのか」「どのような受注サイクルをつくればよいのか」などのゼロイチフェーズの成功因子を抽象度を上げて抜き取り、他で応用しようと試みています。これについては成功したのちにまた詳しくまとめますので、ぜひ楽しみにしていてください(絶対成功させるぞ)。

いかがでしょうか。ここまで読んでいただき、なぜ「0→1」の次が「1→10」ではなく「1→2」であるのかが少しは理解いただけましたでしょうか。

2なのか10なのか。とってもどうでもいいことなんですが、どうでもいいままにしておきたくないのが僕の短所であり長所です。さて、次はいよいよ2→10フェーズになります。

2→10のフェーズ

1→2で答え合わせをした再現性を、同じ条件が揃うフィールドで複数展開していくフェーズです。1→2のフェーズが正確であればあるほど複数展開がスムーズになります。

そして、広がりの限界値が2→10なのか、2→20なのか、2→100なのか。このあたりは「経営者自身の胃袋の大きさ」と「そもそもの市場の広さ」の2つの要因で決まってくると考えています。僕自身ここに挑戦したことはないので深くは語れませんが、おそらくはこういうことなのかなと思っています。経営者としていつかは挑戦してみたいフェーズです。

拡大路線が正解だとは限らない

ここまで書いてきたように、0→1→2→10を目指すことが必ずしも正解ではないし、目指さない方が面白味のあることだってたくさんあります。例えば僕が経営している温泉付きゲストハウスのあわくら温泉元湯などはその典型です。

周囲を森に囲まれていて、目の前に川があり、天然温泉が湧き出していて、西粟倉という立地自体が盛り上がりを見せていて・・・ 世界中どこを探しても同じような条件を見つけることは困難でしょう。そうであるならば、この場所でとことん磨きをかけて唯一無二をつくっていった方が面白いですし、ビジネスの成功にも結びついてくるものと考えてみます。

一点集中型の元湯が目指す近未来図

ただし、ここで言いたいことは拡大路線か一点集中か目指す方向性が違う2種類のビジネスにも共通するフェーズがあり、それがゼロイチのフェーズだということです。

共通するところは「どうすれば負けないのかをはっきりさせておくことが重要」という点です。元湯のような一点集中型だとしても、負けない基準を明確にすることで経営を安定させることができ、事業を成熟させることができます。ちなみに、元湯のような宿屋は確実性の高いリピートによる集客リズムが組みにくいので、難易度がそこそこ高いと認識していますが、以下のような設計をすることで経営が安定してきます。

① 損益分岐点を把握する
② 損益分岐点売上高の構成(平均単価×顧客数)を把握する。
③ コントロール可能な需要だけで①を超えるように設計する。
④ ③をクリアした上でその他のイレギュラー需要を獲得していく。

簡単にいえば、「コントロール可能な売上=金土日の元湯自体を求めて来られる顧客の売り上げ」だけで①の損益分岐点を突破し、その他の目的でたまたま元湯を利用する顧客の売上はボーナスと捉えましょうということです。需要のイニシアチブが自分たちにあり、コントロール可能な需要だけで損益分岐点を超えておくと、非常に負けづらい体制を敷くことができます。

元湯の具体的な数字でいえば、損益分岐点は170万円/月なので、金土日の3日間で38万円を売り上げられればOK、という基準を持って取り組んでいます。

金土日の売上38万円×4.3週+日帰り温泉12万円 = 約170万円

現状、年間を通して届いていない月もあります。したがって、客単価を上げる努力が必要であり、さらに工夫改善していかなければなりません。ただ、こういう基準があるのとないのとでは打ち手の精度が大きく変わってきます。

創業期に手残りよりも大切にしたこと

僕は岡山県西粟倉村という田舎に拠点をおいて2つマイクロ法人を経営しています。西粟倉村には協力隊制度を活用して従業員を雇用できる「企業研修型」協力隊という仕組みがあります。地域資源の活用や、新規性、事業性など、厳格な審査を通過することで企業が採用枠を獲得できます。現在西粟倉村には30名以上の企業研修型協力隊がいて若い力で企業と地域を盛り上げています。

僕の会社ではこの魅力的な制度を一度も活用したことがないのですが、その理由は、創業期にランニングで獲得できる補助制度を取り入れてしまうと、ゼロイチのフェーズで確認しておかなければならない「負けない基準」がブレてしまうと思ったからです。事業はいまいまが潤っていても意味がなく、持続的に収益をもたらすものでなければならないと考えるタイプなので、各事業における「負けない基準をいち早く確認しておくこと」が創業期の重要課題でした。

要因がわからない勝ちより、原因のわかっている負けの方が長い目で見た時に健康的です。

そして、第1章で記載したゼロイチの到達については、まずこの「負けない基準」が見えていなければ、ゼロイチに到達したかどうかを判断することも危うくなります。ここに関しては拡大路線でも一点集中路線でも同じことです。このフェーズに厳しく事業に向き合うことで末長く明るい未来を描けるようになると考えています。

おわりに

冒頭にも述べたように、僕がつくったゼロイチの定義は世間一般的なゼロイチの理解である「新規性のある事業」を対象にしたものではないです。なので、あまり面白くなかったかもしれませんが、0→1→2→10の理屈が読者に伝わっていたのなら御の字です。

ここまで色々と理屈をごねごね記載してきましたが、理屈通りにモノゴトを進めるのはかなり難しいことです。白状すると僕は過去一度も計画通りに事業が進んだことがありません。しかしながら、ちゃんと狙いを定めることは重要で、狙いを定めていることで出た結果に対してのフィードバックを得ることができます。「なぜその狙いを定めたのか」を言葉にしておくことで、外れた時にズレを確認することができます。これが次の種になって事業が前進していくものと僕は思っています。

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仕事って楽しいですよね。芋焼酎をだらだら飲みながらこんな話をたくさんしたい30代でございます。最後までお付き合いありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


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