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#エンターテイメント
800文字プラクティス#05【気狂い珠子の超常捜査簿】
同期の物部は、今どき怖い話の蒐集が趣味の変人だ。空き教室を占拠して、一人で“都市伝説研究会”を称している。
僕はノックをして、その教室に入る。机を撤去し、小さめの教室を本棚で二分割していた。薄暗く、何故か照明は点かない。そして腥い不快な臭気が漂う。
本棚のこちら側は無人だ。
「昨日連絡した稗田だけど」
返事どころか、物音が一切無い。不在かな。帰ろうかな。
だが、僕は先日体験した
800文字プラクティス#04【死呪喰いタイチは飢えている】
黒々と繁る腐れ茨の森。獣道を歩きながら、タイチは昔を想い出す。幼い頃、世界には腐れ茨と、恐怖と、姉だけがあった。変わらないのは茨のみだ。
人里を離れて生きるなら、腐れ茨に隠れ暮すか、さもなくば死呪に縋るか。だがタイチはそれらすら捨てた。
「たっ、助けてくれぇっ!」
悲鳴が回想を中断させる。襤褸を着た男が駆けてくる。その後ろに巨大な影。常人に倍する体躯、赤茶けた肌、額の角。鬼だ。
か
800文字プラクティス#03【敦史の夏休みと、山に棲む半裸のおじさん】
登山道沿いの木々の隙間から、鋭い西日が敦史を刺す。日陰だというのに、Tシャツが貼り付く不快な暑さ。道の先、山頂の広場に高い木が見える。通称、行者山の物見杉。
友達のいない敦史だが、小学校で流行っている噂は知っていた。物見杉の上に人影が見えた。上から糞尿が降ってきた。勇んで探検に行って、帰ってこない子供がいた。
敦史は噂など信じない。同級生の西田にいじめられ、酒臭い父親に殴られる日々を、一
800文字プラクティス#02【閉ざした瞳の彼方から】
村上は未だに“ビヨンド事件”の夢に魘される。だから室長からの三年振りのメールには嫌な予感がしたし、“目の潰れた死体”という件名だけで事の重大さを理解した。
指定時刻に会議室へ入る。奥に座る髭の紳士が室長。その他、性別・年齢のバラバラな十数人が着席していた。
そして一人、会議室の隅で、なぜか壁に向かって椅子に腰掛けている人物。顔は見えないが、ボブカットの、若い女らしかった。
「揃ったな」
800文字プラクティス#01【デイ・オブ・ザ・データセンター】
田中は拳銃を抜き、闇雲に撃ちまくった。碁盤目状に並ぶサーバの間に銃声が響く。馬鹿な奴だ。それは自決用と研修で教えたのに。
「来るなァ!」
銃声に刺激され、“それ”は猛然と飛び掛かった。
厚み10数cm、幅・奥行1mほどの金属の箱。LANケーブルの触手で田中を絡め取る。元はCDドライブらしき裂け目が上下に開き、田中の顔面を齧り取った。
サーバ耐用年数が百を超える。ヒトはその意味をよく